20/32
3
「..............」
思わず眼鏡を外す。周りを見渡す。余りにも、綺麗な光景。塵一つない世界。初めてかもしれない。口を開いて目を輝かせる。最高だった。
「どうだい景色は」
「鮮明」
どうやら怒りの感情で無理矢理枷を外させたらしい。口車に乗せられた事に気が付き、はっとした。意外と策士なのかも知れない。経過はどうであれ、世界が綺麗になったことは喜ばしい。仁王立ちする彼に対し、深く頭を垂れた。
「有難う」
「それは良かった。でも日常的に使うのはお勧めしない。過敏な子は人でも近寄れないし、熱量を無駄にしているもんだ。より鮮明に世界が見たい時に使うと良い」
彼はしたり顔で此方を見下ろしている。職人が上質な完成品を眺めるような満足した表情だった。大して私は怪訝な表情を浮かべた。ここまでして、あんたに一体何の得がある?
これがあの神擬きとの記憶。強引に事を進める彼との。それでもあたしに力を教えた数少ない師の一人であった。
根底が素直なので、悪いと思ったら謝るし、いい事されたと思ったらお礼を言います。
今構想しているシーンでも、ちゃんと詫びてます。




