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無双するご主人様のハーレム事情  作者: 不利位打夢
第20章 探求と暗躍
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暗躍する者たち46

すぐにアイは先程言いかけて中断していた説明を改めて口にする。


「アシュラさんの言う通り、避難してすぐに元住人たちへ真の黒幕の計画が実行されました。

それが、生贄の選別です。」


「生贄、つまり計画の一端として、生贄に選別されてしまった元住人は何かしらの犠牲となってしまったということ?

だから記録に残ってないんだ。

じゃぁ記録に残っている元住人は、運良く生贄の選別から逃れられたってことだね。」


このアシュラの解釈を、アイは否定し訂正する。


「いいえ、それは違います。

元住人全員が全て生贄です。

それがどのように生贄になったのか、違いはそれだけです。」


「だが記録に残っているということは、生贄として犠牲にならなかったはずだぜ。

これはどう説明するんだよ。」


「記録に残っていて生きていたからといって生贄にならなかったわけではありません。」


「どういうことだ?」


「生贄には様々な意味があります。

よくあるのが、何かを得るために、その心身を代償に奉げさせるものです。

アシュラさんの生贄の認識はこれなのでしょう。

しかし別に何かを代償にしなくても、生贄として成立する場合が他にも多々あります。

例えば、人生そのものを生贄として奉げさせる場合です。」


「それって記録に痕跡が残っていた元住人たちは、人生そのものが生贄だったってこと?」


「そうです。」


「だけど記録を見た限り、別にそいつらの人生におかしいところなんか無かったぜ。

普通に生活して国を興したくらいだからな。

まぁその際にいろいろな争いが起こったり、価値観や意見の違いからいくつかの集団に分裂はしたけどよ。

集団生活してればそれくらいはあり得ることだろ。

その何処に生贄の要素があるんだか、意味不明だぜ。」


いまだに理解できていないアシュラに、アイが当時の状況から説明を行う。


「アシュラさんの言う通り、元住民たちにも、その子孫たちにも、自分たちが生贄だという自覚は一切ありません。

だからこそ、たちが悪いのですがね。

元住人たちは空中都市から着の身着のまま強制的に避難させられ、それまで受けていた恩恵を一切受けられなくなります。

当時の地上は何もない環境でしたからね。

そのため生活は厳しくなり、生き残ることが何よりも最優先となります。

そこでまず現れるのが集団をまとめて率いる統率者です。」


「便利な生活から一転して何もない不便な生活を強いられることいなるのだから、導く者は絶対に必要だ。

そうでなければ、その集団は分解して早々に崩壊するだろうからな。」


「ただこの集団の中に、誰もが納得できる統率者がいれば何も問題ありませんでした。

それだけで集団は簡単にまとまったはずですから。

しかしこの元住人の集団の中には、神や亜神どころか半神や天使さえもおらず、最下級の住人である使徒たちだけで構成されていました。

問題は、使徒が神格を持たない、ということです。

つまり、それまで明確な判断基準となっていた神格の差が、誰にも無いということです。

そうなりますと、同一神格同士の集団となりますから、これまで自重していた様々な主義主張や地位を表に出す者が現れ、統率者として名乗りを上げます。

さて、このように統率者が複数人現れたらどうなると思います?」


このアイの問いに、アシュラにはある光景が真っ先に浮かんだ。


「絶対的な統率者がいない弊害として、当然その集団は荒れて割れるよね。

誰だって優秀で自分の考えに合った統率者を選ぶだろうし、逆に統率者は各方面で優秀な人材を確保したいだろうからね。

それぞれの統率者が率いる集団で、優秀な人材の獲得競争が激化するのは目に見えているよ。

中には武力行使するような過激派だって出てくるでしょ。」


そしてアイも、アシュラの考えを否定しなかった。


「そうですね。

私もそうなると考えます。

でも実際にはそこまで酷い状況にはなりませんでした。

確かに武力主義の過激派を率いる統率者がは現れました。

しかし一方で平和主義的な考えを持つ統率者も現れ、弱者救済の名目で幅広く数を集める者もいたからです。

何処にでもいるものです、人格者というものは。

また集団の中には、そう考える者が多かったというのも、混乱を最小限に食い止めることにつながります。

数が多い方が何事も有利に働く場合が多いというのは、誰もが考えることですからね。」


「確かに、単純に考えれば数は力だぜ。

そうやってそれぞれの集団での力のバランスが取れて拮抗すれば、余計な争いには発展しないってことだな。」


「その通りです。

結果として元住人たちは、最終的に五つの集団へと分かれました。

ただ近くに居続けては争いが起こるかもしれないことを懸念したのでしょう。

物理的な距離を置くために、それぞれ違う場所へと移り住みました。

その後も元住人たちは、分かれたり合流したりを繰り返します。

そして長い年月をかけて環境へと適応すると共に、それぞれ新たな種へと進化していきます。

こうして元住人たちは、現在の様々な種族の祖となったわけです。」


「それについては記録通りであるから、疑いの余地はない。

