神様とは
「さてと、じゃあ教える前に、神様とは.......」
「そんなのいらねぇ」
彼は得意気にあたしの周りを彷徨く。人差し指を立てて、名探偵にでもなったように。ぶっちゃけこの不審者と話をしている暇はない。早く兄貴や色季達と合流しなくてはならないのだ。だから舌打ち混じりに吐き捨て、退屈そうに此奴の顔を見上げる。
「黙って聞きなさい。教えてあげる対価だよ」
一度足を止めて、しゃがみ込んだ。あたしの顎下に手を入れて、無理矢理上を向かせる。強制的に目を合わせられ、これまでに無いほど真剣な表情で此方を睨む。此方も睨まれて怯む玉じゃない。御託は良いとでも言うように、睨め返す。それは数分に渡って続けられた。
「けっ。何一人で舞い上がってんの?」
「舞い上がりもするさ」
顎から手を離すと、また周りを巡り始めた。石畳の上を足音だけが紡いで行く。
「僕らの存在はね、人の思いによって左右されやすいんだ。例えば多くの人が荒御魂だと信じれば荒御魂になる。狐の神様だと思えば耳や尾が現れる。まぁ、そこまで多くの人に思われ、力を付けたなら、耳や尾を引っ込める事も出来るだろうが。そして居なくなったと思われると存在が希薄になる」
そんな事は知っている。実体が無いと言えば少々語弊が生じるかも知れないが、生身の肉を持っていない分、彼らの存在はやや不安定だ。特に数多の共通認識に弱い。どんなに自分の存在が善だと思っても、多くの人々が悪だと定めれば悪になってしまう。私達はそういう存在なのだ。と飛梅様から教えられた。
彼は残念そうに、少し物悲しげな視線を上から降らせてきた。一瞬の事、僅かに一瞥した程度のものだ。
「何時だって僕らは人の思いによって左右されてしまう。不確定であやふやな存在だ」
突然、ふわりと抱き上げられた。今まではあちら側から視線を合わせて来たが、今回は逆。彼が体を持ち上げる事によって、目が合う。一瞬息を呑んだ。
「でもそんな僕らを君は認知した。認知した故に少しだけ繋がった」
余りにも穏やかな微笑みだった。赤子を産み落とした母のような。そんな顔をされたら、皮肉の一つも言えなくなって仕舞うじゃないか。
俗世に染まったものを今は書いているので、その次の作品でまた登場させたいです。
三狐神様と飛梅様。




