18 -私の夢-
18 -私の夢-
翌朝、葉瑠は結賀に言われた通り演習場を訪れていた。
半年ぶりに見る演習場は、半年前と変わらず広かった。
そんな平坦な演習場には現在、6機のVFが待機状態にあった。
見た感じただのノーマルVFだ。装甲も過剰に付いているし、初期段階の演習用の機体だろう。
6機のうち5機は等間隔に並び整列しており、残り1機は向かい合うようにして立っていた。
少し遠くから6機を眺めていると、その一機から声が発せられた。
「遅かったじゃねーか、葉瑠」
結賀の声だ。どうやらVFに乗っているようだ。
葉瑠は彼らに近づいていく。
声が届く距離まで近づくと、ようやく葉瑠は返事をした。
「約束通り来たけど、何をするつもり?」
結賀はハッチを開くとコックピットから飛び降りた。
高所から落下したにも関わらず、結賀の着地は猫のごとく優雅だった。
「これから新入生の実戦訓練だ」
優雅はそう言って5機に目を向ける。
もう搭乗しているのか、5機のアイカメラはこちらに向けられていた。
「こんな朝から大変だね……」
時刻はまだ7時だ。
朝に来いと言われたので早めに来たのだが、この様子だともっと前から待っていたかもしれない。
「ごめん、もしかして待たせちゃった?」
「安心しろ、こいつら、お前の指導を受けられるなら何時間でも待つような奴らだ」
「私の指導って……え?」
唐突な宣言に葉瑠は驚くも、結賀は気にすることなく話をすすめる。
「お前のことは“シンギ教官が勝てなかった相手をブチ倒したランナー”だって伝えてある。超期待されてるってことだ」
アイリを倒したのは事実だが、だからと言って私がシンギさんより強いわけではない。
「そんな嘘情報伝えないでよ……って言うか私がどうして指導を……」
「どうもこうもない。昨日、お前は“自分が分からない”って言ってたよな。だから分からせてやろうってんだ。……さ、うだうだ言ってねーでコックピットに乗れよ」
「なんで……」
「とにかく乗れよ。訓練生も待ってるぞ」
「……」
納得のできる説明がほしい所だが、結賀も何か考えがあってのことだろう。
ここは素直に従うことにしよう。
葉瑠は結賀と入れ替わるようにノーマルVFに乗り込み、HMDを被る。
すると、目前に5機のVFが見えてきた。
葉瑠はとりあえず自己紹介する。
「こ、こんにちは。更木葉瑠です。今日はよろしくお願いします」
葉瑠のおどおどした挨拶に対し、5機は息を合わせて挨拶を返す。
「お願いします!!」
「うわ……」
やる気満々だ。結賀の宣伝のせいで過剰に期待されているようだ。
(でも、指導って言ってもなあ……)
私はプロのランナーだが、教官ではない。何をすれば良いのか全くわからない。
……とりあえず、軽く対戦形式で訓練してみよう。
そう決めた葉瑠は軽く構えを取る。
「じゃあ今から訓練を開始します。……まずは軽く対戦してみましょう。順番はそちらで決めていいですから、攻撃してきてください」
「……」
5機はお互い顔を突き合わせて相談し始める。が、10秒もすると最初の一機が前に出てきた。
「あ、あの、全力で頑張りますので、お願いします!!」
「お手柔らかに……」
2機は前に出ると軽くお辞儀し、構える。
葉瑠のVFは素手状態だったが、相手の手にはノーマルソードが握られていた。
剣を構える様子を見て、葉瑠は瞬時に相手の戦力レベルを察する。
(……慣れてるようですけど、敵じゃありませんね)
