第三話「嵐の夜」
夜、嵐が来た。
最初は風だけだった。
杉の梢が激しく揺れた。葉が落ちた。小枝が折れた。
それから雨が来た。
横から打ちつける雨だった。
二羽は巣の中にいた。
体を低くして、羽を広げて、互いに寄り添っていた。
雨が巣に当たった。
巣が濡れた。
内側の枯れ草が湿った。苔が重くなった。
風が強くなった。
巣が揺れた。
大きく揺れた。
降りてきた鳥が、巣の縁をくちばしで押さえた。
もう一羽も、反対側を押さえた。
雨が降り続けた。
夜が続いた。
二羽は動かなかった。
飛び立てば安全な場所があったかもしれなかった。もっと大きな木の、もっと深い場所に、雨が当たらない穴があったかもしれなかった。
しかし二羽は巣を離れなかった。
まだ完成していない巣だったが、離れなかった。
夜中に、風が最も強くなった。
巣が、大きく傾いた。
内側に積んでいた枯れ草が、一部落ちた。
外側の枝が、二本、取れた。
それでも、巣は残った。
壊れなかった。
二羽は巣の中にいた。
夜明け前に、雨が止んだ。
風が静かになった。
山が、濡れて、静かになった。
二羽は巣の中で、顔を上げた。
空が明るくなりかけていた。
巣を見た。
外側が傷んでいた。枝が二本なかった。内側の草が薄くなっていた。
もう一羽が、巣の外に出た。
傷んだ場所を見た。
降りてきた鳥も、外に出た。
二羽で、巣の状態を確かめた。
朝になった。
二羽は、また枝を集め始めた。
前と同じように。
降りてきた鳥が枝を探した。もう一羽が巣を整えた。
抜けた二本の枝の代わりを探した。内側の草を足した。
昨日の嵐がなかったかのように、また作り始めた。
いや、そうではなかった。
嵐があったから、弱い部分が分かった。
今度はその部分を、少し厚めに作った。
老いた鷹が飛んできた。
いつもより低い場所を飛んだ。
巣のある杉の木の近くを、ゆっくりと旋回した。
一周して、また高いところへ戻った。
確かめに来たのかもしれなかった。
二羽が無事かどうかを。
昼には、巣がほぼ元通りになった。
嵐の前より、少し丈夫になった。
二羽は並んで、できあがった巣を見た。
また同じことをした。
降りてきた鳥が巣の中に入り、丸くなった。
ちょうどよかった。
もう一羽も入った。
並んで座った。
空が見えた。
昨日の嵐のあとの、澄んだ空が。
(第三話 了)




