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【悲報】最弱インプ、勇者を事故死させてスキルを強奪してしまう~成り上がり魔王譚~  作者: 下総山中
西大陸と神々の正体

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第57話 王の最期と『全能ノ神』

デルポポは、言葉を失った。


地に横たわる、右半身を失い、虫の息のアリマン。その傍らに、気絶したまま倒れている、ディア。


戦いの爪痕だけが、静かに、その場に、生々しく残されていた。



「――う……。ぐ……」


意識が、朦朧とした、痛みの中で、俺は、ゆっくりと目を開けた。


「――り……。リアーナ……」


まず、口をついて出たのは、その名前だった。


「――デルポポ……、か……」


「――ディア……! 良かった、意識が……!」


デルポポが、驚いたように、俺へと駆け寄った。


「――すまねぇ……」


俺は、震える声で、なんとか、言葉を紡いだ。


「――リアーナが、攫われた……。アリマンも……。みんなを……、たの……む……」


再び、意識が、遠のきそうになる。


「――しっかりしてください! すぐに、魔王城へ、お運びします!」


デルポポは、瞬時に、緊急の転移術式を発動させ、俺たち二人を、魔王城へと運んだ。



だが、アリマンの傷は、あまりにも深すぎた。


「――回復は……、絶望的、です……」


魔王城の医師たちが、悲痛な面持ちで、そう告げた。


治癒魔法も、神聖術も、あらゆる手立てが、無力だった。


――神の理を、直接曲げる技によって、負わされた傷。それは、この世界のいかなる理でも、癒すことの叶わぬ、絶対的な傷だった。



特別室のベッドの上、俺は、ようやく、意識を取り戻していた。


体中には、まだ、鈍い痛みが、残っている。だが、それよりも、はるかに、重い痛みが、胸の内にあった。


「――デルポポよ……」


かすれた声が、隣の寝台から、静かに、聞こえた。


「――ディアを……。ディアを、呼んでくれるか……」


「――アリマン様……!」


俺は、慌てて、その寝台へと、駆け寄った。


そこに横たわるアリマンの姿は、あまりにも、変わり果てていた。かつての、あの、圧倒的な威厳を纏った姿は、既に、そこにはなかった。


「――アリマン……!」


「――ディアよ……」


アリマンは、静かに、しかし、確かな意志を込めて、俺を見つめた。


「――我は……、もう、このまま、朽ちるであろう」


「――そんな……!」


「――神の理を、曲げる技だ。……恐らく、アルカナ様が、やられたものと、同一だろう」


アリマンは、静かに、続けた。


「――さすれば……、我は、もう、助からん」


「――そんなこと……! そんなこと、あるはずが……!」


俺の声は、震えていた。目の奥が、熱くなるのを、必死に、堪えていた。


「――アリマン様が、いなければ……! 魔王国は、どうするのです……! 気を、確かに、持ってください……!」


「――すまないな……」


アリマンは、静かに、微かに、笑みを浮かべた。


「――魔王のスキルが……。『違和感と絶望』を、教えてくれたのだよ……。もう、助からないと、な」


その、あまりにも静かな諦観に、俺は、言葉を失った。



「――よく、聞いてくれ……。ディアよ」


アリマンは、力を振り絞るように、静かに、続けた。


「――リアーナはな……。我が、唯一、家族と呼べる、特別な存在だ」


その言葉に、俺は、静かに、耳を傾けた。


「――お主も……、唯一無二の存在で、あろうが……。我にとっても……、幼少より、共に、暮らしてきた……、家族なのだよ」


俺の脳裏に、これまでの二人の姿が、次々と、蘇った。軽口を叩き合い、時に呆れ、時に、深い信頼を見せていた、あの、二人の姿。


「――あの場で、お主を、残したのも……」


アリマンは、静かに、続けた。


「――神に、争う方法と……、未来への、希望を……、託すためだ」


「――アリマン……」


「――この世界で……、唯一無二の、スキルを持つ、我らが……。世界から、同時に、消えた瞬間……」


その声が、僅かに、震えた。


「――リアーナを戻す可能性はゼロに近くなる‥‥」


俺は、静かに、拳を握りしめた。


