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【悲報】最弱インプ、勇者を事故死させてスキルを強奪してしまう~成り上がり魔王譚~  作者: 下総山中
西大陸と神々の正体

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第48話 龍王と姉妹の『絆』

開拓が軌道に乗り始めたある日、俺とべべは、デェソンから、折り入って話があると呼び出されていた。

「――べべよ」

デェソンは、静かに、しかし重みのある声で切り出した。

「――我が跡目を、継いでくれぬか」

「――な……」

俺は、思わず息を呑んだ。隣で、べべもまた、僅かに目を見開いていた。

「――力こそが、我らドラゴン族の絶対の理。……そして、貴殿は、既に、我を超える実力を持っておる」

デェソンは、静かに続けた。

「――名付けにより得た力、幾多の実戦を経て積み上げた経験。……歳を重ねた我よりも、貴殿の方が、遥かに、この地を導くに相応しい」

「――だが、我は」

べべは、静かに、しかし戸惑いを滲ませながら答えた。

「――まだ、成体にすらなりきれておらぬ身だ。……そのような大役、務まるだろうか」

「――見てくれなど、関係ない。力こそが、全てだ」

デェソンは、静かに、しかし揺るがぬ声で言い切った。

「――もし、その気があるのなら。ドラゴン族と戦い、分からせてほしい」

べべは、暫し、沈黙した。

(――こいつ、迷ってるな)

俺は、静かに、その横顔を見つめた。

「――なあ、べべ」

俺は、静かに声をかけた。

「――お前の好きにすればいい。……無理に、族長になる必要はない」

べべは、静かに、俺の方を見た。

「――我は、自由に生きたい。……それが、あの塔を出た、我の本懐だ」

「――ああ」

「だが」

べべは、静かに、しかし確かな決意を込めて続けた。

「――大恩ある貴殿のためならば、一肌脱ぐのも、悪くない。……この地の安定は、貴殿の国にとっても、大事なことだろう」

「――受けよう、デェソン殿。……ドラゴン族の力、しかと見せてもらおう」

それから三日三晩、べべは、デェソンを除く、この地の全てのドラゴンたちと、次々に模擬戦を繰り広げた。

「――ぐ……! これほど、とは……!」

「まだまだ、行けるであろう」

一体、また一体と、べべは、圧倒的な力の差を見せつけながら、しかし、決して手を抜くことなく、真摯に相手を務め続けた。

その中には、ライトの姿もあった。

「――くっ……! この差は……!」

「――お主も、まだまだ、伸びる。これからも精進し、この地を支え続けてくれ」

「――ああ、無論だ」

俺は、その様子を、静かに見守っていた。

(――こいつ、本当に、強くなったな)

かつて、卵の状態だった氷雪龍の魂が、こうして、多くの者に、その力を認めさせている。感慨深いものがあった。

三日目の夜、最後に立ちはだかったのは、デェソン自身だった。

「――さあ、参ろうか」

デェソンの体から、凄まじい魔力が立ち昇る。

「攻撃魔法、飛行、豪力、瞬足、そしてリーダーシップ。……老いたとはいえ、この身に宿る力、侮ってもらっては困る」

「――望むところだ」

べべと、デェソンの戦いは、空を舞台に、激しく繰り広げられた。

「『炎獄雷撃(えんごくらいげき)』――!」

デェソンの放つ、灼熱の炎撃が、夜空を赤く染め上げる。

「――我には、通じぬ」

べべは、静かに、氷の障壁を展開し、その炎を、悉く受け止めていった。

「――氷雪の理、恐るべし……!」

「相性の差だ、デェソン殿。……お前の炎は、我の氷には、分が悪い」

「『氷結槍雨』――!」

べべの氷が、デェソンの巨躯を、着実に捉えていく。

長きにわたる激闘の末――

「――ぐ、ぅ……。……参った」

デェソンは、静かに、地に膝をついた。

「――見事だ、べべ。……我の全てを、出し尽くした上での、完敗よ」

翌日、デェソンは、集まった全てのドラゴン族を前に、静かに告げた。

「――我は、この地の族長の座を、退く」

どよめきが、その場に広がった。

「――歳も、重ねた。そして、昨夜、我が力の全てを、べべにぶつけ、そして、完敗した。……ゆえに、次代の族長は、べべに任せたい」

デェソンは、静かに、しかし確かな笑みを浮かべた。

「――我が力――攻撃魔法、飛行、豪力、瞬足、そしてリーダーシップ。……これらは、血を分けた我が子にのみ、譲り渡せるもの。……代々受け継いできたこの力はライトへ継承しよう」

