過ぎ去りの神
気が付くとあたしは神社の社の前に呆然と立っていた。多くの人々が群れを成して縁日を行き交う。人の川。人という粒子が作り出す流れ。眼鏡を掛けているからこそ良く見えるこの世界。
不意に眼鏡を持ち上げた。硝子によって守られていた視界に多くの塵共が交差する。やはり砂嵐の中にいるような感覚に見舞われた。
一度体内を巡る霊力に意識を向ける。二倍、三倍と回転率を上げて熱量を上昇。塵共が薄まっていく。最終的に見えた世界は、あの眼鏡越しに見える世界そのものだった。
余りにも美し過ぎる橙の光。薄ぼんやりとした光が神社の縁日を柔らかく包み込んでいた。幻想的な光景に息を飲み、思わず口元に手を当てる。最高だった。
そうやってどのくらい時が経っただろう。突然後ろから声が聞こえてきた。
「もう!! 探したんだよ!!」
振り向くと兄貴と色季、そして色季の父が慌てて此方に駆けてくる。それぞれの表情を見ても分かる通り、頬を膨らませている。怒っている、ということだけははっきりと理解した。
あたしはまた眼鏡を掛け直し、対流する霊圧を少しづつ薄めて行く。色季は霊圧に過剰に反応する為、抑えておいた方が良いだろう。
「いきなり消えるから心配したんだぞ」
「神様」
皆の心配を差し置いて、思わずポロリと声が出ていた。自分でも驚く程に目を見開いて驚愕する。その反応に迎えに来た者たちは、あたし以上に唖然とした。いきなり消息を断ち、脈絡の無い言葉を吐けばそうもなるだろう。
「は?」
「神様いたよ」
「え?」
なんの事か分からないと言うように、より怪訝な顔をした。そんな彼らにさっきまでの事象を事細かに説明する。皆とはぐれて別の縁日に参加した事。仮面の軍勢。それから強引ながらも親切だった神。話している間、皆黙ってあたしの言葉に耳を済ませていた。
話終わると色季の父が私の頭をそっと撫でた。何となく哀れんでいるようにも見える。
「俺達は何も感じなかった。この参道を幾ら歩いても。君しか見えない、過ぎ去りの神さ」
その目は何処かとても寂しそうだった。
凛は拒絶に回ったんです。
元々、望んで手に入れた力じゃないし、そうなるのも最もなんですけど。
でも今は自分から望んで手に入れた、おいちゃんの話を構想してます。
受け入れているから、きっと世界は綺麗だろうな。




