十七話
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二日後。副班長を始めとした、回収班のメンバー全員が所内会議の椅子に座っていた。
職務以外での班長の負傷、そして、独立作業の要を失った回収班の今後を決めるため、急遽開かれた議会の場であった。
回収班以外では、所長と副署長、『あちら側』と『こちら側』の橋渡しをしている送迎班の幹部二人、事務班の幹部二人、そして、案内班の幹部二人が出席していた。
回収班全員が、案内班の副班長席に視線を向けている。しかしその席に座る男は特に気にした様子もなく、寧ろ、緩む顔を必死に堪えようとしている様にも見える。
「回収班副班長、前へ」
一見若く見える所長が、マツカゼを指した。マツカゼは少しふらつきながら立ち上がると、長机に手を付き、憔悴しきったような顔を上げた。
「はい、所長」
「……随分、疲れているようだな」
「先達ての争いで受けた傷が、未だ癒えず仕舞で……しかし、ご心配には及びませぬ故」
聞きなれない言い回しで話す上司に、班員達は不思議そうな目で彼女を見る。
反対に、傷が癒えていない、という言葉が出た時、案内班の副班長が少しだけ動揺したような表情を浮かべた。
「……昨日の休暇で、おおよそは話し合えたのか?」
「はい、全て決まっておりますれば」
「そうか、わかった」
所長、そして、隣に座る副署長が手元の用紙を互いに指差して頷いた。
「では、本題に移る。これは回収班全員に向けての質問なのだが、班長を負傷させた相手が、人造奇形種だったというのは本当か?」
誰もが息を飲み、室内がざわめく。しかし、回収班の班員達は表情に変化を見せない。
マツカゼが、ゆっくりと頷いた。
「……その通りでございます。牛の頭に人の身体、蹄の足はまさに、見紛う事なく案内班の作り出した人造奇形種で……」
「ちょっと宜しいでっか、所長」
マツカゼの言葉を遮り、挙手したのは案内班の班長だった。回収班の敵である副班長セキモトの上司であり、歴代最高の手腕と謳われる班長のヤナハラは、所長から発言の許可をもらうと席を立って口を開いた。
「人造奇形種は百年近うも前に五十体全部回収し終えて、確実に破棄しとります。企画発案者も当時の班長も、キチンと見合うた罰を受けて収束した話やないですか」
「だが、現にこうして回収班班長は倒れ、班全員が目撃者となっているぞ」
「せやかて、それがウチの班が拵えた当時のモン言う証拠にはならんでしょう。第一、ここ数十年で入った回収班の子等が、人造奇形種の存在をなんで知っとる言うんでっか?」
「私めとヨシナガが教えたものでございます、ヤナハラ班長。カズちゃん、アレを」
マツカゼに呼ばれ、カズヒサは予め用意していた風呂敷を長机の上へどっかりと乗せた。結び目を解こうとした時、一度マツカゼに制止される。
「……『こういう物』を見慣れぬ殿方は、お目隠しをお頼み申し上げます」
合図があり、カズヒサが風呂敷を広げた。
一瞬のどよめきと、微かな悲鳴が上がる。風呂敷に包まれていたのは二体目に倒した牛の頭であり、証拠として、カズヒサの発案で持ち込んだ物だった。
その頭に近付いたマツカゼは、あろう事か牛の右目に指を入れ、眼球を抉り出して神経を引き千切る。すでに、数名が臭気と見目に嗚咽を耐えている中、マツカゼはその眼球を案内班の席に向かって投げ飛ばすと、悲鳴を上げたセキモトとは違ってヤナハラは何の動揺も見せず片手で受け取った。
ヤナハラが、その眼球の白い部分に視線を落とす。赤い血管が這うように、そこにははっきりと『実験の証拠』が浮き出ていた。
