第71話 創造神への懇願と『覚悟』
魔王城の広間に、七星の面々と、リアーナ、そして――オリーブが、静かに、顔を揃えていた。
「――紹介する」
俺は、静かに、皆を見渡しながら、告げた。
「――彼女は、オリーブ。……天界で、保護した、女神だ」
「――え……!? 女神……!?」
ノノとメメが、驚いたように、目を見開いた。
「――事情は、追々、話す。……だが、彼女は、こちら側についてくれた。信頼できる、味方だ」
「――よろしくね」
オリーブが、静かに、柔らかく、微笑んだ。
デルポポが、静かに、眼鏡を押し上げながら、そのまま、状況を、受け止めていた。
「――……ディア様が、そう仰るなら」
「――信じましょう」
◇
「――さて」
俺は、静かに、表情を、引き締めた。
「――問題は、これからだ」
「――エルリックは、必ず、報復に来る」
俺は、静かに、皆に、告げた。
「――それも、今度は、万全の準備を、整えた上で、な」
「――前回は、奇襲と、モーチの奥義が、噛み合った結果、辛くも、退けられた」
俺は、静かに、拳を握った。
「――だが、あんな手は、二度と、通用しない」
「――モーチも、消耗しきって、今は、あの、小さな姿だ」
視線の先、幼い姿のモーチが、静かに、悔しげに、俯いていた。
「――すまぬな……。我の、不甲斐なさよ」
「――謝るな」
俺は、静かに、首を振った。
「――お前のおかげで、今、俺たちは、ここにいる」
「――問題は、次だ」
俺は、静かに、続けた。
「――向こうから、万全の状態で、攻めてくる。……こちらは、迎え撃つしかない」
「――勝てるの?」
ノノが、静かに、不安げに、問うた。
俺は、静かに、目を閉じた。
「――正直、厳しい」
その言葉に、その場が、静かに、緊張した。
「――オリーブ、エルリックの、本当の実力は」
「――圧倒的よ」
オリーブは、静かに、しかし、確かな重みを込めて、答えた。
「――彼が、その気になれば……。下界を、一人で、消し去ることすら、容易いわ」
その言葉に、皆が、静かに、息を呑んだ。
◇
「――このままでは、駄目だ」
俺は、静かに、思考を、巡らせた。
(――エルリックには、勝てない。……なら、どうする)
その時――オリーブが、静かに、口を開いた。
「――創造神、に」
「――創造神?」
「――ええ」
オリーブは、静かに、続けた。
「――助けを、求めるのは、どうかしら」
「――だが」
俺は、静かに、眉をひそめた。
「――創造神は、この世界を含む、複数の主神を、束ねる存在なんだろう」
「――下界の、たかが一魔王の頼みなど……。聞く必要が、あるのか?」
「――それは……。確かに、そうね」
オリーブも、静かに、頷いた。
「――どうしたら、庇護下に、入れるか……」
俺が、静かに、思案に暮れていると、オリーブが、静かに、微笑んだ。
「――簡単よ」
「――あの方に、聞くしかないわ」
「――聞くだけなら、タダだもの」
◇
――だが、その"交信"の手段が、問題だった。
「――神の祭壇からの、交信が、必要になる」
オリーブが、静かに、説明した。
「――だけど、この世界には、そんなもの、存在しないわ」
「――なら」
俺は、静かに、答えを、悟った。
「――また、天界へ、行くしかない」
◇
再び、天界へと、足を踏み入れた俺たちは、静かに、その、荘厳な祭壇の前に、立っていた。
「――創造神よ」
オリーブが、静かに、祈るように、両手を、組んだ。
「――どうか、私たちの、声を、聞いてほしい」
――静寂の中、やがて、静かに、荘厳な声が、辺りに、響き渡った。
『――久しいな、オリーブ』
『――して、その者たちは』
「――エルリックの、暴走を、止めたいと、願う者たちです」
オリーブが、静かに、続けた。
「――どうか、彼らに、力を貸してくださいませんか」
――重い、沈黙が、その場を、支配した。
『――代償は、何を、差し出せる』
創造神の声が、静かに、しかし、冷たく、響いた。
俺は、静かに、その問いに、身構えた。
『――そこの、男よ』
創造神の意識が、静かに、俺へと、向けられた。
『――お前の名――「ディア」と』
『――お前の持つ、「全能ノ神」』
『――この二つを、差し出せるならば、庇護を、与えよう』
――俺は、静かに、息を呑んだ。
(――名前も……。力も……。全て、失うということか)
その代償の重さに、俺は、静かに、言葉を失った。
「――……一日、猶予をいただけないでしょうか」
俺は、静かに、そう、答えるのが、精一杯だった。
『――良かろう』
創造神の声は、静かに、そう、告げた。
『――一日だけ、待とう』
◇
――魔王城へと、戻った俺は、静かに、その夜、深い、思案に、沈んでいた。
「――ディア」
リアーナが、静かに、俺の部屋を、訪れた。
「――辛い、決断、なのね」
「――ああ」
俺は、静かに、頷いた。
「――名前も……。全能ノ神も……。俺という存在の、根本に、関わるものだ」
「――でも」
オリーブもまた、静かに、その部屋を、訪れていた。
「――みんなを、守るためなら……。あなたは、迷わないでしょう」
俺は、静かに、二人の顔を、見つめた。
その夜――俺は、二人と、静かに、寄り添いながら、これから訪れる、大きな決断への、覚悟を、一つ一つ、固めていった。
言葉は、多くは、要らなかった。ただ、互いの、確かな温もりだけが、静かに、その夜を、包んでいた。
◇
――翌朝。
窓から差し込む、柔らかな朝日の中、俺は、静かに、目を覚ました。
隣には、リアーナと、オリーブの、穏やかな寝顔があった。
「――……行くか」
俺は、静かに、そう、呟いた。
その表情には、もう、迷いはなかった。
◇
再び、天界の祭壇の前に立った俺は、静かに、しかし、確かな声で、告げた。
「――創造神よ」
「――その、申し出……。受けさせて、いただきます」




