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【悲報】最弱インプ、勇者を事故死させてスキルを強奪してしまう~成り上がり魔王譚~  作者: 下総山中
西大陸と神々の正体

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第55話 神界の『号令』

――神々の座す、この世の理の外側。

そこに広がるのは、人智の及ばぬ、荘厳にして静謐な空間だった。

「――ついに……。ついに、現れたか……」

主神、エルリックは、静かに、しかし、抑えきれぬ歓喜を滲ませながら、そう呟いた。

「――一億年もの間……。この時を、待ち望んでいたぞ」

その声には、途方もない年月を経てなお、色褪せることのなかった、執念にも似た熱が籠っていた。

「――来い、ダリウス」

エルリックが、静かに、呼びかける。

「――はっ。ここに」

音もなく、一人の天使が、その場に跪いた。鋭い眼光を持つ、屈強な体躯の男だった。

「――我の欲しているもの、分かるな」

「――もちろんでございます」

「――うむ。よかろう」

エルリックは、静かに、しかし、確かな渇望を込めて、続けた。

「――我が、創造神の座を奪うためには、必要なのだ。……生きたまま、連れてこい」

「――かしこまりました」

ダリウスは、静かに頭を垂れた。

「――我が部隊を率い、下界へと、行って参ります」

「――よかろう」

エルリックは、静かに、一振りの鍵を、ダリウスへと差し出した。

「――天通門の鍵は、渡しておく」

「――ありがたき幸せ。……命に代えても、任務、達成いたします」

「――一億年前のこともあるのでな。念には念を、入れておくがよい」

エルリックは、静かに、もう一つの品――禍々しくも、荘厳な輝きを放つ、一振りの杖を、差し出した。

「――『理の杖』も、持って行くがよい」

「――ははっ!」

ダリウスは、深く、頭を垂れた。

その姿を見送りながら、エルリックは、静かに、口元を歪めた。

「――くっくっく……。以前は、デーモンロード如きに、邪魔をされたが……」

その瞳の奥に、暗く、揺るぎない、確信めいた光が宿った。

「――今回は、そうはいかぬぞ」

――そのころ、中央大陸。

ディアとリアーナは、西大陸の進捗報告のため、アリマンとの会議に臨んでいた。

「――ほう。半年で、かなりのペースだな」

アリマンが、報告書に目を通しながら、静かに、感心したように頷いた。

「――お主らの成長は、目を見張るものがある」

「――はい。皆、成長しています」

俺は、静かに、しかし確かな誇りを滲ませながら、答えた。

「――勇者の恩恵と、所々に仕込んだ、自動レベリングのおかげでしょう。ルピン、ノノ、メメ、べべは、特に、成長しました」

「――うむ。我らの、四大守護者と、遜色ないレベルだな」

「――いえいえ、まだまだです。あと数か所、ダンジョン攻略を残していますし、……楽しみです」

俺の言葉に、隣で、リアーナが、誇らしげに、微笑んだ。

「――そうよ。ディアは、頑張ってるの。……流石、私のディアね」

「――相変わらずの、イチャイチャだな……」

アリマンは、静かに、深い溜息をついた。

「――三人しか、おらぬから、良いものの。……部下がいる前では、控えめにするのだぞ」

「――わ、分かってるわよ」

リアーナが、僅かに、頬を染めながら、口を尖らせた。

「――一日、三回までって、決めてるんだから!」

「――はぁ……。こうも、変わると、清々しいな」

「――そうですね……」

俺は、静かに、苦笑を浮かべた。

――その、一見、穏やかな時間が、突如、断ち切られた。

「――!? !?」

リアーナの表情が、一瞬にして、凍りついた。

「――アリマン! 今すぐ、人がいない地に、転移して……!! 早く……!!」

その声には、これまで聞いたことのないほどの、切迫した恐怖が滲んでいた。

「――む? 予知か」

アリマンが、瞬時に、その意図を察し、静かに応じた。

「――分かった」

俺たちは、瞬時に、禁忌の樹海に近い、誰も立ち寄らない、静かな地へと、転移した。

――だが、それすらも、無意味だった。

「――ほう。予知か」

低く、重々しい声が、静かに、周囲に響いた。

「――だが、無駄だ。……既に、見えているのだろう?」

気づけば、俺たちは、無数の天使の一団に、瞬く間に、包囲されていた。

その中心に立つのは、鋭い眼光を持つ、屈強な男――ダリウスだった。

「――くっ……!」

リアーナの顔から、みるみるうちに、血の気が引いていく。

「――リアーナ、どういうことだ」

俺は、静かに、しかし、明らかな緊張を滲ませながら、彼女に問うた。状況が、まるで、飲み込めていなかった。

「――敵、ということだろう」

アリマンが、静かに、しかし、揺るぎない声で答えた。

「――ディアよ、戦うぞ」

「――分かった。……返り討ちにしましょう」

俺は、静かに、槍を構えた。

「――だ、駄目よ……!」

リアーナの声が、震えていた。

「――逆らっては、駄目……。ディア……。お願い……」

その声には、これまで見せたことのない、切実な恐怖が、滲んでいた。

――何か、彼女だけが、知っている。あるいは、感じ取っている。

俺は、その一言だけで、事態の深刻さを、痛いほど、理解した。

だが。

「――心配するな」

俺は、静かに、しかし、確かな決意を込めて、彼女の肩に、そっと手を置いた。

「――アリマンも、いる。……負けるわけが、ない」

その言葉に、リアーナの瞳が、僅かに、揺れた。

「――アリマン、先手を、頼む」

「――ああ」

アリマンは、静かに、その手に、圧倒的な魔力を、練り上げていく。

「――超級魔法から、いく!」

その声と共に、天空に、凄まじい輝きが、収束していく。

「――喰らえ! 『スターフレア』!」

――閃光が、天へと、突き上がった。

戦いの、幕が、切って落とされようとしていた。

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