デェソンの視線が、静かに、我が子――ライトへと向けられた。

「――ライトよ。我が力の全てを、お主に、継承しよう」

「――父上……」

ライトは、静かに、膝をついた。

デェソンは、静かに、ライトの額へと、手を触れた。

――刹那、ライトの全身が、眩い光に包まれた。

『――継承が発動しました』

淡い輝きなどでは決してない、荒々しいほどの熱と魔力の奔流が、ライトの体を包み込む。骨が軋み、鱗が一段と輝きを増し、体の奥底から、圧倒的な力が、次々と流れ込んでいくのが分かった。

「――ぐ、ぅ……!」

ライトは、思わず、その場に片膝をついた。全身を駆け巡る、これまでにない量の魔力に、耐えるように、歯を食いしばっている。

『――先天性スキル『攻撃魔法』『飛行』『豪力』を継承しました』

『――後天性スキル『瞬足』『リーダーシップ』を継承しました』

しばしの後、光が収まると、ライトは、静かに、自らの拳を見つめた。

「――これが……。父上の、力の全て」

「――使いこなせるかは、お主次第だ」

デェソンは、静かに、しかし満足げに笑った。

「――だが、力の継承者と、族長の座は、また、別の話だ」

デェソンは、改めて、べべへと向き直った。

「――べべ。お主には、力そのものではなく、"導く者"としての座を、託したい。……ライトとともに一族を支え、この地全体を纏め上げる、真の"長"としての役目を」

「――族長か…、しかと承った」

べべは、静かに、その言葉を、噛み締めるように呟いた。

「――お主の知恵と、経験、そして、外の世界を渡り歩いてきた見識は、何物にも代え難い。……この地に足りぬのは、まさに、それだったのだ」

デェソンは、静かに続けた。

「――個の強さに頼り、団結を疎かにしてきた我らドラゴン族に、真に必要なのは、力そのものよりも、皆を導く、確かな知恵だ」

べべは、暫し、目を閉じた後、静かに頷いた。

「――分かった。……ならば、我が、この地の族長として、皆を導こう。……ライト、お主の力、遠慮なく借りるぞ」

「――はい、べべ殿。……共に、この地を、支えていきましょう」

こうして、力を受け継いだライトと、知恵と経験を持つべべ、二人が手を取り合う形で、ドラゴン族の新たな時代が、静かに幕を開けることとなった。


一方、その頃。

建国から数ヶ月が経ち、着実に発展を続ける街の一角で、ノノとメメは、静かに、それぞれの想いを、抱え続けていた。

「――ねえ、メメ」

ある夜、二人が肩を並べて座る、住居の一室。

「――私たち、このままで、いいのかな」

ノノが、ぽつりと、そう漏らした。

「――ルピンは、あれだけの武功を挙げて、部下からも慕われてる。べべは、ドラゴン族の族長にまでなった。……私たちは」

その声には、隠しきれない、焦りが滲んでいた。

「――魔法の熟練度は、上がってる。……でも、まだ、二人とも、進化すら、してない」

メメも、静かに、俯いた。

「――リアーナ様は、あんなに、綺麗で、強くて……。ディアさんの隣に立つ人として、あまりにも、相応しすぎて」

「――追いつけない気が、するよね」

二人の間に、重い沈黙が落ちた。

数日後、ノノとメメは、意を決したように、母親の元を訪れていた。

「――母様。……サキュバスが、進化するには、何が必要なの」

母親は、静かに、娘の瞳を見つめた。

「――どうしたの、急に」

「……知りたいの。私たちが、もっと、強くなるために」

母親は、暫し、考え込んだ後、静かに口を開いた。

「――サキュバスの進化には、二つの条件が必要だと、言われているわ。……一つは、十分な戦闘経験」

「――もう一つは」

「――心の底から、誰かと愛し合った経験よ」

その言葉に、ノノとメメは、静かに、息を呑んだ。

その夜、ノノは、意を決して、ディアの元を訪れた。

「――ディア。……ちょっと、いい?」

「ん? どうした」

