不思議な夢の話
初投稿です。楽しんで頂けたら嬉しいです。
佐倉 真知子には、昔から見続けている不思議な夢がある。
それは、彼女が何処かの国の伯爵令嬢として過ごしている、女の子ならば誰でも憧れるような夢だ。
大きなお屋敷に、沢山の使用人。優しい両親に、可愛い双子の妹。
勿論、両親は真知子の両親と同じ顔だし、双子の妹も寸分違わず真知子の知る妹の絵美里である。身近な存在しか夢に出す事が出来ない、幼い頃の想像力なんてそんなものだ。
夢の中で真知子はマチルダと呼ばれていて、絵美里はエミリアと呼ばれている。現実の名前を少し捩っただけの――ここも幼い頃の想像力の限界というものだろう。
ともかく、夢の中のマチルダは伯爵令嬢とは言え、勉強や習い事よりも外で遊ぶ事が大好きなわんぱく少女だったようだ。これは恐らく、体を動かす事が好きな真知子の性格をそのまま反映しているのだろうと推測出来た。対して妹のエミリアは、屋敷の中で大人しく本を読んでいるような、まさに深窓の令嬢と呼ぶに相応しい少女だった。これもまた、同じ顔だというのに華奢で繊細そうな雰囲気を持つ妹の絵美里そのものを反映しているのだろう。
全くタイプの異なる双子であったが、現実の真知子と絵美里のように二人はとても仲良しだった。
マチルダが外の話をすれば、エミリアは本を読む手を止めてにこにこと笑いながら話を聞いたし、エミリアが一人で眠れないと部屋に訪れれば、マチルダは彼女が眠れるまで楽しい話を聞かせ続けた。
真知子も絵美里の事は大切だったし、何なら世界一可愛い妹だと豪語している。だからこそマチルダもそのように、妹が大好きなのだと思った。そして絵美里もまた、幼い頃から姉が話す夢の話が大好きで自分から聞かせて欲しいとねだる事が多かった。
そんな不思議な夢の話は、真知子と絵美里を夢中にさせ続けた。
然し、幼い頃よりずっと続いて来た夢は、二人が成人を迎える前に唐突に終わりを告げる。
夢の中で、マチルダが階段から落ちて死んでしまったからだ。
それも、大好きな妹の結婚式の当日に。
それ以来、真知子が夢を見る事は無くなってしまった。
真知子が話題にしないから、絵美里も自然と口を閉ざす。
不思議な物語は、マチルダの死という余りにも急すぎる終わりを迎えてしまったのだ。




