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【悲報】最弱インプ、勇者を事故死させてスキルを強奪してしまう~成り上がり魔王譚~  作者: 下総山中
好きな女を取り戻せ!

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第70話 2人の魂と『枯れぬ花』

魔王城へと帰還した俺は、まず、べべの元を訪れた。

「――べべ、少し、二人だけで、話がしたい」

「――ん? どうした、改まって」

俺は、静かに、周囲に誰もいないことを確認してから、口を開いた。

「――実は……。今、リアーナの姿をしているのは、リアーナ自身じゃない」

「――……なんだと」

べべの表情が、静かに、険しくなった。

俺は、静かに、これまでの経緯――オリーブという、女神の存在。リアーナが、彼女の依り代にされていたこと。そして、オリーブが、今、俺と共にいることを、包み隠さず、語った。

「――……そういうことか」

べべは、静かに、目を閉じた。

「――して、我に、何を、相談したい」

「――お前の、転魂の術のことだ」

俺は、静かに、切り出した。

「――魂と、器は、分離できる。……お前自身が、その、生きた証だろう」

「――ならば、リアーナの魂も、まだ、どこかに、残っているんじゃないか」

べべは、静かに、暫し、考え込んだ。

「――理屈としては……。あり得ぬ話ではない」

「――我が経験した、転魂の術は、あくまで、魂を、丸ごと、別の器へ移すもの。……だが、今回のように、一つの器に、二つの魂が、重なっている状態から、片方だけを、引き剥がす、というのは……」

「――やってみないと、分からぬな」

「――ただ」

べべは、静かに、続けた。

「――魂を、一時的にでも、保持できる、"器"が、必要だ。……人でも、物でも構わぬが、相応の、神秘性を、持つものでなければ、魂そのものが、霧散してしまう」

俺は、静かに、その言葉に、はっとした。

「――待て。……それなら」

俺は、静かに、懐に、手を入れた。

「――持っている」

「――……なに?」

俺は、静かに、その、淡い光を纏う、一輪の花――エターナルフラワーを、取り出した。

「――迷宮エリアで見つけた、この花だ。……『枯れることのない、神秘の花』」

べべは、静かに、その花を、見つめた。

「――……なるほど。これならば、確かに」

べべは、静かに、頷いた。

「――魂の欠片を、一時的に、留め置くには、十分な、神秘性を、持っておるな」

「――だが、我一人の魔力では、心許ない」

べべは、静かに、そう続けた。

「――魂を、繊細に、引き剥がす作業には、膨大な、そして、極めて精密な、魔力の制御が必要になる」

「――なら」

俺は、静かに、一人の顔を、思い浮かべた。

「――マニョンに、頼もう」

俺は、マニョンの元を訪れ、べべに語ったのと、同じ話を、改めて、丁寧に説明した。

「――え……。じゃあ、あのリアーナ、中身、別人だったの……!?」

マニョンは、静かに、目を丸くした。

「――ああ。……オリーブという、女神だ」

俺は、静かに、頷いた。

「――彼女とは、今、俺は……。付き合っている」

「――は、はぁ!?」

マニョンは、思わず、声を上げた。

「――リアーナと、オリーブ、両方って、こと!?」

「――そうだ」

俺は、静かに、しかし、揺るぎない声で、答えた。

「――男に、二言はない。……リアーナを、諦めるつもりも、オリーブを、手放すつもりも、ない」

「――う、うわぁ……。すごいこと、言うね……」

マニョンは、静かに、呆れたように、しかし、どこか、面白そうに、笑った。

「――まあ、いいけど。……ボクは、力を貸すだけだしね」

「――手伝ってくれるか」

「――もちろん。……ボクだって、リアーナのこと、心配だったんだから」

こうして、俺、べべ、マニョンの三人は、静かに、その計画を、練り始めた。

「――魂を引き剥がすためには、まず、リアーナの、"元の身体"に、繋がりを持つものが、必要になる」

べべが、静かに、続けた。

「――器そのものは、今、オリーブが、使っている。……ならば、"本来の、彼女の身体"の、痕跡を、辿るしかあるまい」

俺は、静かに、目を閉じた。

(――リアーナの、本来の身体……)

