ホワイト先生
ホワイト先生は
今日も大忙しです。
「ようやく黒字になりましたね」
教会を改築した学校の校長室で、ようやく島全体に流通できるようになった珈琲を飲みながら人化状態の白虎----ホワイトはにこり収支報告書を見ながら呟いた。コニャック諸島の全住民は元からいた住民は自分達を合わせても十数名、大人は三人くらいという中で子供達の一番大きな子供で14ほどの少年と少女二人で後は10にも満たない子供達が殆どだった。
そこへ来たのはこの島の古参の龍さんの友達であるシンさんの遠縁というレイ君という男、特異な知識と並はずれた能力を駆使し、更には世界有数の大商会デミムーア商会の令嬢ルビー=デミムーアを呼び出し、最高レベルのギルド員数人と、世界初である商業を兼ね備えた学校を建築させた。最初は難しいところもあったものの軌道にのり、子供達は貪欲に知識を手に入れている。実に喜ばしい事だ。魔獣として生活してた時よりも実に大きな充足感がある。
そして私の最近の楽しみは。
「あ、ホワイト先生じゃないっすか」
「ガジル先生、こんにちは」
レイ君より教わった銭湯なる湯浴み方式だ、乾いた木をくべ常に新しいお湯につかり疲れを癒す公式のお風呂だ、元々火山地帯もあり温泉もあるのだが何分、魔獣の多い箇所にあり浸かるのは人間ならば難しい、魔獣の側面と人間の側面から見た場合、好ましいのは共存するためにエリア分けをする事だ。魔獣も生きていくためには必要な環境もある。
話のわかる魔獣には理解して頂いては貰ってはいるが話の通じない魔獣は撃退するか滅ぼすという事にしている。弱肉強食の理念をもって応対させていただく、といっても何かある場合はきちんと子供達にも自衛の手段を持たせるようにはしているが……。
そして私は銭湯の番台を抜け、派遣されてきたギルド員の社会科のガジル先生と共に体を洗い、湯船に浸かる事にした。ガジル先生は元々は考古学者の出であるからどちらかというと遺跡探索というものの方が得意らしいのではあるが、あえて外の世界に子供達が興味をもってもらえるようにとの配慮で担当してもらうようにお願いした。身長は170ほどで細身のどちらかというと技工士のような優男だが、得意とするのは殲滅力の高い魔術と毒付加の双剣という似ても似つかないそんな恐ろしい戦闘方法を持つ男である。
「お仕事はどうですか?」
「ええ、なかなか充実しています、やはり子供に教えるのは楽しいですね」
「ええ、皆素直ですし」
「なかなかギルドの子達だとそうもいかない」
先生達特有の会話をしながらのんびり話していく。
「そういえばこの前の中間試験は皆出来よかったですね」
「ええ、ただ龍先生のは無理難題でしたけどね」
「大岩を魔力付加なく割れですか、出来た子一人もいませんでした」
ホワイトとガジルは苦笑する。
「赤点はなくて何よりです、生徒のお店運営もうまくいってるようです」
「そうですね、ちゃんと給与をもらうという事も学んでいるみたいで、ルビー姐さんの読みはあたりでしたね」
「ええ、幼いころより商売できる事を覚えればきっとこの世の中に通用します」
「ですね、俺もやりがいありますし、そういえば移民の件もありますよね」
「そこは面談して問題はないんですが……問題はあの人ですね」
「……ああ、あの人ですか」
ガジルも苦笑しながら件の人物を思い出す
コニャック諸島の港で美しい青い髪の長身のキャリアウーマンといういでたちの蒼いフレームの眼鏡をかけた巨乳美女が幸せそうに自らの蒼いスーツに鼻血を垂らしながら悦に浸っていた。彼女の目の前にはまだ筋肉もできかけてない上半身裸のまだ幼い少年とレイがデザインしたシンプルなスクール水着を着た少女が手慣れた様子で投網漁をしていた。
「いいわ、エデンね、どうしてこの世界は幼女とショタと結婚できないのかしら」
「……不穏な事はやめてくださいね?」
後ろににこりと微笑みながら鬼のオーラを纏うアマリアを横目に青い髪の女性、ルキナは静かにうなだれた。
「……ほら光源氏なんたらって話あるじゃない」
「将来的に自分好みの男にですか……あなた、薬学科の教師だからって急成長の薬作ってないでしょうね?」
「……その手があったか!!」
「……怖い人呼んだなーもう」
「ホワイト先生にお熱なアマリア先生ごめんなさーい」
「……教会の裏きます?」
「……すいません」
「なーなー、先生達なにしてんだろな?」
「しらね!それよりデカイ魚のがしちまった!!」
「ホワイト先生のご飯今日なにかなあ」
子供達は好き勝手に話しながら今日の夕飯を考えていた。
「ルキナさんは非常に優秀なんだが、少し危ないからね」
「多分、うちのイメージにやばいですよ」
銭湯から出て珈琲牛乳を飲みながら外に出ると
「うあ、マジで人化しながら生活してやがる」
赤い長い髪を後ろに束ねた赤いライダースーツの褐色の肌の男勝りな巨乳の美女が煙草をふかしながらホワイトに声をかけてきた。
「……人化してる君にも当てはまるがな、朱雀、いや今はスフィアの方がいいか?」