VFOBのランクで言うならAAといったところだろう。このレベルなら纏めて掛かってこられても対処できる。
「行きます!!」
新入生は剣を脇に構え、突進してきた。
無駄な動きが多い、雑な突進
知覚加速を使え、領域にも入れる葉瑠には全く脅威になり得なかった。
長い時間を経て、2機は激突する。
葉瑠は剣先をがしりと掴むと横方向に捻り、相手をその場に転がせた。
そして、特に考えることなく頭部を踏みつけた。
が、両機とも装甲が硬い上に出力も低いせいか、破壊まではいかなかった。
これがアビゲイルなら一瞬で勝負は決していただろう。
「……あ」
ほとんど何も考えずにやってしまった。
葉瑠は改めてこれが訓練だということを思い出し、転ばせた相手に謝る。
「すみません……これじゃ訓練にならないですよね……」
「ありがとうございましたッ!!」
新入生の反応は葉瑠の予想を超えていた。
相手からしてみれば、突進したかと思ったら知らぬ間に転ばされていたのだ。
かなりの実力差を感じ、葉瑠の凄さを理解し、そんな相手と手合わせできて驚きと喜びを同時に感じたのだろう。
新入生は立ち上がると一礼し、後ろに下がる。
替わりに二人目が前に出てきた。
二人目はハンマーのような武器を手にしていた。
どう対処すれば迅速に制圧できるか無意識に考えつつ、葉瑠はなぜか懐かしさを感じていた。
(なんだろう……)
二人目は間もなくこちらに襲い掛かってくる。
葉瑠はハンマーの攻撃を軽く回避してローキックで相手の足元を狙う。
キックは当たり前のように命中し、VFを地面に転ばせた。
二人目は立ち上げると一礼し、間を開けず三人目が出てくる。
「本気で強いぞあの人」
「こんな人と戦えるなんて……俺たちラッキーだな」
オープンチャンネルでは新入生同士が興奮気味に会話していた。
三人目は両手にナイフを持っており、軽快なステップで接近してきた。
葉瑠は相手の攻撃を完全に見切り、手首を掴んで投げ飛ばす。
相手は受け身も取れないようで、前の二人と同じく地面に転がってしまった。
全くもって無様だ……が、何故か葉瑠はその姿を見てあることを感じていた。
(楽しそう……)
みんな、楽しそうにVFを操っている。
対する私はどうだろうか。効率的に敵の殲滅のみを考えている。
いつからこんな事を考えるようになっていたのだろうか。
昔の私は勝利に執着していたが、同時にVFを操作することに喜びを感じていた。
上手くなる度に充実感を得、宏人さんに褒められるためにもっともっと強くなろうと頑張ったものだ。
VFは自分を認めてもらうための大切な物。存在理由を私にくれる大事な物だった。
それが今ではどうだろうか。
今の私にとって、VFは敵を倒すための道具に過ぎない。
大事な人を失って、その人の遺志を継ぐために一生懸命戦ってきた。
この訓練生のように上手くなろうだなんて一瞬だりとも考えなかった。操作技術を磨こうだなんて考えなかった。誰かに認めてもらおうだなんて、考えつきもしなかった。
楽しいだなんて、感じたりもしなかった。
昔の私は、VFに乗ることを楽しんでいたように思う。だからこそ辛い訓練も耐えられたし、ランキング戦も積極的に参戦できた。
……私にとってVFは自分の存在を肯定するための柱だった。
だが、いつの間にか、操作技術を極め、技を極め、領域での高速戦闘のスキルを手に入れた時からVFはただの戦闘兵器に成り下がっていた。
(私……私は……)
私はもう一度VFを好きになりたい。
好きなVFで楽しく戦い、強い人に認められたい。
(……!!)
