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無双するご主人様のハーレム事情  作者: 不利位打夢
第20章 探求と暗躍
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暗躍する者たち39

それもあってか、主の女性は首謀者の名前を隠すことなくあっさり口にした。


「そうだ。

そして、その首謀者は調停神セルトだった。」


隠すと思われた名前を主の女性が口にしたので、これについても一応アイは先に一言確認しておく。


「その名も出してよかったのですか?」


すると主の女性は少し語尾を強めて答える。


「構わん。

セルトは、私たちがアルベルとカルインが起こしたクーデターに対応していた隙をついて行動を起こした。

元々警戒はしていたが、さすがに二つ同時、それも時間差で後に行動をを起こされたクーデターの方にまでは対応が追いつかなかった。

クーデターについて、事前に何の情報も掴めていなかったことも対応が遅れた原因だ。

それらのいろいろな要因が積み重なったことで、私たちは完全に後手に回ってしまい、セルトのクーデターは成功するかに思われた。」


「でもそうはならず、クーデターは失敗した。」


「ああ。

セルト側の作戦中のミスや、運良く私たちの防衛が上手くいったことで形勢が逆転する転機となった。

そこへ彼女の機転でセルトを休眠させたことが決定打となり、何とか封印することができ、クーデターは失敗に終わる。

だがこれは一時的な措置で、完全に封印するにはアカシックレコードシステムを稼働させるしかなかった。

そのために彼女と共に私も準備に取り掛かっていた。

だが私の記憶はそこまでで、次に意識を取り戻したのはついさっきというわけだ。

だから間に何があったのか、私は知らないのだ。」


そう言って主の女性は、期待を込めた目でアイに視線を送ってきた。


どうやらその空白の期間について、アイの説明に期待しているようだ。


そしてその期待に応えるかのように、アイは説明に戻る。


「そうでしょうね。

では話の続きに戻りましょう。

貴女に何故当時の記憶が無いのか?

答えは簡単、貴女は真っ先に第一制御機能のカプセルに入れられてしまったからです。」


これは事前に予想していたようで、アイの話に対して主の女性に驚きは無かった。


「やはりそうか。

だが問題は、誰が私をカプセルに入れたか、だ。

私はおそらく黒幕がやったと考えているんだが、違うか?」


得意げに主の女性が口にした予想に対して、アイがそれとは違う内容を事実として告げる。


「そこが少しややこしいところなんですよね。

結論から言いますと、貴女をカプセルに入れたのは彼女ですよ。」


今度はさすがの主の女性も驚きを隠せなかった。


「何!?何故彼女が!」


「理由は三つです。

一つ、貴女に合わせた設定を施してあった第一制御機能のカプセルが稼働待機中で貴女がその近くにいたから。

二つ、彼女自身が残って対処することが最も上手くいく可能性が高かったから。

三つ、彼女と黒幕の思惑が一致したから。」


アイが淡々と答えたからか、主の女性も少し冷静さを取り戻したようだ。


「なっ、なるほど・・・一つ目と二つ目は、合理的な彼女らしい理由だ。

だが三つ目はどういうことだ?」


「単純なことですよ。

アカシックレコードシステムを稼働してしまえば、貴女には簡単に手を出せなくなるとも考えたからです。

彼女は貴女をカプセルに入れることで共倒れを防ぎ、自分に何かあったときの保険としたかったのでしょう。

一方で黒幕は、貴女が彼女と共に自分の脅威となって立ち塞がる可能性を排除したかった。

彼女だけであれば対処できると考えたのでしょうね。

そのための事前準備として、黒幕は統制管理者たちを休眠させていました。

これは自分より権限が上の彼女が、空中都市の機能を使えないようにするためだと考えられます。

少しでも脅威を排除したかったのでしょう。」


「そういうことか。

黒幕は自分に有利な場を作り出して彼女を排除しようとしたわけだ。」


だがこの主の女性の言葉を、アイが訂正する。


「それは少し違います。

排除ではなく、あくまでも対処です。」


「どちらも似たようなものだと思うがな。」


「いいえ、全然違います。」


「ということは、言葉の違いだけでなく意味もまた違う、ということか?」


「そうです。

黒幕の狙いは、彼女に邪魔されずに目的を果たすことでした。

しかしその目的を果たすためには、どうしても彼女の存在が必要不可欠でした。」


「なるほど、だから排除ではなく対処なのだな。」


「そういうことです。

ですが、そんな黒幕の最優先目的は、彼女によって防がれてしまいます。」


「つまり彼女が黒幕を撃退したということだな。

さすがだ。」


「ところがそれで話は終わりませんでした。

一見すると彼女の一人勝ちに見えますが、結果としては良くて痛み分けといったところですね。

彼女は黒幕の最優先目的は防げましたが、その他の目的は防げなかったのですから。」


このアイの話に、主の女性が疑問を呈する。


「彼女が相手に後れを取るなど、にわかには信じられないな。

そもそも黒幕の目的は何だったんだ?」


「あの場での黒幕の目的ですが、まず最優先はアカシックレコードシステムを乗っ取ることです。

しかしこれは、彼女が直接対峙して黒幕を倒したことで防ぐことができました。」


「正面から一対一で彼女に勝てるものなどそうはいないからな。

当然の結果だ。」


「その彼女ですが、このときふとあることを思いついてしまいます。

それが、空席になっていた第三補助機能のユニットに黒幕を使うことです。」


これだけの説明で、主の女性はその意図を理解した。


「なるほど彼女らしい判断だな。

第一と第二の補助機能ユニットが犯罪者なのだから、第三にも同様の者を使うのは合理的だと考えたのだろう。

それに補助機能ユニットであれば、アカシックレコードシステムに直接干渉することは不可能だからな。」


「その通りなんですが、これにより黒幕の次点の目的は果たされてしまいます。

それが、アカシックレコードシステムを稼働させることです。」


「どういうことだ?