「――その……。今度、二人だけで、時間、もらえないかな」

ノノの声は、僅かに、震えていた。

「――二人だけで? ああ、構わないが……。ああ、丁度いい、税収の見直しについて、相談したいことがあったんだ。ノノなら、数字にも強いし、頼りにしてる」

「――え……」

「今度、時間を作ってくれるか。帳簿、一緒に見てほしくてな」

ディアは、屈託のない笑顔で、そう告げた。

(――そういう、意味じゃ……)

ノノは、静かに、その場で、言葉を失った。

同じ頃、メメもまた、勇気を振り絞っていた。

「――ディアさん、あの……」

「ん、どうした、メメ」

「――その……。最近、疲れてませんか。……よかったら、私が、その……」

「――ああ、実は、少し肩が凝っててな。……悪いが、メメの回復魔法、いつも助かってる。今度も頼めるか?」

「――は、はい……」

メメもまた、静かに、俯いた。

(――そういう、つもりじゃ……)

ディアには、まるで、その真意が、届いていなかった。

その夜、二人は、静かに、部屋で肩を寄せ合っていた。

「――駄目、だったね」

ノノの声は、震えていた。

「――ディアさんは……。私たちのこと、本当に、仲間としか、見てないんですね」

メメの目に、静かに、涙が滲んだ。

「――なんで、私たち、こんなに、頑張ってるのに」

「――強くなりたいのも、認めてほしいのも……。全部、ディアさんのため、だったのに」

ノノの瞳からも、堪えきれない涙が、零れ落ちた。

「――ノノ……」

「――メメ……」

二人は、互いに、抱きしめ合った。

「――悔しいよ、ね」

「――はい……。悔しい、です」

その涙は、恋の届かぬ悲しさと、そして、これまで積み重ねてきた想いの重さが、混じり合ったものだった。

「――でも」

ノノが、静かに、涙を拭いながら、口を開いた。

「――メメがいてくれて、良かった。……一人だったら、もっと、辛かったと思う」

「――私も、です。……ノノが、姉として、いつも、そばにいてくれたから」

二人は、互いの顔を見つめ合い、静かに、微笑み合った。

「――大好きだよ、メメ」

「――私も、大好きです、ノノ」

その言葉と共に、二人の間に、これまでとは違う、確かな熱が、静かに込み上げ始めた。

『――進化条件を満たしました』

「――な……! 体が、熱い……!」

「これ、は……!」

二人の全身から、艶やかな魔力が、迸るように溢れ出した。骨格が僅かに変化し、肌が、しっとりと艶を帯び、背に生える翼と角が、より優美な形へと作り変えられていく。

「あ、ああっ……! 何か、込み上げて……!」

ノノが、思わず声を漏らす。

「私、も……! 体の奥から、力が……!」

メメも、両手で自らの体を抱きしめながら、その変化に耐えていた。

『――種族【サキュバス】から【ハイサキュバス】への進化が完了しました』

姉妹の間に育まれた、深い、家族としての愛――それもまた、"心の底から愛し合った経験"として、確かに、条件を満たしていたのだった。

しばしの後、光が収まると、二人は、互いの姿を見つめ、思わず息を呑んだ。

以前よりも、より洗練された、美しい姿へと変貌を遂げていた。

「――メメ、すごい……! 私たち……!」

「――ノノ……! 綺麗、です……!」

二人は、静かに、互いの手を取り合った。

「――恋は、届かなかったけど」

ノノが、静かに、しかし晴れやかに笑った。

「――私たちの絆は、ちゃんと、力になったんだね」

「――はい」

メメも、静かに、涙ながらに、微笑んだ。

「――これからも、一緒に、頑張りましょうね、ノノ」

「――うん。……そして、いつか、絶対、ディアに、振り向いてもらうんだから」

その決意に満ちた笑顔には、悲しみだけでなく、確かな、次への希望が、宿っていた。

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