その答えに至った時、視界が広がった気がした。
今まで見えなかった物、感じられなかったものが一気に葉瑠を刺激し、脳内を駆けまわる。
なぜ私はこんな簡単な事に気づけなかったのだろう。
宏人さんが望んでいた私の幸せとは、私の夢とは、こういうことだったのだ。
これまでの私には宏人さんしかいなかった。全ての選択を依存してきた。全ての行動を正当化してきた。
彼が死んでもなお、自分の生き方を、自分の存在する意味を彼に求めていた。
紛争地帯で戦い続けることが、自分のやるべきことだと錯覚していた。
(何やってたんだろう、私……)
私の体は私のためにある。私の心は私のためにある。
私は、私のやりたいことをやっていいのだ。
「……本当に、ありがとうございましたッ!!」
ふと気づくと5機のVFが一列に並んでお辞儀をしていた。それぞれ装甲に軽い傷が付いている。どうやら無意識のうちに4人目も5人目も倒していたようだ。
「いえ、こちらこそ……ありがとう」
葉瑠はコックピットハッチを開け、地面に降り立つ。
すると結賀が近づいてきた。
「どうだ葉瑠、懐かしかっただろ」
「うん……」
「自分のやりたいこと、分かったか?」
結賀に問われ、葉瑠は大きく頷く。
「私、決めたよ」
私はVFを思い切り楽しみたい。最高の試合がしたい。
その夢を実現させる方法は一つしか無い。
「決めた……って、何を?」
不思議そうな表情を浮かべる結賀に、葉瑠は宣言する。
「……シンギ教官に試合を申し込む」
「!!」
結賀は面食らった表情を浮かべていたが、すぐに笑顔になる。
「そうか……そうだよな、それでこそ葉瑠だ!!」
結賀は葉瑠の肩をばしばしと叩き、手を取る。
そして、学園校舎に向かって歩き出した。
結賀に引っ張られつつ、葉瑠は問いかける。
「結賀、どこに……?」
「善は急げだ……シンギ教官のところに行くぞ」
そういって結賀は満面の笑みを浮かべる。
余程私の決断が嬉しかったようだ。
「……わかった」
葉瑠は結賀の手を握り返し、シンギの元へ向かうことにした。
「……シンギさん、私と決闘してください」
結賀とともに演習場を出発してから10分後
葉瑠は学園校舎3階、シンギの教官室の中にいた。
シンギは教官服ではなく普段着……パイル地のロングTシャツにカーゴパンツを着ており、ソファーの上に寝転んでいた。
「……久々に顔を見せたと思ったら……いきなりな話だな」
シンギはソファーに座り直すと足を組み、理由を問う。
「どうして俺と決闘したいんだ?」
そう言うものの、シンギは乗り気なようで期待の篭った表情で葉瑠を見つめていた。
葉瑠は室内に足を踏み入れ、立ったまま告げる。
「私は最初、日本から逃げるためにこの学園に来ました。……そして宏人さんに好きになってもらうために操作技術を磨こうと心に決めました。でも、そんな中で自分でも気づかないうちにある夢を抱いていたんです」
「夢?」
シンギの言葉に、葉瑠ははっきりとした口調で応じる。
「……誰よりも強くなることです」
本当の夢は心躍るような最高の試合をすること。それはすなわち最強の相手と戦うこと、つまりは誰よりも強くなることだ。
葉瑠は胸元で両手を握り、語り続ける。
「単純な夢です。ですが、私は、私の夢を実現させたい。だから、シンギさんにそのお手伝いをして欲しいんです」
シンギは後頭部を掻き、話をまとめる。
「御託はいい。……俺と最強の座を掛けて闘ろうっていうんだろ?」
「……はい」
葉瑠の真剣な返事を聞き、シンギは短く告げる。
「3日後、正午。バトルフロートユニットで待ってるぞ」
「はい」
これ以上話すことはない。
二人共そう判断したのか、シンギは再びソファーに寝転がり、葉瑠は踵を返す。
勝負まで後3日……
葉瑠は自分の胸が闘志で満ちていくのを自覚していた。
シンギに決闘を申し込んだ翌日の朝
葉瑠はベッドの上でぼんやりと天井を見つめていた。
「……」
シンギ教官との試合まであと2日。
アビゲイルのオーバーホールは順調に進んでいるし、その日までには十分間に合うだろう。今日明日はラボに行って作業の手伝いでもしよう。
そのほうがじっとしているより気が紛れていいかもしれない。
そんなことを考えつつ、葉瑠は横に顔を向ける。