乗っ取れないのであれば、稼働させる意味は無いはずだ。

それこそ黒幕が正常稼働時の使用権限を所持した状態で逃げ延びていなければな。」


「一応最下級ではありますが、権限だけは事前に手に入れていたようですよ。」


「それでもわからないな。

黙って見ているだけで、勝手に次点の目的は果たせたというのに。

それを最優先目的を果たすためとはいえ、わざわざ危険を冒してまで、何故彼女と直接対峙したんだ?

現に結果として黒幕は、第三補助機能のユニットに入れられてしまっている。

これではアカシックレコードシステムが稼働しても、自分で使うことはできないはずだ。」


「それこそが黒幕の狙いです。

彼女もそう考えたからこそ、黒幕を第三補助機能のユニットに入れて稼働させたことで気を抜いてしまったのです。

その隙を突かれた。

それにより、次々点の目的も果たされてしまったのです。

それこそが、彼女の無力化です。」


「ありえん!」


「信じるか信じないかは、お好きにどうぞ。

私は私が知る事実を、ただ伝えているだけですから。」


「そんな・・・では彼女はどうなったというのだ!」


「不意をついた黒幕は、彼女をアカシックレコードシステムに未接続状態だった予備の中枢制御カプセルへ閉じ込めました。

運悪く動力だけは供給されていたため、彼女はそのまま封印されてしまいます。

そのため、現在彼女の身体は予備の中枢制御カプセルと共にあります。」


彼女の居場所が特定できると、主の女性の判断は早かった。


「それならば、予備の中枢制御カプセルから彼女を解放すればいいだけのこと。

ツクヨミ、予備の中枢制御カプセルは今どこにある!」


しかし指示を受けたツクヨミの顔色は優れない。


「それが・・・予備の中枢制御カプセルに関する情報が、一切記録に存在しておりません。

また先程のアカシックレコードシステムに未接続であるとの話が本当であれば、その行方を探すことは非常に難しい状況でございます。

申し訳ございません、主様。」


「手がかりは全く無しか・・・」


有力な情報を得たものの、それを生かす方法がわからず、主の女性は険しい表情になる。


そこへ間髪入れずにアイが追加情報を伝える。


「そうでもありませんよ。

私は予備の中枢制御カプセルがどこにあるかは知っていますからね。」


「本当か!」


今最も知りたかった情報に歓喜する主の女性だったが、後に続くアイの話を聞いて、そう簡単ではないことを思い知ることになる。


「ですが、すぐには無理ですよ。」


「どういうことだ!」


「まず予備の中枢制御カプセルですが、稼働中の中枢制御カプセルと共にあります。

そして中枢制御カプセルは、貴女も知る当初の予定通りの設置場所にあります。」


アイから場所を聞き、主の女性は再び険しい表情に戻ってしまう。


「何、だと・・・」


主の女性の予想通りの反応に、一応アイは確認とともに念を押しておく。


「気付いたようですね。

そうです。

場所が場所ですから、予備の中枢制御カプセルから彼女を解放するということは、中枢制御カプセル内にいる人物も解放されてしまうということです。

その意味、貴女にはわかりますよね?」


「ああ、当然だ。

確認するが、中枢制御カプセルに入っているのはセルトで間違いないな?」


「ええ、間違いありません。」


アイに確認を終えると、主の女性は冷静に考えはじめた。


「そうなると単純に、彼女を解放して終わり、というわけにはいかないな。

それでは苦労して封印したセルトまで解放してしまうことになる。

何か対策を考えなければ。」


「その認識を持っているのでしたら、安易に彼女を助けるような行動をすることは無いですね。

安心しました。」


「それを行ってしまっては元の木阿弥なのだから当然だ。

だからといって座して待つという選択肢は私には無い。

しかし今のところ有効な手段が思いつかない。

そちらには何か考えがあるのか?」


あまり期待せずに話の流れで尋ねてみただけだったのだが、アイからは前向きな答えが返ってきた。


「今の貴女が認識した状況だけだったら、単純で簡単だったんですがね。」


「私としてはこれだけでもかなり複雑怪奇な難問なのだが、他にも何か問題があるのか?」


「一つ一つはそこまでたいした問題ではありません。

しかし複数の問題が複雑に絡み合ってしまったことで、事前準備が面倒なんです。

ただ対処は可能です。

時間はかかりますけどね。」


「事前準備?」


主の女性がアイの言葉の意味を考えている間、僅かな沈黙が訪れる。


するとそのタイミングで、それまで黙って二人の話を聞いていた人物が話に割って入ってきたのだった。

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