表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
羽の唄――二羽の鳥の生きた証  作者: Kentarou Tou / Kentarou Theater


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/10

第七話「飛び方を教える」


ひな鳥たちは、急いで育った。


最初の一週間で、羽毛が生えた。


二週間で、目が開いた。


三週間で、声が出た。


声は、大きかった。


朝から鳴いた。食べ物をくれ、と鳴いた。


降りてきた鳥は、山を飛び回った。


もう一羽も、交互に食べ物を運んだ。


三羽の口が、いつも開いていた。



ある朝、ひな鳥の一羽が、巣の縁に立った。


翼を動かした。


飛ぼうとした。


降りてきた鳥が、すぐ傍に来た。


ひな鳥の前で、翼を広げた。


こうするのだ、と見せた。


ひな鳥は見た。


また翼を動かした。


飛ばなかった。


しかし、動かした。



もう一羽は、地面で虫を探した。


わざと、ひな鳥たちに見えるように。


ここに食べ物がある、ということを見せた。


ひな鳥たちは、巣の縁から地面を見た。


遠かった。


しかし、見た。



飛んだのは、二番目のひな鳥だった。


ある午後、巣の縁から飛び出した。


落ちた。


地面に落ちる前に、翼が開いた。


ふわりと、落ちた。


地面の近くで、また翼を打った。


浮いた。


少しだけ、浮いた。


また落ちた。


地面に降りた。



降りてきた鳥が、すぐに地面に降りた。


ひな鳥の傍に来た。


怪我をしていないか確かめた。


していなかった。


ひな鳥は、地面に立っていた。


翼を広げて、また飛ぼうとしていた。



一羽目が飛んだのは、その翌日だった。


三羽目が飛んだのは、また翌日だった。


三羽とも、最初は落ちた。


三羽とも、また飛んだ。



老いた鷹が、低く飛んだ。


ひな鳥たちの上を、ゆっくりと旋回した。


こうやって飛ぶのだ、と見せているようだった。


ひな鳥たちは、鷹を見上げた。


その目が、空を見ていた。



夏の終わりに、三羽は山の上まで飛べるようになった。


最初はよろよろしていた翼が、安定してきた。


降りてきた鳥は、三羽と一緒に飛んだ。


並んで飛んだ。


山を越えた。


その向こうに、別の山があった。


川があった。


広い空があった。



もう一羽は、巣から三羽が飛び立つのを見ていた。


巣の縁に立って。


三羽が戻ってくるまで、そこにいた。


三羽が戻ると、また温めた。


まだ、温めていた。



ある夜、三羽が巣で眠っていた。


降りてきた鳥と、もう一羽が、巣の縁に並んで止まっていた。


三羽の呼吸を聞いていた。


「もうすぐだ」と降りてきた鳥は思った。


正確には思っていない。


しかし体が知っていた。


もうすぐ、この巣が空になる。



(第七話 了)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