製造の過程で、必ず刻まれ残る『痕』。それは眼球から神経を通して脳へ送られる、『仮の魂』を注入した痕跡だった。
間違いなく当時の案内班が使用していた道具の跡に、ヤナハラは舌打ちする。
「……ご満足いただけましたのなら、ご返事を」
「……フン」
乱暴に投げ返された眼球を、マツカゼは受け取ると同時に強く握り潰す。赤とゼリー状の何かで汚れた手もそのままに、牛の頭を叩きながら核心に迫る発言を放つ。
「私が申し上げたき事柄は、この怪物がこの送還所で製造され、『ここ』から放たれたという事。我等が所内に、裏切りとも取れる所業を働く者がおりまする」
突拍子も無い……誰かがそう言い出しそうな内容だが、何故か、皆が沈黙する。回収班の視線の先は明らかに一人の男を指していたが、マツカゼもそれ以上は何も言わず、この場にいる誰もが所長の反応を待った。
送還所の長である所長は一つ溜め息を吐き、その右手で顔を拭う。
「……言いたい事はわかった。しかし、今決めるべきは回収班の今後をどうするかだ」
「その点については、事前に話しておりますれば。ただ、私は見ての通りの有様……先に申請させて戴いた通り、身体が癒えるまで暫くの暇を頂戴いたします。しかし回収班と致しましては、今後の活動内容は一切、ヨシナガの復帰まで変更は致しませぬ」
「所長、発言の許可を」
手を挙げたのは、セキモトだった。
しかし、途端に回収班の纏う空気が凍て付き、辺りを冷やし始める。その『感情』は、送還所の禁忌を唯一許された集団であるが故のものだ。
所長だけが感じ取れる程の、彼等の僅かな殺気に気付く筈もなく、許可を受けたセキモトは堂々と椅子から腰を上げる。
「現在、回収班班長のヨシナガ殿は回復の目処が経たない程の重症を患い、副班長のマツカゼ殿も体調が優れないご様子……元々少人数の小さな班です故、これを機に回収班は案内班と合同で行動すべきかと思いますが」
「いいえ!」
間髪入れず、マツカゼが声を張った。
「所長、まだ私共は独立に向けての試験期間中の筈。今こそ我が班長の意志を継ぎ、彼が戻って来るまでに基礎を築いておく……それこそが、私共が唯一、彼のために出来る事でございます」
「マツカゼ殿、ただでさえ人員不足の班なのですぞ。班長は意識不明、貴女も療養のため班を抜ける……たった四人で、一体何が出来ると」
「煩いっ!」
声を荒げたマツカゼに、その場にいた全員が目を見張る。怒鳴られたセキモトは未だ何か言おうとしたが、怒りの込められた彼女の目に言葉を飲み込んだ。
息を切らしながらも、絞り出すようにマツカゼは敵に指を差す。
「これは、回収班の問題なの。関係無いのなら……ウチの方針に、口出ししないで」
「彼女の言う通りだ、ヨシナガ副班長」
その時、マツカゼの背を押す形で事務班班長のイシカワが口を開く。
「回収班は存続するかしないかで、班員の命運すらも掛かっている。一見不可能に見えても、続けるかどうかは我々ではなく彼等が決める事だ」
イシカワの意見に所長が頷き、他班の者までその意見に賛同を始めてしまってはさすがに引き下がる他は無い。セキモトは渋々席に戻り、「有り難き幸せ」と皆に頭を下げたマツカゼは、右隣の二人を指名し起立させた。
「所長、ヨシナガ班長と私めが不在の間、この二人に班を任せる事に致しました。班長代理のアキチカ君と、副班長代理のカズヒサ君でございます」
名を述べられると同時に、二人は深く頭を下げる。
「彼等二人は回収班での経験も長く、必ずや頼りになる存在となりましょう。どうか、彼等の任命をご許可願いたく申し上げまする」
「許可する。特に、班長代理殿」
「……はい」
