表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第5章 店長、地上にお出かけする

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

132/145

第132話 蛙の胃の中


(三人称視点)


「う゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛こ゛わ゛か゛っ゛た゛よ゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛」


 いつもの堂々とした態度もかなぐり捨てて、イヴは鼻水を垂らしながらホムラの胸元で泣きじゃくっていた。

 内心で困惑しながらも、赤子をあやすようにホムラは粘液まみれのイヴの頭を撫でていた。


「えぇと、よーしよし? この場所は多分安全ですからねー?」

「……どこが安全なのじゃ。あのデブガエルの胃袋の中じゃぞ? 安心できる要素が微塵もないのじゃ」


 そしてホムラの傍に立ちすくんでいるのは、魔王種のアルであった。

 身体の至る箇所がボロボロだが、自力で立って歩ける程度には回復しているようだった。


「でもアルちゃん。私たちこの場所を結構歩き回りましたが、特に危険な要素はありませんでしたよ? 敵対生物がいるわけでもないし、消化液が湧いてくるような事もありませんし」

「でも出口が見つかってないのじゃ。ここから一生出られないのであれば、この空間はもはや安全とは言えないのじゃ」

「それは、そうですけど……」


 三人がいる空間には、深層と同じく荒野のような地形が広がっていた。

 唯一深層と違う点といえば、上空である。

 まるで夜空の星々のように、色とりどりに光る光点が無数に(またた)いているのだ。


「……ぐずっ。やっぱりここは、あのカエルの体内世界のようだね」

「イヴさん、もう大丈夫ですか?」

「ああ、ありがとう……まさかこの私が、ただの魔王種に敗北するとは。恐らく我々は、あのカエルの()としてこの世界に囚われたのだろうね」


 ようやく平静を取り戻したイヴであったが、なぜか頭部をホムラの豊満な胸部に埋めたままであった。


「やっぱり、イヴさんもあのカエルと戦ったんですね……」

「あれは【暴食】のバエル。その名の通り、何でもかんでも食べてしまう大食いじゃ! 奴が魔王種も外来種(ユニークモンスター)も軒並み食べてしもうたから、深層2階の実質的な支配者になっておる」

「とりあえず、情報を共有したほうがよさそうだ。君は魔王種だよね? どうしてホムラちゃんと行動を共に?」


 極上の枕に頭を預けながら、アルに問いかけるイヴ。

 それを怪訝な目で見ながらも、アルはここまでの経緯を話し出した。


「……最初にバエルに食われたのは、儂じゃ。連れ(・・)と深層を彷徨っていたら、あいつに出くわして襲われてしまったのじゃ」

「その後、私が探索中にあのカエルと遭遇して……襲いかかってきたので抵抗したんですが、力及ばず食べられてしまいました……」


 深層2階にしてまさかの敗北。流石のホムラも少し落ち込んでいるようだった。

 そしてアルが捕食されたのは、トオルの魔手から解放されて間もない頃だった。

 領地を失ったレヴィと共に、宛もなく彷徨っていたところをバベルに見つかってしまったのだ。


「……ボクは、トオルに頼まれてここに来たんだ。ホムラちゃんの様子を見てきてほしいってね。まあその結果がご覧の有様なんだけど」

「トオルさんが……? もしかして、地上じゃ結構な時間が経っちゃってますか?」

「キミが深層に潜ってから、もうすぐ一ヶ月って所かな。深層じゃ連絡の取りようがないし、仕方のない事だとは思うけど」

「そ、そんなに!?」


 イヴの言葉を聞いて、顔を青くするホムラ。

 ホムラの体感時間では、深層に入ってまだ二、三日という感覚だった。

 時間のズレ(・・)は潮の満ち引きのように変動するとは聞いていたが、想定以上のものであった。


「一刻も早くここを脱出しないと……! ここが胃袋のように食べたものを捕える空間なら、必ず出口があるはず!」

「しかし、もうあらかた探し回ったのじゃ。上空も見えない壁のようなものがあって、一定以上の高度には上がれないのじゃ」

「上空の見えない壁、か。破壊を試みた事は?」

「試しました。けどビクともしなくて……私が本調子でないというのもありますが」


 悔しそうに歯噛みするホムラは、まだバエルとの戦いの傷が癒えきっていない。

 アルも、イヴだってそうだ。この場の全員が、十全な状態とは言えない状況であった。


「……恐らくこの空間は一種の結界。バエルが蓄えた莫大な情報を、一つの異世界として構築したものだろうね」

「世界をまるごと作る結界、という事ですか!?」

「結界術を極めれば、そう難しいことじゃない。あのトオルにだってできるだろうさ」


 トオルが普段から使う亜空間食材庫も、結界によって作り上げた一種の異世界……異空間である。

 最も彼の場合、【召喚術】のスキルも組み合わせた特別性だが。


「いずれにせよ、もし此処が異世界だというのなら、通常の方法では脱出は不可能かもしれないね……ボクが万全の状態なら、話は違ったのだろうけど」

「……?」


 イヴの言葉に、どこか含むものがある事に気づいたホムラ。

 やがてイヴはホムラの胸の中で、気まずそうに顔を逸らした。


「どうやら、ボクの権能が捕食……奪われてしまったらしい。ダンジョンマスターとしての力が、さっきから全く働かないんだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