隣には結賀の寝顔があった。
だらしない寝顔。
起きている時は男と間違えられるほどのイケメンなのに、全くもって謎である。
(この顔を見るのも半年ぶりですね……)
……昨晩、葉瑠は結賀の部屋に泊めてもらった。
卒業後、女子寮から職員の住居エリアに移り住んだらしいが、片付けができない性格は相変わらずのようで、床には脱ぎ散らかした服が、テーブルには夕食の弁当のトレーが、キッチンは洗い物で溢れかえっている。
一宿一飯の恩義という言葉もあるし、今日は部屋の片付けでもしてあげよう。
葉瑠は結賀を起こさぬようベッドから抜け出し、キッチンへ向かう。
いま着ているのは結賀の替えの寝間着、サイズが合っていないので手も足もすっぽり隠れている。が、ウエストはぴったりだった。
(……)
釈然としない気持ちを抱きつつ、葉瑠は手始めに床に落ちている服を拾うことにした。
「……ふう」
……3時間もすると部屋は完璧に綺麗になっていた。
床はピカピカに磨かれ、流し台は新築同様に綺麗に、食器も整然と並べられ、テーブルの上には朝食……と言うか昼食が置かれていた。
昼食のピラフの匂いに釣られてか、寝室から結賀が現れた。
「おはよ……」
寝ぼけ眼の結賀に、葉瑠はきつく告げる。
「結局昼まで寝てたね……というかだらしなさに拍車がかかってるよ、結賀」
「いいじゃん、休みだし」
結賀はテーブルにつくと、特に何も言わずにスプーンを手に持ち、ピラフを食べ始める。
食べ始めた結賀を見て、葉瑠はエプロンを外す。
そして、バックパックから携帯端末を取り出し、玄関へ向かう。
「結賀、ちょっと外に出てくるね」
「訓練か?」
「ゲルハルトさんに連絡。もう治安維持部隊には帰らないって伝えるつもり」
別に室内で話しても問題ないが、長電話になるのは間違いないし、あまり結賀に会話の内容は聞かれたくない。
「そうか……」
結賀は一瞬スプーンの動きを止める……が、止めていたのも数秒ほどのことで、すぐにピラフを食べる作業に戻る。
「オレは一日部屋でダラダラしてるから、帰りとか気にしなくていいからな」
「うん」
葉瑠は応え、部屋の外に出ることにした。
「……そうか。もう戻らないんだな」
「はい、夢が見つかったので」
職員の住居エリア内に設置された公園
葉瑠は海が見えるその公園の粗野なベンチに腰掛け、ゲルハルトと通話していた。
電話の向こうのゲルハルトは葉瑠が辞めることに反対していなかった。
「そりゃあいいことだ。未払い分の報酬はいつもの口座に振り込むように伝えておく。あまり無理はするなよ」
「ゲルハルトさんこそ、無理して怪我なんてしないで下さいね」
「心配どうも。それじゃ、半年間ご苦労様だったな」
「はい、こちらこそお世話になりました」
葉瑠は携帯端末を耳元から離し、通話終了ボタンを押す。
同時にため息を付き、視線を海に向けた。
海は真昼の太陽光を反射し、キラキラと輝いていた。
その輝きの中を船が行き交っている。あれは連絡船だろうか、蒼の上に浮かぶ真っ白の船はなかなか幻想的だった。
船をぼんやり見ていると、背後から足音が聞こえてきた。
葉瑠は素早く反応し、視線を海から背後へ向ける。
背後には見慣れた人の姿があった。
「リヴィオくん?」
「よう……」
リヴィオも今日はオフらしい。教官服ではなくプリントシャツにジーンズというラフな出で立ちだった。
リヴィオはベンチの正面に立ち、歯切れ悪く葉瑠に問いかける。
「葉瑠、話したいことがあるんだが……時間空いてるか?」
「うん。……座る?」
「おう……」
言われるがまま、リヴィオは葉瑠の隣に座る。
すぐに話しかけてくるかと思いきや、リヴィオは頬を掻いたり地面を見たりと落ち着きが無い。
十数秒後、仕方なく葉瑠は問いかけることにした。
「話って?」
葉瑠に問われ、リヴィオは視線を前に向けたまま応じる。
「あの時の答え、まだ聞いてないんだが……」
「……あの時?」
あの時とはどの時のことだろうか。
不思議そうな顔をしている葉瑠に対し、リヴィオは思い切って答えを告げた。
「告白しただろ、半年前、ラボで……」
「……!!」
思い出した。
あの時は稲住愛里がテレビをジャックしたせいで話自体が有耶無耶になったのだ。
