車内にて
「懐かしいね。あの夏祭り」
「うん」
私達は時説家お抱えの車に乗り込み、社を目指していた。表面上は抜きん出た細工の無い車体だが、驚く程に振動が伝わって来ない。さすが金持ち、上質なものを所有している。
ふと二人から目を離し、窓に目を向ける。当たり障りの無い光景が広がっている。平日なのもあって、多くの人は目に付かないけれど、何でも無いように歩く人ばかりだ。
彼奴はどうしているのだろう。色季や兄貴達には見えない、感じないとも言っていた。実際に行って確かめるしか出来ないのだ。
「心配だな。また迷子にならないか」
「まさか。また意地で戻るさ」
兄貴が悪戯っ子のように笑った。彼も特段心配なんかしていない。表情も声色もそう言っている。どちらかと言えば心配なのは人が消えたという事象。それがその神擬きのせいとは決まってないが、覚悟しておこう。
「凛、気を付けて、貴方も巻き添いになるかも知れない」
「その言葉、この場にいる全員に返してやりたいよ」
幾ら激戦区を潜り抜けたとは言え、命を落とす者共も少なくない。消えた者だって。今更なのだ。こんな忠告。でも改めて認識を返しておく。
「着きました。□□神社前です」
「有難う。降りるよ。凛、慧さん」
あたしは足元にあった巨大な箱を持つと、二人とともに降り立った。
君達、主に戦闘担当だからね。
名誉なことだけど、命掛けてるって思うと複雑だよね。
本人達はそう思ってなさそうだけど。