「――お主に……」


アリマンは、静かに、しかし、確かな重みを込めて、続けた。


「――リアーナを……、託したい」


「――託されて、くれるか……?」


俺は、一瞬たりとも、迷わなかった。


「――もちろんだ」


俺は、静かに、しかし、揺るぎない決意を込めて、答えた。


「――俺は、何をしてでも……、彼女を、救い出す」


「――それが、神に、逆らう行為だと、しても、な」


アリマンは、静かに、目を細めた。その瞳には、確かな、安堵の色が浮かんでいた。


「――ふむ……。見込み通りだ」


「――リアーナも……、良い番を、見つけてきたものだな」


その、穏やかな笑みに、俺は、堪えきれず、涙が零れそうになった。



「――さて」


アリマンは、静かに、しかし、確かな覚悟を込めて、続けた。


「――もう、時間が、ない」


「――ディアよ……。我には、跡継ぎは、おらぬのでな」


「――お主に……、この力と……、国を……、託したいと、思っている」


「――それを、使って……、どうか……。リアーナを……、頼みたい……」


俺は、静かに、深く、頭を垂れた。


「――わかりました」


俺の声は、震えていたが、その言葉には、確かな覚悟が、宿っていた。


「――謹んで、お受けします」



「――少し前に……、デルポポには……、伝えてある」


アリマンは、静かに、視線を、部屋の隅に立つ、デルポポへと向けた。


「――これからのことは……、頼んだぞ……」


デルポポは、静かに、しかし、深く、頭を垂れた。その瞳には、堪えきれない涙が、静かに、滲んでいた。


「――さぁ」


アリマンは、静かに、俺を見つめた。


「――とどめを、刺すのだ」


「――そして、我が力を……、もらって、くれ……」


「――……わかりました」


俺は、静かに、槍を構えた。


手が、震えていた。かつて、これほどまでに、重い一撃を、振るったことは、なかった。


(――これは、殺すためじゃない)


(――アリマンの、最期の願いを、叶えるための、一撃だ)


「――アリマン……」


俺は、静かに、涙を堪えながら、彼の名を、呼んだ。


「――ありがとう……。俺を……俺を、信じてくれて」


アリマンは、静かに、穏やかに、微笑んだ。


「――こちらこそ……、感謝する……。ディアよ」


「――良い……、我が、国を……、頼んだぞ……」


俺は、静かに、目を閉じ、そして――槍を、振るった。


その日、十三代魔王アリマンは、この世を去った。


神の力により、復活できないと知りながら――彼は、ディアにスキルを渡すため、自ら、死を選んだのだった。


大事な、大事な家族を、託すために。



アリマンが、息を引き取ってから、数時間後。


異変は、すぐに、訪れた。


『――スキル『魔王』を取得しました』


『――スキル『思考加速』を取得しました』


『――スキル『魔ノ頂点』を取得しました』


『――スキル『星魔法』を取得しました』


俺の体の奥底から、これまで感じたことのない、途方もない力が、静かに、しかし確かに、湧き上がってきた。


『――進化条件を満たしました』


『――熟練度、経験値の基準を達成』


『――使役数、一万を突破』


「――な……」


『――種族【グレーターデーモン】から【デーモンロード】への進化が完了しました』


全身が、熱を帯び、骨が、肉が、激しく、作り変えられていく。


だが、それすらも、まだ、序章に過ぎなかった。


『――スキル『勇者』と、スキル『魔王』が、共鳴しています』


「――な……!? これは……!」


体の奥深くで、二つの、本来決して交わることのなかったはずの力が、静かに、しかし、確かに、絡み合い始めた。


『――二つのスキルが、融合しました』


『――スキル『全能ノ神』を取得しました』


「――こ、これは……」


俺は、震える手で、自らの胸を、押さえた。


(――勇者と、魔王……。本来、交わることのない、二つの、頂点が……)


偶然と、そして――運命が、重なり合い、一つとなった。


未だ、かつて、誰も、成し得なかった、その頂へと。


一匹の、名もなきインプが、今、まさに――神の名を冠する、スキルを得て。


魔族の、新たな王となった。

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