アキチカはゆっくりと顔を上げた。
「くれぐれも無茶せぬよう、『己に出来る事』とは何かを見定め、行動するように」
「……お言葉、有難うございます」
「副班長代理殿は常に皆を気遣い、時には皆の歯止めであるように」
「はい。よろしくお願い致します」
これにて、解散。
所長の一声で、皆が一斉に席を立つ。持ってきた牛の首は所長が案内班に処分を命じようとしたが、「何かに使えるかも知れない」と言ったトシユキの一言で、回収班が持ち帰る事になった。
「ありがとう、イシカワちゃん……本当に助かったわ」
会議室を出て皆が己の部署に戻る最中、イシカワを呼び止めたマツカゼは笑みを浮かべて礼を述べた。彼女を護衛するかのように後ろを囲む班員達も、マツカゼに続いてそれぞれに頭を下げていく。
そんな彼等に、イシカワは謙遜しつつも回収班班長の身を案じて容態を問う。
「しかし、ヨシナガ君は何処で処置を受けているんだ? 奇形種の光は、呪いで身体を変異させてしまう。除去装置は廃棄されているだろうが、一度、医務室に収容した方が……」
「大丈夫。彼には今、心強い味方が付いてるから」
「味方、とは?」
ふと輝翔についてを問われ、思わずマツカゼはカズヒサと顔を見合わせる。
「あ、と……申し訳ありません、イシカワ班長。所長の指示で、回収対象以外の情報は他班に口外してはならないんです」
「そうか……それは失敬した。だが、信頼に足る相手なんだな?」
「本当は無回答が義務なんですが……」
「……信頼出来なきゃ、任せられないわね」
力無く、しかし、いつもと変わらぬ無邪気な笑顔を見せた彼女に、イシカワも満足気に頷いて応えた。
「でも本当に大変な時には、イシカワちゃんにも助けを頼むかもだけど……」
「勿論だ、いつでも声を掛けてくれ。力になれる事があればすぐに手を貸そう」
「本当にありがとう。ヨシナガの分も……彼に代わって、お礼を言うわ」
イシカワとの会話を終え、五人はさして雑談も無く静かに廊下を歩いていく。その時、皆が今一番会いたくない男が後ろから声を掛けてきた。
班員達を無視し、青い顔をしたマツカゼだけに視線を向ける態度は全員の神経を更に逆撫でする。
「マツカゼ殿、一つ伺いたい事があるんだが……」
「おいコラ、姐さんに話やったら代理通せや」
並行して歩み寄り、マツカゼに近付こうとしたセキモトの前に、トシユキが立ち塞がった。勿論、セキモトはトシユキにあからさまな憎まれ口を叩く。
「退いてくれないか、作るだけの回収班製造係君。私は彼女に用があるんだ」
「んなけん代理通せっちゅうとんじゃドクソが。そもそも、おまぁがテンゴしぃまーるけんゴジャんなっとんのに、よぉきったないツラ下げて姐さんの前へ出てこれたモンよのコラ」
「口の利き方には気を付けたまえよ。君達は私を疑っているようだが、証拠なんて物は存在しないんだ。第一、君の田舎言葉は私には理解出来かねる。ちゃんとした言葉を話したまえ」
この一言に、トシユキはセキモトの胸ぐらを掴み上げる。
「おまぁに何が……!」
「トシユキさん、駄目です」
「カズ坊、んなけど……っ」
皆が立ち止まる。首を横に振るカズヒサに、トシユキは舌打ちと共に手を離した。
乱れた襟を整えたセキモトは列の前に赴き、白々しくも真剣に心配そうな表情を浮かべてマツカゼに近寄る。
相手が一歩踏み込むと同時に、マツカゼは逃げるように一歩後ろへと退く。
「……疲れてるのよ。部屋に戻らせて」
「申し訳ない、わかってる。ただ、怪我をされたと仰られていたので心配で……」
「大丈夫だって言ったでしょ」
「神格化された貴女なら、案内班の療養用ポッドですぐにでも回復出来るかも知れない。貴女が必要とされるならば、私がいつでも……」