その後も色々と忙しかったこともあり、すっかり頭の中から消え去っていた。
葉瑠は正直に謝ることにした。
「ごめん、今の今まで忘れてた……」
「お前なあ……」
リヴィオは呆れの色が濃く混じったため息を吐く。
そんなため息の後、リヴィオは気を取り直して真面目に告げる。
「俺は今でも相変わらずお前のことが好きだ。……だから、付き合ってくれないか?」
「……」
葉瑠はリヴィオを見る。リヴィオも葉瑠を見ていた。
リヴィオの顔は赤く染まっており、緊張と恥ずかしさが痛いほど伝わってきた。
対する葉瑠は特に変化はなかった。ただリヴィオを見て、告白を聞いていた。
その空気が耐えられなかったのか、リヴィオは苦し紛れに言葉を続ける。
「川上教官がいなくなって、こんなことを言うのは卑怯かもしれない。でも、俺はお前のことが……」
宏人の名が出、葉瑠はリヴィオの言葉を制する。
「宏人さんのことは関係ないよ。宏人さんとはそういう関係じゃなかったから……」
「そう、だったのか……」
結局宏人さんは私のことを妹以上の存在として見てくれなかった。妹でも十分嬉しかったのは事実だが、それ以上を望んでいたのも事実だ。
が、彼が去った今、このことを考えるのは不毛だ。
葉瑠は逆に問いかける。
「それはそうと、リヴィオくんはさ、どうして私のことなんか好きになったの?」
自分で言うのも何だが、私はメガネで華奢で女らしいところなんて皆無な人間だ。
どうしてそんな私を好きになってくれたのか、純粋な疑問から出た問いかけだった。
リヴィオはまたしても視線を海に向け、語り始める。
「覚えてないかもしれないけど、俺と葉瑠、実は小さいころに会ってるんだ。その時に話しかけられて一目惚れっつーか……いや、違うか」
リヴィオは頭を掻き、少し前かがみになって指を組む。
「俺は、お前の強さに惹かれてるんだと思う」
「強さ?」
「ああ。一生懸命なところ、諦めないところ。……人としてお前は強い。そんなお前に俺は惹かれてるんだ」
「そうなんだ……」
予想外の言葉だった。が、理由はよく分かった。そして、リヴィオくんの気持ちの強さもよく理解できた。
リヴィオは再度葉瑠に顔を向ける。
「逆に聞いていいか。……葉瑠は俺のこと、どう思ってるんだ?」
リヴィオくんは私の質問に対し本音を語ってくれた。
ならば、私も本当の気持を伝えるべきだ。
葉瑠は考えることもなく、思ったことを素直に述べる。
「リヴィオくんといると……安心できる、かな」
葉瑠は指遊びを始める。
「リヴィオくんは優しい人だと思う。海上都市に来た時、緊張してた私に話しかけてきてくれたし、訓練の時もいつも気を遣ってくれてた。リヴィオくんの事は嫌いじゃない……いや、どっちかというと好き……なんだとおもう」
改めてよく見ると、いや、よく見なくてもリヴィオくんはかっこいい。
外見も申し分ないし、何より私のことを好きだと言ってくれている。好意を抱いてくれている。私も彼のことが好きだ。
……告白を断る理由がない。
なら、快諾するのが道理だろう。
葉瑠は至極理論的な考えで以って、リヴィオに返事する。
「正直具体的なことはよく分からない。でも、リヴィオくんとなら付き合ってもいいと思う」
「つまりそれは……OKってことか?」
恐る恐るのリヴィオの言葉に、葉瑠は力強く頷く。
「……うん。これからよろしくね」
葉瑠は握手を求めるべくリヴィオに手を差し出す。
しかし、リヴィオは葉瑠に目もくれず、背もたれに体重を預けて体を弛緩させた。
「はぁ……」
体から力が抜けきっている。
葉瑠は握手のために伸ばした手をそのまま肩に持って行き、リヴィオの体を軽く揺する。
「どうしたのリヴィオくん」
リヴィオは力なく笑う。
「すげー緊張した。こんなにあっさりOK貰えるとは思ってなかったわ……」
緊張から開放されてこうなったようだ。
……もしこの告白が昨日だったら、話を聞くまでもなく一蹴してたと思う。
でも結賀が大事なことを教えてくれた。私の心に平穏をもたらしてくれた。
だからこそ、リヴィオくんと真剣に話し合えたし、交際してもいいかなと思えたのだと思う。
結賀には重ねてお礼を言っておいたほうがいいかもしれない。
海を眺めつつ、葉瑠はそんなことを考えていた。