だがどこに生贄の要素があったのか疑問だぞ?」


アシュラの疑問に、アイは簡潔に答える。


「単純な話ですよ。

元住人たちは、様々な種族を生み出すための生贄にされたのです。

彼ら彼女らの礎無くして、現在の状況にはなりませんからね。」


だがアイの答えに、アシュラは更なる疑問を口にする。


「でもそれって、結果そうなった、ってだけでしょ?」


アシュラの疑問はもっともであるが、アイは答えを変えずに更なる情報を開示する。


「確かに、結果ではあります。

でも現在の結果を、ある程度狙って進化を促したとしたらどうです?」


このアイの答えを、アシュラは即答で否定する。


「それは不可能だろ。

そんなことができたら、今頃世の中は望んだ種族だらけだぜ。」


「私も狙って望んだ種族に進化させることは不可能だと思います。

しかし生物は環境に適応し、進化する可能性を秘めています。

生き残ることができ、次代を生み育むことが継続できれば、長い年月をかけることで種族を多種多様に進化させることは可能です。

そうは思いませんか?」


「確かに、その考えは否定できないし、可能性はあるだろう。

だが避難した元住人である使徒たちは、神格を持たない最下級だ。

更にそれまで生活していた空中都市には何でもあり、少なくとも外部からは害されない守られた環境だった。

そのような過保護なまでの温室育ちたちが、過酷な地上の環境で生き残るなど、非常に難しいはずだ。

間違いなく自然に淘汰され、全滅する可能性が高いと考えるのが一般的なはずだ。」


根本的な問題を上げて否定を続けるアシュラに対して、ここでアイは最初に話した内容を持ち出してきた。


「そこで生贄の選別です。

真の黒幕は事を起こす前から、事前に住人の使徒たちの様々な適応力を、長い年月をかけて調べていました。

その情報を元に地上へ避難させるのは、地上の環境に適応できる可能性が高い者たちを多く選別したのです。

当然様々な可能性を考慮して、適応力が低い者や基準に僅かに及ばない者なども含めていました。

そのためある程度の元住人たちは、生き残って地上に順応する可能性が高いことが最初からわかっていました。

わかっていなかったのは、どのような種族が新たに生まれるかだけです。」


このアイの話を聞いて、ようやくアシュラも内容を受け入れはじめた。


「なるほどね。

最初から生き残る可能性が高いことがわかっていたのは理解したよ。

でも様々な種族を生み出すのだけが目的だったわけじゃないよね。

その中に真の黒幕が望んだ種族が絶対にいたはずだよ。

さすがにそれは最初から狙うのは不可能だよね?」


「確かに最初から狙って、目的の種族を生み出すことは非常に難しいでしょう。

しかし何度かのテコ入れによる軌道修正と様々な偶然が重なり、奇跡的に目的の種族が誕生しました。

それも予想よりもだいぶ早い段階でです。」


「そうなのか?

だとしたらタイミング最悪だな。

で、その種族ってのは何なんだ?」


「現在、神人、と呼ばれる種族です。

神に最も近い人種族、ということでこう呼ばれています。」


「その神人というのは、使徒とはどう違うのだ?」


「ご存じの通り、使徒は神の庇護を受けた人種族のことで、基本的に現在地上にいる人種族とほぼ変わりません。

ただ先程言っていたように、温室育ちが原因で免疫力や抵抗力が弱いため、虚弱体質であることが大きな違いです。

一方で神人は地上に適応した種族であるため肉体は強靭です。

また様々な超常の能力を秘めた第三の眼という新たな器官を持ちます。

この第三の眼により、人には見えないものが見えたり、出来ないことができたため、地上でも一目置かれる種族として長く君臨しています。」


「神人は完全に使徒の上位互換種族だね。

第三の眼なんて神よりの能力じゃないの?」


「その通りだと私も思います。

神に最も近い人種族の由来でもありますからね。

でも、それなら亜神や半神を生み出せばいいだけです。

元々生み出す技術を持っていて、神人よりもあらゆる能力が高いのですから。」


「そうだよな。

だったら何でわざわざ使徒を進化させるなんて面倒な方法を取ったんだ?」


「答えは簡単です。

真の黒幕が求めたものを亜神や半神が持っておらず、使徒だけが持っていたからです。

それは使徒の極一部だけが持つ、ある因子でした。

しかし適性値が低すぎたため、使徒のままでは真の黒幕が求める域にまで達することは未来永劫できないと判断されました。

そこで生贄に選別した使徒を過酷な環境へ追いやることで進化を促し、目的の種族を新たに生み出そうと考えたのです。」


「その、ある因子、というのは何だ?」


「それは、高位の神格との親和性が異常なまでに高い特殊な因子、です。

真の黒幕は、使徒が進化して新たな種族となることで、この因子の適性値が上がると考えたのです。

その結果生まれたのが神人です。

神人の一部には、真の黒幕が求めた適性値を大きく上回る者がいます。

これは現在においても変わっていません。」


するとアイの話を聞いて、アシュラが突拍子も無いと思いながらも、何となくある考えを口にする。


「つまり真の黒幕は、高位の神の器となれる身体を求めていた、ってこと?

それってどこかに、かつて身体を失った超常の存在がいるとか?なんてね。」


「・・・」


これにアイは、否定も肯定もせずに沈黙したのだった。

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