表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】最弱インプ、勇者を事故死させてスキルを強奪してしまう~成り上がり魔王譚~  作者: 下総山中
魔王国で勤務開始、目指せ魔王!!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/68

第38話 魔王と剣聖と『決着』

王都陥落の報せは、瞬く間に全戦線を駆け巡った。

「――王都が、消えた、だと……!?」

公爵領で指揮を執っていた第一神殿騎士団の残存兵たちが、動揺に足を止める。

「本国が、機能を失った……! これでは、戦を続ける意味が……!」

統制を失った人族軍は、瞬く間に瓦解し始めた。

「――退け! 全軍、撤退だ!」

指揮官たちの声が、混乱の中に虚しく響く。

だが、その報せを受けてなお、ただ一人だけ、退かぬ者がいた。

「――ぐ……、こんな、ところで……」

剣聖ゴウロウは、崩落した瓦礫の街を、独り、掻き分けるように進んでいた。

その鎧は、既に半分以上が砕け、体中には、無数の切り傷と打撲が刻まれている。地割れに足を取られ、崩れる建物の下敷きになりかけながら、恐慌に陥った避難民たちを庇い、それでもなお、彼は前へと進み続けていた。

「――我が、退くわけには、いかん……」

血の滲む足取りで、ゴウロウは、辛うじて魔王城の門前へと辿り着いた。

「――陛下! 剣聖ゴウロウが、単身で城門へと迫っております! 見るからに、満身創痍の様子ですが……!」

報告を受けたアリマンは、静かに玉座から立ち上がった。

「――ここまで、無理をして辿り着くとは。……ちょうどいい。私が、相手をしよう」

「陛下、危険です!」

「案ずるな。この程度の相手に、後れは取らぬ」

アリマンは、静かに、北の遺跡から持ち帰った恩寵武具――『魔を統べし王冠』を頭に戴き、『覇者の杖』を手に取り、『創世のローブ』を纏った。

「これは……」

装備を纏った瞬間、アリマンの纏う気配が、一段と重厚さを増した。まるで、この世の理そのものが、彼を中心に渦を巻くかのようだった。

「――アルカナよ。そなたの力、しかと借り受ける」

城門の前、アリマンとゴウロウは、静かに対峙した。

「――貴様が、魔王アリマンか」

「――そして、貴様が、人族最高戦力、剣聖ゴウロウだな。……その体で、よくぞここまで」

「……分かっている。だが、それでも、我は退かぬ。……我が国の誇りを賭けて、貴様と刃を交える」

ゴウロウが、限界を超えた体に鞭を打ちながら、静かに剣を抜いた。

「――良い覚悟だ」

アリマンもまた、静かに杖を構えた。

「――参る」

激突は、瞬く間に始まった。

「――ハアッ!」

ゴウロウの剣が、まるで光の筋のように迸る。満身創痍とは思えぬ、鬼気迫る一撃だった。

「――ぬん!」

アリマンは、杖でその一撃を受け止めながら、静かに応じた。

――ドガァァンッ!!

大気が震えるほどの衝撃が、両者の間に走る。

「――さすがは、剣聖。……この状態で、なおこれほどの太刀筋とはな」

「貴様もまた、只者ではないな、魔王よ」

打ち合いは、瞬く間に激化していった。だが、既に限界を超えていたゴウロウの体は、次第にその精彩を失い始めていた。

「――くっ……!」

「――終わりにしよう」

アリマンは、静かに杖を掲げた。

「『創世のローブ』が纏うは、この世が生まれる前の、混沌の力……。そして『覇者の杖』は、その力を、一点に収束させる」

杖の先に、夜空そのものを凝縮したような、深い漆黒の輝きが宿る。

「――なんだ、その、光は……」

ゴウロウが、僅かに息を呑んだ。

「『星屑の裁き――』」

アリマンの声と共に、天より、無数の光の奔流が降り注いだ。まるで、億万の星々が、一つの意志を持って、この地に牙を剥いたかのような光景だった。

「――な……!」

「これが、我が祖アルカナの、そして――我が、覇道の証明だ」

――ドガァァァァァァンッ!!!

星々の裁きが、ゴウロウの体を、その場ごと呑み込んだ。

轟音が収まった後、そこには、もはや何も残っていなかった。

「――終わった、か」

アリマンは、静かに杖を下ろした。

「……見事な、最期だった」

その声には、勝者の高揚ではなく、一人の武人への、静かな敬意が滲んでいた。

「王都は落ち、軍の指揮系統も崩壊した。……そして、統括神殿騎士団長も、討たれた」

その報せは、瞬く間に、全戦線へと伝えられた。

人族側の抵抗の意志は、完全に折れた。

こうして、戦争は、魔王国の、圧倒的な勝利のうちに幕を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