「しつこいって言葉知ってますかね、案内班の副班長さん?」
途端、右手でセキモトの首を鷲掴みにしたアキチカが壁に押し迫って高く持ち上げた。
一瞬皆に戦慄が走るが、足をバタつかせ、元気に睨み返してくるセキモトの様子から班員達は肩の力を抜く。ただ、ナツメだけが心配そうに彼の名を小さく呼んだ。
「アキさん……」
「アキチカさん、止しましょう。時間の無駄ですよ」
「勿論わかってるさ。先行っててくれ」
「わかりました。一応、止めましたからね」
『取り敢えず』で、己の役目である制止の声を掛けておく。しかしアキチカは止める気など無いようで、カズヒサもそれ以上は何も言わずに皆に「戻りましょう」と促した。
アキチカとセキモト、そして、「念のために」とカズヒサに留まるよう指示を受け、角を曲がった所で立ち止まったナツメだけがその場に残る。皆の姿が見えなくなったのを確認して、アキチカは持ち上げた首を開放した。
咳き込み、苦しげに呼吸を繰り返したセキモトは、アキチカを睨み上げながら静かに言う。
「これは失礼、副班長さん。手荒な真似をしました」
「……これは、『仲間討ち』だぞ……いいのか? 仲間討ちは重罪だ」
「ははっ、何を今更」
アキチカは嘲るように笑った。
「どのみち俺は回収班が無くなれば即処分される身、今更どうなろうと悔いはありませんよ。ただ、そちらにはウチへの嫌がらせを止めて頂きたいだけなんです。班長も既にあの通り、あんたもいい加減満足したっしょ」
「満足、だと……? 君達の班長には言ったが、私は回収班を潰すためなら何だってするぞ。こんな事で終わらせるものか……あの男には、何一つ残さないからな」
「……案内班の副班長さん。言っときますが、俺だって班や仲間を護るためなら、何だってする人間なんですよ?」
次の瞬間、アキチカはセキモトを壁際へ追い詰め、その耳を掠る寸前の近さで白い壁に掌を打ち付けた。
その一撃は壁を押し込み、放射状にヒビを入れる。強烈な衝撃を直に感じたセキモトは、身体を強張らせたまま動けなくなった。
「よく聞け、セキモト副班長。俺はウチの班長の様に、駆け引きが出来る頭の良い人間じゃない。俺の仕事は、あくまでも『自分に出来る事』を探して達成させるだけ……だからもし、その存在が班の邪魔になると判断した時は」
彼が押し込んだ壁に爪を立てて握り込むと、壁が抉れて削り取られる。硬い材質の破片が、音を立てながら崩れて床とセキモトの肩に積もった。
「俺は何の迷いもなく、お前を殺せるぞ」
サングラスの奥に見えるその闇のような瞳に、殺意は感じられない。なのに何故か、冷たい汗がセキモトの背に流れた。
彼は殺意を抱かない。故に、彼は専用の『回収道具』を持たない。彼自身も制御出来ない強い『何か』は皮膚を焼くように冷たく、まるで息を吸い、吐くかのような自然さで己を消し去ってしまいそうな恐怖にセキモトは息を呑む。
「……化け物め……っ」
アキチカは拳を壁から離し、両手を叩いて砂埃を払った。
「あんたが、あの怪物を『外』へ放ったという証拠は今のところ何一つ無い。だから、あんたが犯人じゃないと判ったら土下座して謝りますよ」
「なら、今すぐ頭を下げろ! とんでもない侮辱の数々、私は絶対に……っ」
「だったら、今すぐ俺達の前に犯人を連れ出して来ればいい。俺達が納得する、確実な証拠を全て引っ提げて」
「貴様……っ」
「心当たりがある奴が居るなら、そいつに言っておいてください。次は無い、とね」
サングラスを掛け直し、アキチカはセキモトに背を向ける。背後から聞こえた「破滅させてやる」の言葉に、アキチカは小さく鼻で笑った。
