第九話「巣立ちの朝」
秋が深くなった。
山の色が変わった。
緑が橙になった。橙が赤になった。赤が茶になった。
葉が落ち始めた。
三羽は、毎日遠くへ飛ぶようになった。
朝に飛び立ち、夕方に戻った。
戻らない日もあった。
一晩、別の場所にいて、翌朝戻ってくることがあった。
ある朝、三羽が揃って巣にいた。
珍しかった。
最近は、揃うことが少なかった。
三羽は、落ち着かなかった。
翼を動かした。
山の向こうを見た。
体が、どこかへ向かおうとしていた。
もう一羽は、三羽を見ていた。
降りてきた鳥も、三羽を見ていた。
三羽は、二羽を見た。
一羽目が飛んだ。
山の上へ飛んだ。
そのまま、山の向こうへ消えた。
二羽目が飛んだ。
一羽目と同じ方向へ。
消えた。
三羽目が、巣の縁に立った。
振り返った。
もう一羽を見た。
降りてきた鳥を見た。
それだけだった。
それから、飛んだ。
同じ方向へ。
消えた。
静かになった。
巣に、二羽だけになった。
もう一羽は、巣の縁に立っていた。
三羽が消えた方向を、見ていた。
降りてきた鳥も、その方向を見ていた。
空に、三羽が見えた。
小さくなっていた。
小さくなりながら、並んで飛んでいた。
それから、見えなくなった。
もう一羽が、巣の中に入った。
丸くなった。
降りてきた鳥も、入った。
並んで、座った。
巣は広くなっていた。
三羽がいた頃より、広く感じた。
川の音がした。
山が静かだった。
秋の風が吹いた。
落ち葉が舞った。
二羽は、並んで、空を見ていた。
三羽が消えた方向の空を。
それだけだった。
それだけのことだった。
しかし、それで十分だった。
(第九話 了)




