第十話「二羽だけの山」
冬が来た。
雪が降った。
巣に、雪が積もった。
二羽は、体を寄せ合っていた。
羽を膨らませて、温かさを保っていた。
山が白くなった。
川が細くなった。
虫がいなくなった。
木の実が少なくなった。
降りてきた鳥は、毎日遠くまで食べ物を探しに行った。
以前より遠くまで行った。
三羽がいた頃より、遠くまで行かなければならなかった。
しかし、帰る場所があった。
巣があった。
もう一羽がいた。
もう一羽は、巣にいることが多かった。
寒い日は、巣を離れなかった。
降りてきた鳥が戻ると、食べ物を分けた。
二羽で食べた。
ある夜、雪が止んだ。
月が出た。
山が、白く光った。
二羽は巣の縁に出た。
並んで、月明かりの山を見た。
白い山だった。
静かな山だった。
鷹がいた頃の山と、三羽がいた頃の山と、今の山は、同じ山だった。
しかし少し違った。
静かさの質が、少し違った。
悪くはなかった。
ただ、違った。
春が来る、と体が知っていた。
今はまだ雪の中にいるが、春が来る。
草が出る。虫が出る。木の実が実る。
そしてまた、どこかで卵が来るかもしれなかった。
来ないかもしれなかった。
どちらでもよかった。
もう一羽が、降りてきた鳥に体を寄せた。
降りてきた鳥も、もう一羽に体を寄せた。
月明かりの中で、二羽は並んでいた。
遠くで、鳥が鳴いた。
知らない鳥の声だった。
どこかへ向かっている声だった。
二羽は、その声を聞いた。
それから、また山を見た。
白い山を。
静かな山を。
春が来たら、また始まる。
枝を探す。巣を作る。嵐が来れば、また作り直す。
それだけのことだった。
しかし、それだけのことが、続いてきた。
続いていく。
降りてきた鳥が、もう一羽を見た。
もう一羽も、降りてきた鳥を見た。
月明かりの中で、目が合った。
黒く、丸い目が。
それだけだった。
言葉はなかった。
しかし、それで十分だった。
ずっと前から、それで十分だった。
山に、冬が続いていた。
二羽が、並んでいた。
春を、待っていた。
待ちながら、今夜も、並んでいた。
(第十話 了)
羽の唄――二羽の鳥の生きた証 完




