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無双するご主人様のハーレム事情  作者: 不利位打夢
第20章 探求と暗躍
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暗躍する者たち36

だがそうはならなかった。


「そうですか。

では、結論から言います。

全然違います。

貴女の考えは全くの見当違いです。」


アイに否定されたことで、主の女性がムキになる。


「違う、だと・・・なら、お前がここにいる目的は何だというのだ!

答えろ!」


そんな主の女性に、アイは余裕の表情で、答えられる範囲で正解を伝えはじめた。


「まぁそれくらいは答えましょう。

そもそも前提が間違っています。

私に復讐するつもりなど、微塵もありませんよ。

むしろ今の私という存在を生み出したことには感謝すらしています。」


アイの不穏な答えに、主の女性が身構える。


「っ!?

それはまさか・・・」


だがそれは杞憂に終わった。


「慌てないでください。

だからといって、あの愚か者を手助けするつもりも、ましてや仲間に引き入れることなど絶対にありません。

私にとっては、ただの排除すべき敵の一人、というだけです。

それは断言します。」


「そっ、そうか・・・」


主の女性は表面上警戒を解いたものの、その表情からは、いまだに疑っているのがわかる。


その誤解を解くために、アイは更に説明を続ける。


「ですからあの愚か者の排除は決定事項です。

しかし必ずしも、それを私自身の手で行う必要は無いと考えています。

貴女方が排除してくれるというなら、それはそれで一向に構いません。

最終的にあの愚か者を排除するという点については、貴女方と私の考えは一致しているはずです。

違いますか?」


アイの説明に、主の女性はある程度は理解を示したが、完全に疑いは晴れなかった。


「確かに、その点が一致していることは認める。

だがお前が無限書庫計画の被害者である事実は変わらない。

何時お前が心変わりをして復讐を優先するかわからない。

現時点では、そのような不確定要素を抱える相手と手を組むのは難しいと判断せざるを得ない。」


だがアイにとっては想定内だったようだ。


「まぁ当然の反応ですね。

自分の心の内を相手に伝えるのは難しいので、貴女方がそう判断するのも仕方ありません。

しかしこれもアカシックレコードシステムに頼り切った弊害ですかね。

完全に白だと判断できなければ歩み寄れないというのは問題です。

これでは世の中は敵か味方しかいないことになってしまうというのに。」


「それはどういうことだ?」


「アカシックレコードシステムでは、事象のみを文章で記録します。

そのため表面上のことだけで、内に秘めた想いまでは記録できません。

ですから相手の心情を正確に把握することはできません。

だからこそ貴女方は、私に対して疑心暗鬼になっているのですが。」


「当然の仕様だ。

他者の心の内を正確に知ることなど不可能なのだからな。」


「それはそうなんですがね。

とりあえず今はその話は置いておきましょう。

ですがそうなると、アカシックレコードシステムの記録は、非常につまらない内容になってしまいます。

無機質なものに関する記録はしょうがないですが、命や感情を持つ者に対する記録は、非常にわかりづらくなってしまいます。

何でそんなことをしたのか、その行動の意味は何か、など、記録だけからは判断しづらいものがありますからね。

そこで追加された機能が、担当ユニットの主観による解説の付与です。

これは当時、画期的な機能だと絶賛されていましたね。」


すると突然、主の女性がご機嫌になって自分から説明をはじめた。


「そうだ。

ユニットが相手の心情を読み取って解説を付与することで記録のわかりやすさが飛躍的に向上した。

今のアカシックレコードシステムの記録という点においては、根幹を担っていると言っても過言ではない。

そして何を隠そう提案したのは、この私だ。」


そんな得意げな主の女性だったが、これにアイは疑問を口にする。


「そう絶賛したい気持ちもわかりますよ。

でもこれって非常に厄介ですよね。

そもそも記録としてどうかと思います。」


アカシックレコードシステムにケチを付けられたと感じたのか、主の女性が感情的になる。


「何だと・・・どういうことだ!」


対してアイは、坦々と理由を説明する。


「まず大前提として、本人以外に心の内はわかりません。

それは私も同意しますよ。

ですがそこに他人が勝手に解釈した解説を付与されたら、記録を見た大半が、その解説を信じてしまいます。

解説は本人の心の内なのだろうと。」


アイの指摘に、主の女性が言葉に詰まる。


「そっ、それは・・・」


構わずアイが続ける。


「これが複数のユニットによる解説が存在していて、記録を参照した者が比較できるならまだわかります。

第三者たちによる俯瞰した解説なのだと、一目瞭然ですからね。

それにより同意する者や否定する者もいるでしょうが、場合によっては新たに独自の解釈を導き出す者もいるでしょう。

