闇の貴族
料理人と貴族の両立は
色々とあるようで
「君が貴族になるなんてね」
ジーニアスが和楽でにこやかに清酒を飲みながらにこりと友の門出を祝う。
「しかし店と貴族の仕事の両立は難しいんではないか? シルベリア家は王国屈指の領土と多くの知識量を持つ名家だ、婿に入るという事は次期当主にもなるということでもあるよ?」
「そこは妻がよくしてくれているから問題はないよ、ゴーレムも配置してあるし」
レイは魚を捌きながらにこにこと笑う。
「………ゴーレムって魔導兵器の一種じゃないか?レイそんなものも造れるのか?」
「古文書に現代魔法理論を加えた簡易版ではありますが魔物を撃退するぐらいの能力はあるよ」
ジーニアスはため息をつきながら次の清酒を煽る。
「レイ………君ほど賢者に向く男はいないね」
本来ゴーレムというのは太古の滅びたはずの文明から発掘される希少価値の高い魔導兵器とも言われる兵器の一種だ。現代でも造れる事は造れるが安易な指示しか受信できる事が出来ない作業用の物になってしまう。だがしかし目の前の友人はゴーレムを簡易化し魔物を撃退できる程のスペックを持つゴーレムを作成したと告げたのだ。現物は見てはいないが………この男ならばやるだろう。
聞けば貴族の執務もすでに覚え時属性と回帰属性で常に時間の調整をして種類整理やおおまかなやるべき事をしているという。領民からも人気が高く才気ある者として歓迎されているようだ。勿論こちらの家族もおざなりはせずきちんとこちらの家にも寝泊まりをしている。
「君が結婚した事でコウシロウ殿下の娘であるシグレ姫は大層がっかりしたそうらしいがね」
ジーニアスはくすりと笑う。
「一度ギルドの仕事で一緒になりましたね」
「その時の仕事ぶりと人間性に惚れたようだよ、我が国は一夫多妻制でもあるが………君はけしてしないだろう?」
「ええ、僕は妻ひと筋ですから」
ジーニアスはにこりと笑いながら
「闇帝の旦那様になる人間が君のような男で我が国は安泰だ………まあシグレ姫は私も昔から懸想していたわけだから、とてもよい機会だったが」
ジーニアスは少しだけ企みのある笑みを浮かべる、その顔を見ながらレイはにこりと言い返す。
「漁夫の利とはこの事を言いますね」
「失礼だな、傷心の姫君を癒す事に悪い事はないではないか………それに一目ぼれに理由はないだろう?」
「ちがいない」
レイは近海でとれるマグロに似た美しい赤身の刺身を差しだし冷やしたビールを差し出す。
「昼間から飲むお酒はいいねえ」
「………昼間から場末の食事処で食べる王は君くらいなものだろ」
「まあそういう王もいてもいいさね」
ジーニアスはにこやかに笑う。
「そういえば公務は終ったのか?」
「終ったね、まああとは外交上の手続きくらいなものかな?」
「ああ、東国の香辛料が貿易できるようになったんだね」
「ああ、雷帝と君が共同開発した航空冷却機によって保存の問題は解消できたからね、君の知識には恐れ入る」
「古代知識の応用をしただけですよ」
「王立学術研究所の学者達が是非君を客員教授にしたいと申しているよ」
レイは自分の飲む清酒を用意すると
「僕は妻の仕事とギルドの仕事、料理人として家族と共にいる事が何よりも幸せですよ」
「だろうね………闇帝は我が国の暗部にも関わる………ゼファーをよろしく頼む、彼女は私にとっても良き友人なのだ」
「ええ、言われなくとも」
レイは静かに微笑む。




