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「凛、慧、せっかく来てくれたんだ。何か目ぼしいものはあるかな?」
「この景色だけで十分だよ。でも任務完了次第、何か買うかも」
「せっかくだから強請りなよ。父さんの付き合いなんだから」
色季にそう言われ、あたしは口角を上げた。兄貴が困ったような顔で此方を見る。あまり強請らないようにね。と目が口程に物を言っていた。大丈夫、ちゃんと持たされたお金で払うよ。
非日常的世界。眼鏡外せばそこは塵まみれ。だから眼鏡越しにしか楽しめない。それで良い。それで良いのだ。下手な願望は持たない。持ったところであたしの世界は変わらないのだから。
カラン、カラン、カラン。下駄の鳴る音。ぴちゃん。ぱしゃっ。金魚掬いの音。耳を済ませて、道を歩く。ただひたすらに。
「あれ?」
気が付くと兄貴の手の感触がない。あたしはただ呆然と縁日の中で立ち竦んでいた。周りの空気はそのままに。ただ、気配だけを変えて。
「はぐれたか?」
彼女にとっては、ちょっとした異世界旅行。
でも彼からしてみたら、裏道に紛れ込んだ感じ。そして『視覚の問題』。




