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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第5章 店長、地上にお出かけする

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第128話 揺らぎ


「さっき人間をやめればって言ったけど、文字通りの意味じゃない。厳密には、人間には通常認識できない感覚を、知覚できるようにしてもらうって意味だ」


 人間に備えられた感覚は視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚の五つ。

 どの世界線でも大抵これは一緒だが、訓練によりそこにもう一つ追加することができる。


時空の揺らぎ(・・・・・・)。世界によっては第六感とか呼ばれたりするけど、これを知覚できるようになることが、とりあえずの目標だ」

「はい! 質問です、時空の揺らぎ? とはなんでしょうか!」


 手を挙げて元気に質問してきたのは、ヒーラーのヒヨリさんだ。


「うん。この世界線じゃ馴染みがない概念だろうし、簡単に説明しよう。

――世界における時間や空間っていうのは、液体みたいなもんだと考えて欲しい。ちょっとした衝撃でそれは揺らいで、不安定になったりする。

例えば、誰かが時間や空間を操作したりだとか。例えば、スキルを発動(・・・・・・)する瞬間(・・・・)だとか」


 特に、ダンジョン内ではその特性が顕著に現れる。

 地上と違い、ダンジョンの時空間は酷く不安定だ。ちょっとした衝撃で揺らいで穴が空いたりするし、特異個体が誕生したりする。深層に至っては潮の満ち引きのように、時の流れ自体がまちまちだ。

 それらの事象が発生する時に生まれる揺らぎ(・・・)。これを感知できるようになれば、探索者として大きく成長できる。


「例を挙げればキリがないけど、ダンジョン内ではこうした揺らぎが頻繁に現れる。それを感知することができれば、事前に危険を察知することもできるし、敵の攻撃タイミングを予期することもできる」


 試しに、五人の前で人差し指を立ててみる。

 指先の空間をわずかに歪ませ、わざと揺らぎを作る。


「これ。今俺の指先に、その揺らぎがあります。見える人いますか?」




「うーん……?」

「ふむ、なるほど」

「……」

「いや全然見えないです」

「私も見えないですね……」


 やっぱり、大半の人が見えなかったようだ。

 マカリさんだけは、ちょっと見えてそうな雰囲気だけど。同じ【召喚術】のスキル持ちだし気づくのも早かったか。




「まあ今は見えなくてもいいよ。ただ元々人間には、これを知覚できるようになる素質が備わっている。魔力に触れ、適応し、スキルと肉体を進化させていけば、自ずとこの第六感は身につくようになる」


 多分この世界線の人間は、時間や空間の揺らぎとかに接する機会が少なかったから、この感覚を開花させた人が少ないんだろうなぁ。おのれもう一人の俺め。




「じゃ、じゃあ俺からも質問いいですか?」

「はいユダさん、どうぞ」

「その、第六感……? っていう、新しい感覚を身につけるって目的はわかりました。

ただ、それとこの修行の内容には、どういった関連性があるんです……?」




 ユダさんが指差す先には、轟々と流れ落ちる巨大な滝があった。

 中層にいくつかある滝の一つ。水棲の魔物がウヨウヨいる危険スポットだ。


「うん。この時空の揺らぎを身につける一番手っ取り早い方法は、臨死体験(・・・・)をしてもらうことだ。

生死の分かれ目、極限状態、歪む時間感覚と周囲の揺らぎ(・・・)。これらの要素をまとめて抑えつつ、戦闘訓練も兼ねられるからすごく効率がいいんだよ」


「いや、あのでも、イカダで滝下り(・・・・・・・)ってのはちょっとおかしくないですか???

なんか訓練とか通り越していきなり死地じゃないですかねこれ!?」

「大丈夫だよ。俺特製の壊れないイカダを用意したから」

「イカダじゃなくて俺らが死ぬ!! 三秒で藻屑になって死ぬ!!!」


 んー? 割といけると思うんだけどなー?

 この五人、素質はあるしちゃんと連携すれば、多分滝下りくらい余裕だと思うよ?



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