だからこそアカシックレコードシステムはデュアルモードが標準動作になっていたはずです。

しかし稼働開始から今日に至るまで、シングルモードでの稼働しかしていません。

つまり一方に偏った解説しか存在しないということです。

あらかじめ解説だと知っている側からすれば、信憑性が低いことは明白です。

ですが解説だと知らない側からしたら、信憑性が高い情報と判断する者が大半でしょう。

この前提条件の違いで、得られる情報の意味が全く違ったものになることもあります。

さて、これまでの記録に付与された解説、いったい誰のものでしたかね?」


何も反論できず、主の女性は黙り込んでしまう。


「・・・」


するとアイは手のひらを反すように、今度は一転してアカシックレコードシステムの有用性を口にする。


「まぁ過ぎたことは今更言っても仕方のないことですがね。

それに、その点を理解して使用する分には、アカシックレコードシステムはかなり有用です。

解説部分を参考するだけに止め、記録を客観的に分析することで、必要な情報の大半を得られますからね。

またそれを上手く利用することで、使う者を選ぶシステムという意味でも、思惑通りとなっているでしょう。

ただ現状では、アカシックレコードシステムは、本来の役割の半分程度しか果たせていませんが。」


このアイの言葉に、それまで黙っていた主の女性が反応を返す。


「・・・ちょっと待て、最後の、半分程度しか果たせていない、というのはどういうことだ?」


「どういうことも何も、言葉の通りですよ。

覗き見ているあの愚か者に対しては、解説を心の内と誤認させることに成功しています。

これはいいでしょう。

しかし貴女方が彼女と呼ぶ相手には、今のところ何も伝わっていません。

つまり役割を果たしていません。」


アイがそれ以上何も言わずにいると、先程までの様子が嘘のように、主の女性が勢いを取り戻す。


「・・・まさか、それだけか?

そうか・・・アカシックレコードシステムについて、お前の認識はその程度か。

とうとう化けの皮が剥がれたな。」


そんな主の女性に、アイは慌てることも動揺することも無く、平常心のまま尋ねる。


「化けの皮ですか・・・一応理由を聞きましょうか。」


アイの問いに対して、調子を取り戻していた主の女性は少し口が軽くなっていた。


「いいだろう、特別に少しだけ教えてやる。

お前はアカシックレコードシステムを、ただの情報取得ツールとしてしか把握できていない。

しかしアカシックレコードシステムの本質は違う。

その程度の理解度でアカシックレコードシステムを語るなど、片腹痛い。

出直してこい。」


反撃してきた主の女性に、すかさずアイが応戦する。


「それはもしや、最優先目的とやらのことを言っていますか?」


しかし主の女性に気にした様子は一切無く、更に口を滑らせた。


「やはり先程の話を聞いていたか。

まぁいい。

そうだ、アカシックレコードシステムには真の役目がある。

それは情報を記録することではない。

情報の記録は、あくまでも副産物だ。

そのことを理解していない者が、最高傑作であるアカシックレコードシステムの何をわかっているというのだ。」


ここまで主の女性の口から語られた内容を聞いたアイは少し考え込む。


「さて、どうしたものですかね・・・」


それを追い詰められたと勘違いした主の女性が、ここぞとばかりに畳みかけてきた。


「今更考えるなど、時間の無駄だ。

話は終わりだ。

おとなしくユニットとしての役割にだけ専念していろ。」


完全にやり込めたと主の女性が勘違いしたところで、アイが反撃の口火を切る。


「・・・やれやれ、このままでは一向に話が進みませんね。

しかたありません。

無知な貴女方に、こちらからいくつか情報を提供しましょう。」


自分の優位は変わらないと考えていたものの、アイの余裕の態度から主の女性は思わず口調が強くなる。


「何?

私たちが無知だと言ったのか!」


構わずアイが続ける。


「言いましたが、それが何か?

私は本当のことを指摘しただけですよ。

先程ご自分でも確認していたじゃないですか。

最優先目的の進捗はいまだに0%だと。

アカシックレコードシステムが稼働してから全く進捗が無いのがいい証拠です。

これまでいったい何をしていたのやら。」


「そこまで言うからには、お前は無知ではなく、私たちよりも博識なんだろうな!」


「少なくとも貴女方よりは、知っていますよ。

いろいろとね。」


「その言葉、最早取り消せんぞ!」


「必要ありませんよ。」


「ならば、それを証明して見せろ!」


「構いませんよ。

ただやるからには、私は最後までやり切りますよ。

貴女に最後まで付き合う覚悟はありますか?」


「望むところだ!」


「後になって無かったことにはできませんよ。」


「くどい!

二言は無い!」


「言質は取りましたよ。」


自身に満ちた主の女性であったが、ここまでアイの計画通りに話が進んでいることには、全く気付いていないのだった。

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