その時、俺の脳裏に、ふと、あることが、浮かんだ。

「――オリーブに、聞いてみる」

「――私の、人間時代の、痕跡?」

オリーブは、静かに、俺の問いに、首を傾げた。

「――ええ、あるわよ。……私が、死んでから、埋葬された、墓が」

「――中央大陸の、東にある、森の奥深く、だったかしら」

「――随分と、昔のことだから……。今も、残っているかは、分からないけれど」

俺は、静かに、頷いた。

「――行ってみよう」

俺と、オリーブ、そして、べべとマニョンは、静かに、東の森へと、足を踏み入れた。

「――ここ、だわ」

長い時を経て、朽ちかけた、古い墓標が、そこに、静かに、佇んでいた。

苔むした石碑に刻まれた、消えかけた文字。それでも、そこには、確かに、かつて生きていた、一人の女性の名残が、残されていた。

「――ここに、あなたの、遺骨が、眠っているのね」

オリーブは、静かに、その墓を、見つめた。

「――随分と、懐かしい、気分だわ」

俺は、静かに、その場に、跪いた。

「――べべ、マニョン、頼む」

「――うむ」

「――うん」

べべが、静かに、目を閉じ、精霊神マニョンが、静かに、その両手を、墓標へと、翳した。

「――我が、転魂の理を、応用しよう」

べべの声が、静かに、荘厳な響きを帯びた。

「――マニョン、お主の、精霊の力で、この地に眠る、遺骨から……。魂の残滓と、肉体の記憶を、丁寧に、引き寄せてくれ」

「――うん、任せて」

マニョンは、静かに、目を閉じた。

「――あまねく精霊よ……。眠りし者の、魂と、身体を……。今一度、この世界に、呼び起こせ」

――淡い光が、静かに、墓標から、立ち昇り始めた。

「――エターナルフラワー、頼むぞ」

べべが、静かに、俺の手にある、あの花へと、視線を向けた。

俺は、静かに、その花を、掲げた。

「――受け止めてくれ。……リアーナの、魂を」

――淡い光の粒子が、静かに、しかし、確かに、集まり始めた。

それは、まるで、長い、長い眠りから、目覚めようとする、一つの意志のようだった。

俺は、静かに、その光景を、固唾を呑んで、見守り続けた。

(――頼む。……もう一度、会わせてくれ)

――光が、静かに、収束していく。

そして――そこに、現れたのは。

「――ん……。ここ、は……」

ゆっくりと、目を開けた、リアーナの姿だった。

「――リアーナ……!」

俺は、思わず、駆け寄った。

「――ディア……? な、何が……」

リアーナは、静かに、混乱したように、周囲を、見回した。

「――私、確か……。天界で……」

「――大丈夫だ」

俺は、静かに、彼女の手を、取った。

「――もう、心配ない。……お前を、取り戻した」

リアーナは、静かに、俺の顔を、見つめた。その瞳から、堪えきれない涙が、静かに、零れ落ちた。

「――ディア……!」

彼女は、静かに、俺の胸に、飛び込んできた。

――一方、その傍らで。

「――……」

オリーブが、静かに、自らの体を、見下ろしていた。

先ほどまで、リアーナの体を、纏っていたはずの、その存在が――今は、静かに、独立した、一つの、新たな肉体を、得ていた。

「――私……。分離、できたのね」

オリーブは、静かに、自らの手を、見つめた。

「――女神のスキルも……。ちゃんと、感じるわ」

俺は、静かに、二人を、見比べた。

――リアーナには、変わらぬ、彼女自身の力。そして、オリーブにもまた、確かに、女神のスキルが、宿っている。

二柱の、それぞれの、確かな存在。

「――これで、良かったのか」

俺は、静かに、そう、呟いた。

「――ふふ」

リアーナが、静かに、涙を拭いながら、微笑んだ。

「――随分と、面倒な、経緯を、辿ったものね」

「――でも」

彼女は、静かに、オリーブへと、視線を向けた。

「――あなたのおかげで、私は、生きて、こうして、帰ってこられた。……感謝するわ」

「――……こちらこそ」

オリーブは、静かに、頭を下げた。

「――勝手に、身体を、借りてしまって……。ごめんなさい」

「――いいのよ」

リアーナは、静かに、優しく、微笑んだ。

俺は、静かに、二人を、見つめた。

「――男に、二言はない」

俺は、静かに、しかし、確かな決意を込めて、告げた。

「――リアーナも、オリーブも……。俺にとって、どちらも、大切な、存在だ」

「――これから、二人とも、大事にすると誓う」

リアーナと、オリーブは、静かに、顔を見合わせ――どちらからともなく、小さく、笑い合った。

「――仕方ないわね」

「――ふふ、変わった人ね、あなた」

こうして――五十年に及ぶ、長い、長い旅路の果てに。

ディアは、二柱の、愛する者たちと共に、新たな未来へと、歩み始めることとなった。

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