しかし、廊下を進み、角を曲がった所でアキチカは驚いて肩を飛び上がらせる。そこには、何も言わずに立ち尽くしているナツメの姿があった。
「おいおい、先行けって言っただろ?」
俯くその顔を覗き込んで、アキチカは困った様に眉を下げる。溢れる涙を拭う事もなく、唇を噛み締めるナツメは嗚咽を漏らさぬよう俯いて耐えている。そんな彼女の頭にアキチカがそっと手を置くと、柔らかい金髪をくしゃくしゃと撫で、苦笑しながらその小さな背を押して二人は廊下を歩き始めた。
「だから泣くなってば。お前って、そんな泣き虫だったっけ?」
「……だって、全部オレのせいじゃないっスか。班長も居ないし、そのせいで副班長も……」
不安に揺れるナツメの目が、アキチカを真っ直ぐに見上げる。
「オレ……処分、されちゃうんスか?」
「……ナツ」
立ち止まったナツメの横で、アキチカの顔から笑みが消える。
「……それは、まぁ俺は強制だけど……ナツはまだ、そうなると決まったワケじゃ……」
「オレが入所したての頃、マツさんが言ってたっス。班長やアキさんは、すでに覚悟が違うんだ、って。『殺し合う事』を知っている人間は、覚悟があるから戦えるんだって」
少し悲しげにも見える目でナツメの肩に手を置くが、彼女の感情は止まる事なく頬を伝い溢れ出ていく。
「わかってるんス。オレみたいな人殺しが……自分が消える事を怖がるなんて、お門違いもいいトコだって……でも、やっぱりオレは」
アキチカの脳裏に、初めて出逢った頃のナツメの姿が浮かぶ。
あの時も、彼女はずっと泣いていた。失った者の大きさ、奪った者の重さ、己の罪の深さに呑まれそうになって。
共に育った仲間に裏切られ、養母を死なせ、憎しみのままにかつての義兄弟達を手に掛けて回った。彼女の魂が如何にして『零』になったのかアキチカは書面上でしか把握していないし、彼女の心情を考えたとて計り知れるものではない。
だが、そこには必ず、語られぬ凄惨な悲劇が秘められている。
「でもオレ、今がすごく幸せで……ここでの仕事も、皆の事も大好きなんス。なのに……全部オレのせいで……っ」
「ナツ」
アキチカはナツメの肩を掴んだ。
「ナツ、自分を責めるな。誰もお前のせいだなんて思ってない」
本来なら、彼女はまだ二十歳にも満たない少女だ。生と死の狭間にある世界で働かされている事も、彼女に突き付けられている厳しい宿命も、全ては突如として彼女を取り巻いた、不運と狂気のせいであるのに。
死しても尚、何故こうして恐怖に身を震わせねばならないのか。
「オレが、消えたら……皆の中からも、消えちゃうんスかね?」
「……どうだろうな。前例も無いし」
二人は、再び歩き出す。
「……アキさんは、オレの事覚えててくれるっスか?」
「何言ってんだよ。それを言うのは、むしろ俺の方だろ?」
アキチカはナツメの頭を撫で回した。金髪が乱れ、ふわふわと逆立つ。
「心配しなくても、お前は俺が護ってやるよ。みんなも、俺達の班もな」
「じ、自分の身は自分で守れるっス」
「何だよ、つれない奴だな」
「オレが、アキさんや皆の事守ってみせるっスよ。オレに出来る事は、そんな事ぐらいしかないっスもん」
「……いやぁ、すっかり頼もしくなっちゃって。俺も頑張らなきゃなぁ」
涙を拭いながらも、やっと笑顔を見せた可愛い後輩にアキチカも笑ってみせる。和気藹々と談笑しながら自分達の班へと戻っていく二人の後ろ姿を、静かにじっと見つめている男の影が廊下の奥に消えた。
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