表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】最弱インプ、勇者を事故死させてスキルを強奪してしまう~成り上がり魔王譚~  作者: 下総山中
西大陸と神々の正体

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/69

第47話 開拓と『変化』

「――ここが、いいだろう」

ライトの案内で辿り着いた場所は、山と川、そして海に囲まれた、豊かな平地だった。

「東側は、水源も近く、土壌も肥沃です。……何より、山からは、良質な石材が採れます」

「――ああ、悪くない」

俺は、静かに、その土地を見渡した。

(――ここに、新しい国を作る)

胸の内に、静かな高揚と、そして、確かな責任の重みが、同時に込み上げてきた。

「――まずは、区画を決めよう」

俺は、地面に図を描きながら、皆に語りかけた。

「居住区、商業区、工房区……。計画的に配置していく。目安としては、居住区が全体の六割、商店が二割、工場が二割、というところか」

「なるほど、な。……行き当たりばったりじゃないんだな」

ルピンが、感心したように頷く。

「後々の暮らしやすさを考えると、最初にちゃんと決めておいた方がいい。……あとは、少し離れた場所に、田んぼ、畑、酪農場、それに、ため池を使った養殖所も作る」

「――ディアの城は?」

「――それは、後回しだ。まずは、皆の住む場所からだろう」

俺の言葉に、周囲から、控えめな笑いが漏れた。

「――王様が、一番後回しかよ」

ルピンが、からかうように笑う。

「当然だ。……皆が安心して暮らせてこそ、国だからな」

最初の数日は、持ち込んだテントでの暮らしが続いた。

「――さすがに、これはキツいな……」

夜、地面に敷いた毛布の上で、ノノが小さく身震いした。

「もう少しの辛抱だ。……山から、良い石材が採れる」

俺の言葉通り、ルピンを先頭に、開拓作業は、瞬く間に本格化していった。

「――よし、ここに積むぞ!」

ルピンが、巨大な石材を軽々と担ぎ上げながら、指示を飛ばす。

ドラゴン族の若者たちも、力を貸してくれていた。

「――我らの力が、こうして役に立つとは、嬉しいものだ」

一体の若いドラゴンが、翼を器用に使い、重い資材を運びながら、笑顔を見せた。

石垣が積まれ、壁が立ち上がり、少しずつ、住居の骨組みが姿を現していく。

「――形になってきたな」

俺は、その光景を、静かに、しかし胸を熱くしながら見つめていた。

田んぼやため池の造成は、ガロス率いるリザードマンたちが、率先して進めていた。

「――水の扱いなら、我らに任せておけ」

ガロスは、生き生きとした様子で、水路の設計に取り組んでいた。

「この地形なら、川の水を、上手く引き込める。……養殖池も、悪くない環境だ」

畑や酪農場は、メメが中心となって、丁寧に整えられていった。

「――土の質を、まず確かめましょう。……ここは、水はけが良さそうです」

メメは、以前ライオネル王国で見た農業改善の知識を、実地で活かしながら、着実に作業を進めていく。

「――メメ、随分と、頼もしくなったな」

俺が声をかけると、メメは、少し照れたように微笑んだ。

「――皆さんの、役に立てるのが、嬉しいんです」

現場には、常に、活気が満ちていた。

「――みんな、頑張ってー! ボクも、手伝うよー!」

黄色い妖精が、軽やかに宙を舞いながら、絶えず精霊王の力を振りまいている。作業をする者たちの体には、微かな加護がかかり、疲労が和らいでいくのが分かった。

「――おかげで、随分、作業が捗るな」

ルピンが、額の汗を拭いながら、笑った。

土地そのものにも、妖精の豊穣の力が、静かに染み渡っていた。整えたばかりの畑には、既に、小さな芽が、力強く顔を出し始めている。

「――こんなに早く、芽吹くなんて」

メメが、驚いたように、その光景を見つめた。

そんな中、俺の知らないところで、また一つ、新しい灯りが灯っていた。

「――あら、ディア。まだ、気づいていなかったの?」

リアーナが、悪戯っぽく笑いながら教えてくれたのは、山の麓、少し奥まった洞穴の一角だった。

そこには、ノノとメメの同郷――サキュバスとインキュバスたちによる、小さな酒場のような店が、静かに営業を始めていた。

「――夜になると、疲れた住民たちが、皆、ここに集まってくるのよ」

「――いつの間に……」

「彼女たちにとっても、これが、得意分野だからな。……皆の疲れを癒すのも、立派な仕事だ」

ほのかな灯りの下、笑い声や、労いの声が、静かに響いていた。

その光景に、俺は、静かな温かさを覚えた。

数日が経ち、少しずつ、国としての形が見え始めた頃。

俺は、リアーナと共に、高台から、作りかけの街並みを見下ろしていた。

「――出だしは、好調だな」

「そうね。……私も、眷属たちの知識が、こうして役に立って、嬉しいわ」

リアーナが、静かに微笑んだ。ダキオスたちが、街の警備や、資材の輸送計画に、着々と貢献してくれていた。

「――ところで」

俺は、ふと、素朴な疑問を口にした。

「――国王って、何をすればいいんだ?」

「――……」

リアーナが、暫し、呆れたように、俺を見つめた。

「――呆れた。……世話のかかる子ね」

「い、いや、真面目に聞いてるんだが」

「――まず、国民を守る義務を果たすことよ。そのためには、兵が必要。……そして、それを維持するには、お金が必要になる」

「金、か」

「そう。……お金は、住民から、税として徴収するの」

「――正直、金には、あまり興味なくてな……」

俺が、素直にそう漏らすと、リアーナは、小さく笑った。

「――あら。それなら、ノノに任せてみたらどう?」

「――ノノに?」

「あの子、ああ見えて、しっかり者よ。……デルポポ隊にいた頃も、帳簿や予算管理を、きっちりこなしていたわ。……命じてみなさい。きっと、喜ぶわよ」

「――そうか。……助言、助かる」

俺は、静かに、その言葉を胸に刻んだ。

「――それに、私がいるから、安心しなさい」

リアーナが、静かに、しかし確かな温もりを込めて、続けた。

「――サポートするわ」

「――ありがたい」

「――いいのよ。……私も、あなたを、放っておけないし」

その最後の一言は、ほとんど、俺の耳にすら届かないほどの、小さな呟きだった。

「――え? なんて?」

「――ふふ、なんでもないわ」

リアーナは、静かに、はぐらかすように微笑んだ。

「――お礼は、今度、私の買い物に、付き合ってもらおうかしら」

「――喜んで」

俺は、素直に、そう答えた。

その横顔に、リアーナが、僅かに、頬を緩めたことには、まだ、気づいていなかった。

高台から見下ろす、まだ半分も出来上がっていない街並み。

だが、そこには、確かな活気と、そして、多くの者たちの、新しい未来への希望が、満ちていた。

(――ここから、俺たちの国が、始まる)

俺は、静かに、その光景を、胸に、深く刻み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