「そだね、ホワイト、久々に顔出したんだ、飯喰わせてくれよ」
「……ホワイト先生、こちらは?」
「ああ、昔から懇意にしてる朱雀という種族のスフィアという女性ですよ」
ガゼルは唖然としながら目の前の女性を見ていた。
「うめえええええええええええええ」
子供達はアマリア達に任せて、ホワイトは旧友であるスフィアにこの街で捕れた新鮮な海の幸を使った海鮮丼を振るまっていた。朱雀であるスフィアとは幼い時期からの友人であり、種族こそ違うものの兄妹のような関係だった。ホワイトのほうが何年か年上であるため。
「そういえば、どうしてここに?」
「いんや?ホワイトが先生やってるってんでよ、どういうもんか見に来ただけだわ、多分そろそろ玄武のじじいもくんじゃね?」
「ゲンさんが?」
ホワイト達は四神と呼ばれる種族でもある。主にその種族の最強種が名乗る事が許される称号であるのだが、中でも玄武は四人の中でも長命であり、水を司る種族でありながらも他の属性にも適性がある言わば変異体だ。加えてオールマイティーに戦える事もあり、四人のうちに最強といってもいいだろう。年齢的には四人の祖父とも言える年齢で人化状態時にはフリーの傭兵としてギルドや国にその名を轟かせるいわば伝説の男でもあるのだ。当然それぞれの名前も知っているし、お互いの居場所も把握している。
この世界の四神と呼ばれる者達は仲がよく寧ろ人間達を見守るような存在であるのだ。
「多分、青龍のアネキもくんじゃね?」
「ああ、子供好きだからな、アオ姉さんは」
そう言いながらホワイトとスフィアはにこやかに話を続ける。
「ホワイトせんせー!!!」
「おやテオ君どうしました?」
現在食事をしている食堂に生徒が入ってくるのを見るとにこやかに応対するが、生徒はあわてながら言葉を告げる。
「なんかすごいムキムキなおじいちゃんが悪いお水の中の竜を素手でぶんなぐってる!!」
「……」
「……」
とても嫌な予感がする二人であったが生徒の言葉につられて二人はその場を後にした。
「ゲンさん、何してんの」
「おお、スフィアにホワイト!久しぶりだなあ!」
左目に刀傷をつけた長い髪の白髪の好々爺はにこやかにこの島を襲ったとされる竜達を素手で殴り飛ばしていた。身長は190ほどで無駄な脂肪もない武闘派の老人という感じだ。しかも上半身裸という事は恐らく海を泳いできたんだろう。
「……ちなみに何キロ泳いできました?」
「500キロだな!人化状態だと息が思ったよりもたんな!!」
「人間社会に準じた生活をしましょうよ、ゲンさん、だから伝説の傭兵なんていう称号手に入るんですよ、うちの子達が真似したらどうするんですか」
「おめえ、そら勇者になれば万事解決だべよ!」
「勇者になる可能性はあるかもしれませんが、そんなに勇者が産まれたら魔王涙眼です」
「まあ、魔王は泣かしたしな」
「戦争容認派の魔王を単騎で潰して勇者の面目潰しましたよね、空気読んでください」
「まあいいじゃねえか、それより飯喰わせろ、腹減った」
「……もう常識がずれててどうしもようないですね」
ホワイトはため息をついた。
「それで今日はどうしたんですか、うちの先生達は後で自己紹介するとして」
「いや、俺もここではたらきてえなって」
「ゲンさんが先生になるのは別にいいですけど、なんでまた?」
玄武ことゲンは目を遠くにむけながらふっとため息をついた。
「嫁によお、いい加減落ち着けって言われてよ、胸躍る冒険ていうのは俺はまだまだいけるっていうんだが、もうな、息子達も独り立ちしてるし、長女なんかおめ、旦那作って子供できてるしよ」
「あ、そか、ゲンじい、女勇者と結婚したんだっけ、不死と不老の勇者と」
「おお、いつまでも若奥様なんて言われていいだろう、まあ娘達も特性引き継いでるんだが、そこらへんは旦那任せだな、一応不死の秘術は俺できるし」
「天下の玄武もお嫁さんには勝てないですか」
「まあ……嫁さんが倒すべき魔王潰したの俺だしね」
「そりゃ責任とらないといけないですよね」
「……魔王倒すために女捨てたっていったらなあ」
「ミカサさん、美人だからいいじゃん、じいちゃんも若い姿になりゃいいのに」
「年相応ってのがあんの、夜はあいつしかたたないけどね」
「昼間から何いってんの」
「大事なことでしょ、そういうのは」
ゲンはカッカと笑いながらホワイトに向き直る。
「まあそういうわけでさ、今までの仕事はしつつ先生にもなりたいから嫁さんもこっち移住していい?そろそろのんびりしてもいいかなって」
「別にかまいませんよ、ミカサさんて確か生家は商家でしたよね、商売の手ほどきでも御願いしますか」
「俺は?」
「武術全般で、ゲンさん武器とか無手とか趣味でしょ?」
「おお、じゃあ指先一つでダウンな感じにするか」
「言葉的にアウトっぽいね」
「あ、アオも近々来るっぽいぞ」
「アオ姉さんもか、多分住むな」
「住むね」
「住むだろうな、さびしがりだし」
三人はクスクスと笑う。




