表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】最弱インプ、勇者を事故死させてスキルを強奪してしまう~成り上がり魔王譚~  作者: 下総山中
西大陸と神々の正体

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/68

第56話 届かぬ叫びと『敗北』

「――ふっ。下界の最高戦力も、この程度か」

ダリウスは、嘲笑うかのように、アリマンの一撃を、涼しい顔で躱した。

「――まだだ! 『スターフレア』、トリプルキャスト!」

三条の閃光が、瞬く間に、ダリウスへと殺到する。

「――この程度で、歯向かうとは……。愚かなものよ」

だが、その全ては、静かに掲げられた掌の前に、あっけなく、遮られた。

「――『聖典結界』」

眩い光の壁が、アリマンの必殺技を、いとも容易く、防ぎきってしまった。

「――ここだっ!」

俺は、その隙を突き、背後から、渾身の一撃を、ダリウスへと放った。

槍聖の技が、まさに、鋭く、彼の背を貫かんとする。

「――効かぬな」

だが、その一撃すらも、見えない障壁に、あっさりと、弾かれてしまった。

「――くっ……!」

俺は、思わず、歯を食いしばった。

(――これが、真の力……!)

これまで、幾多の戦いを、乗り越えてきた自負があった。だが、目の前の敵は、あまりにも、格が違いすぎた。

「――次は、こちらから、いくぞ」

ダリウスが、静かに、掌を掲げた。

「――『神罰の雨』」

――刹那、天から、無数の光が、容赦なく、降り注いだ。

「うわぁぁぁぁぁ!」

俺は、辛うじて、その一部を躱すも、体中に、鋭い痛みが、走り抜けた。

「――くっ……! やりよる……!」

アリマンもまた、防御に徹しながら、苦悶の声を漏らしていた。

「――もういいの! 二人とも、やめて!」

不意に、リアーナの叫び声が、戦場に響き渡った。

「――あいつらの狙いは、私なの!」

「――なにっ!? なぜ、リアーナが、狙われなくてはいけない!」

俺は、思わず、大きな声で、そう問い返した。

「――どういうことだ、リアーナ。……説明せよ」

アリマンが、静かに、しかし、鋭く問うた。

リアーナは、震える声で、口を開いた。

「――あいつらの狙いは……。私の中に、新たに宿った、スキル……。『女神』よ……」

「――女神……?」

「――未来の主神が、そう言っていたわ……。このままだと、みんな、理から外れて、死んでしまうの……。だから、お願い、もう……! やめて!」

その悲痛な叫びに、俺の心臓は、激しく、締め付けられた。

「――そんなこと、いきなり言われて、納得できるか!」

俺は、思わず、激昂した。

「――俺は、最後まで、戦うぞ!」

「――ふむ……」

アリマンは、静かに、しかし、冷静に、その状況を、見極めていた。

――その瞬間だった。

鋭い手刀が、俺の首筋を、正確に捉えた。

視界が、一瞬で、暗転する。

「――あ……。ありまん……。なぜ……」

俺は、意識を保つことすら叶わぬまま、その場に、崩れ落ちた。

「――リアーナよ、ディアを、頼むぞ」

アリマンの声が、遠のく意識の中、静かに、聞こえた。

「――アリマン……! あなた……!」

「――我は、十三代魔王、アリマン。……部下が攫われるのを、見過ごすわけには、いかぬのでな」

その声には、揺るぎない、確かな覚悟が、宿っていた。

「――私一人で、抗わせてもらおう」

「――ふん。……無駄死にを」

ダリウスが、静かに、侮蔑を滲ませながら、笑った。

「――よかろう。相手してやろう」

「――リアーナよ、気絶している、ディアと共に、離れておれ」

アリマンの声は、静かに、しかし、何かを、覚悟したかのような、重みを帯びていた。

「――最後の、時になるかもしれんからな」

「――わかったわ……」

リアーナは、静かに、震える声で、そう答えた。

「――では、いくぞ……」

アリマンは、静かに、両手に、途方もない魔力を、練り上げていく。

「――我が奥義……。受けてみよ!」

「――『スターライトホール』!」

――空間そのものが、大きく、歪み始めた。

その歪みに、周囲を取り囲んでいた、多数の天使たちが、次々と、吸い込まれていく。

「――この技に吸い込まれた者は、光届かぬ異界へと送られ、永劫、出ることは叶わぬ、秘技よ」

アリマンの声は、静かに、しかし、確かな威圧感を放っていた。

「――超常の存在とて、同様! 受けてみよ!」

「――くっ……! これは、まずいな……」

さすがのダリウスも、その効果の前に、僅かに、動揺を見せた。

「――エルリック様。……『理の杖』、使わせて、いただきます」

杖が、眩く、輝いた。

――そして、時が、止まった。

――どれほどの間、時が止まっていたのか。それすらも、誰にも、分からなかった。

再び、時が動き出した、その瞬間。

「――ぐぁぁぁぁぁ!」

凄惨な叫びと共に、アリマンの右半身が、無残に、吹き飛んだ。

「――あ……! アリマン……!」

朦朧とした意識の中、俺は、辛うじて、その光景を、目に焼き付けた。

「――だから、もう、やめてって、言ったのよ……。……ばか……」

リアーナが、震える声で、涙ながらに、呟いた。

まだ、息はある。だが、それは、まさに、ぎりぎりの状態だった。

「――あなたの、目的は、私でしょう」

リアーナは、静かに、しかし、確かな覚悟を込めて、ダリウスへと向き直った。

「――早く、連れて行きなさい。……二人に、これ以上、手を出したら……。私、死ぬわよ」

「――かなわんな」

ダリウスは、静かに、肩をすくめた。

「――さあ、来い。……撤退だ」

リアーナは、静かに、俺の――気絶したままの、俺の顔を、そっと見つめた。

「――さようなら、ディア……」

その声には、深い、痛切な想いが、滲んでいた。

「――愛しているわよ……」

――多数の天使と、ダリウス、そして、リアーナは、静かに、光と共に、転移し、消えていった。

戦場に、静寂が、戻る。

そこに、残されたのは――未だ、意識を取り戻さぬ、俺と。

そして、右半身を失い、虫の息で、地に横たわる、アリマンの姿だけだった。

風だけが、静かに、その場を、吹き抜けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