消えた少女
「消えた?」
僕らは呆然と鳥居の前に立っていた。無駄だと思いながら鳥居を潜り、凛の気配を探す。何も無い。神の気配も、凛の気配も。何も。思わず唇を噛み締める。やはり離すべきでは無かったかも知れない。それは色季ちゃんも同じのようで、眉間に皺を寄せて噛み締めていた。歯によって傷つけられた唇から、とろりと血が出た。ポケットに入っていたティッシュでそっと拭う。
「有難う..............慧さん..............」
気配には怒り、悲しみ、不安。そんなものが綯い交ぜになって、彼女を巡る。そんな僕自身にもあった感情を押し殺すように、彼女を引き寄せた。
「もどかしいけど、何も感じない。銀庭」
「此処に」
俯いたまま、最愛の式を呼ぶ。彼は物静かな色を纏い降臨した。場の空気を察してか、彼の表情も晴れない。仄暗い声で、彼女は問いかけた
「何か見える? 」
「いや.......何も」
「分かった。銀庭はそのまま帰らないで」
気持ちを切り替えたのだろう。そこに弱々しい少女の姿は無かった。あるのは精悍な惣領の顔。だから覚悟を決めた。何も戻って来ないと決まった訳では無い。ならば妹の生存率を少しでも上げるため、僕も準備をしなくては。
担いでいた弓袋から弓を出し、輪ゴムを外す。何時もは行儀悪く膝を使って張っているが、今日は彼女に手伝って貰おう。
「色季ちゃん、弓張るよ。手、貸して」
タイトルの『少女』と言うのは、幼少期の凛と重なるから。
この場面を一番思い起こさせるのは、やっぱり少女時代だから。
ここから小ネタ
弓道部の皆さーん!
大会の時、やりますよね? 相手の手を借りて弓張り。
私も懐かしいです。




