第62話 精鋭の『選定』
その夜、俺はモーチと七星の面々を城の一室へと集めていた。
「――向こう側へ、渡るメンバーを、決めたい」
俺は、静かに、切り出した。
「――相手は、神だ。……並の実力では、足手まといになるどころか、無駄死にすら、招きかねない」
その言葉に、部屋の空気が、静かに、張り詰めた。
「――俺は、この戦いに――」
俺は、静かに、続けた。
「――黄色い妖精、そして、モーチを、連れて行こうと思う」
「――ボク?」
黄色い妖精が、珍しく、真剣な顔で、俺を見つめた。
「――ああ。……お前には、大きな借りがある」
俺は、静かに、その瞳を、見つめ返した。
「――アリマンは、お前にとって、幼い頃からの、親友だったはずだ」
その一言に、妖精の表情が、僅かに、翳った。
「――……そうだね」
妖精は、静かに、頷いた。
「――ボクも、あいつを、殺した奴らに、一言、言ってやりたいと思ってたところ」
「――モーチ、お前もだ」
俺は、静かに、その視線を、モーチへと向けた。
「――アルカナの、遺志。……その、最後の仕上げに、立ち会ってもらいたい」
モーチは、静かに、深く、頷いた。
「――ようやく、我が待ち続けた、この日が、来たのだな」
その声には、二千年を超える、長い、長い、待望の想いが、滲んでいた。
◇
「――残る皆には、それぞれ、大切な役目を、頼みたい」
俺は、静かに、続けた。
「――ルピン、ノノ、メメ。……お前たちには、装置の"守護"を、頼む」
「――守護、か」
ルピンが、静かに、頷いた。
「――ああ。……救出が成功した後、確実に、逃げ帰れるように。……この転移装置だけは、絶対に、壊させるわけにはいかない」
「――任せて。……絶対に、守り抜くから」
ノノが、静かに、拳を握った。
「――私も、回復や、緊急時の支援に、備えます」
メメも、静かに、頷いた。
「――デルポポには、天界側の"門"の調査を、頼みたい」
「――門、ですか」
「ああ。……あの、北の遺跡にあった、封印の扉。……あれと、繋がりのある構造が、向こう側にも、あるかもしれない。……もし、そうならば、そこから、何か、突破口が、見えてくるはずだ」
「――かしこまりました。……私の知識、存分に、使わせていただきます」
デルポポが、静かに、深く、頷いた。
◇
「――そして」
俺は、静かに、黄色い妖精へと、向き直った。
「――お前に、一つ、頼みがある」
「――なぁに?」
「――お前の力、もう一段階、引き上げたい」
俺は、静かに、続けた。
「――俺は、既に、デーモンロード、そして、皆には黙っていたが…スキル全能ノ神の力を得ている。……今ならばアリマンが成し得なかった名付けができるはずだ。この力、お前にも、分けたいと思う」
「――まさか……」
妖精が、静かに、目を見開いた。
「――ああ、そうだ、名を贈らせてくれ」
俺は、静かに、しかし、確かな覚悟を込めて、そう告げた。
「――今日から、お前は……。『マニョン』だ」
その瞬間、妖精の全身から、これまでにない、圧倒的な魔力が、静かに、しかし、確かに、溢れ出した。
『――名付けが、発動しました』
『――スキル『精霊王』が、『精霊神』へと、昇華しました』
「――こ、これは……!」
マニョンは、驚いたように、自らの掌を、見つめた。
「――力が……。全然、違う……!」
「――これでこそ、共に、神に、立ち向かえる」
俺は、静かに、頷いた。
◇
「――なあ、ディア」
ルピンが、静かに、口を開いた。
「――正直、俺も、一緒に、行きたい気持ちはある」
その声には、隠しきれない、悔しさが、滲んでいた。
「――だが」
俺は、静かに、しかし、はっきりと、告げた。
「――今回の相手は、神だ。……お前たちが、束になっても、恐らく、巻き込まれて、無駄死にするだけだろう」
その、あまりにも、率直な言葉に、その場が、静かに、沈黙した。
「――だからこそ、お前たちには、"帰る場所"を、守ってほしい」
俺は、静かに、続けた。
「――俺たちが、無事に、リアーナを連れて、帰ってこられるように。……その、最後の砦を、頼みたい」
ルピンは、静かに、暫し、俺を見つめた後、深く、頷いた。
「――分かった。……絶対に、守り抜く」
「――ありがとう」
◇
翌日から、俺たちは、突入に向けた、最終準備に、取り掛かった。
「――まずは、偵察から、始めよう」
俺は、静かに、極小の使い魔を、幾体も、あの穴の奥へと、送り込んだ。
「――リアーナが、囚われているであろう場所を、まず、特定する」
数日にわたる、使い魔たちの、地道な偵察活動により、少しずつ、天界の内部構造が、明らかになっていった。
「――ここに、何か、監視の厳重な、施設があります」
デルポポが、静かに、その報告を、俺に示した。
「――恐らく、ここに、リアーナ様が」
「――ああ、恐らくな」
俺は、静かに、頷いた。
「――基本方針は、奇襲による、速攻だ」
俺は、静かに、皆を見渡した。
「――俺たちの目的は、神を倒すことじゃない。……あくまで、リアーナを、取り戻すこと。それだけだ」
その言葉に、マニョンと、モーチが、静かに、しかし、確かな決意を込めて、頷いた。
「――装置の最終確認は」
「――万全です」
デルポポが、静かに、頷いた。
「――いつでも、発てます」
俺は、静かに、拳を握りしめた。
――五十年、待ち続けた、この時が。
ようやく、訪れようとしていた。




