第37話 王都陥落と『業火』
――ドガァァァァァァァンッ!!!
大地そのものが、震えた。
「――な……!?」
俺は、思わず言葉を失った。
地面が、隆起するように大きく波打ち、王都の中心部が、まるで内側から引き裂かれるように崩壊していく。
「こ、これ……! 想定より、遥かに威力が大きすぎる……!」
ノノが、悲鳴のような声を上げた。
鍾乳洞に溜め込んだ水素と魔素の混合気体は、俺たちの予想を遥かに超える規模で連鎖反応を起こし、地下から王都全体を突き上げていた。
「うわああああっ……!」
「王都が……! 王都が、沈んでいくぞ……!」
遠くから、逃げ惑う人々の悲鳴が響き渡る。
主要施設どころか、街全体が、轟音と共に、地盤ごと沈み込んでいった。
「――ちょ、これ、やりすぎじゃない……!?」
ノノが、呆然と、崩壊していく街並みを見つめる。
「……こんなに、なるとは」
メメも、両手で口元を覆いながら、言葉を失っていた。
「――さすがのボクも、これは、ちょっとびっくりー……」
黄色い妖精でさえ、目を丸くして、その光景を見つめていた。
「――俺の想定の、何十倍もの威力だ……」
俺自身、この結果には、言葉を失っていた。
(――鍾乳洞の空洞そのものが、想像以上に大きかったのか。それとも、魔素と水素の相性が、予想以上に良すぎたのか)
理由の分析は、後でいくらでもできる。だが、目の前の光景は、あまりにも圧倒的だった。
主要施設を無力化する、という当初の狙いを遥かに超え、王都そのものが、丸ごと地に沈んでいた。
◇
「――逃げ遅れた人は……!」
メメが、青ざめた顔で呟いた。
「――蘇生の理がある。……死んでも、十日以内なら」
俺は、静かに答えた。だが、その声には、僅かな罪悪感が滲んでいた。
(――建物の破壊が目的だった。人死には、最小限にするつもりだった)
結果として、意図せぬ大量の犠牲を生んでしまったことは、否めない事実だった。
「――行くぞ。ここに長居はできない」
俺は、静かに仲間たちを促した。
「任務は、完遂した。……想定を、遥かに超える形で、な」
◇
崩壊していく王都を背に、俺たちは、静かに撤退の道を辿った。
「――ディア」
しばらく無言で歩いていたルピンが、静かに口を開いた。
「今回のことは、お前のせいじゃない。……戦の道具として、俺たちは、あくまで最善を尽くしただけだ」
「……分かってる」
「分かってるなら、いい」
俺は、静かに頷きながら、遠く、砂塵の向こうに沈みゆく王都を、一度だけ振り返った。
(――この光景は、忘れない)
その胸の内には、任務達成の安堵と、抑えきれない重い感情が、複雑に絡み合っていた。
こうして、人族の心臓部――王都は、想定を大きく超える規模で、陥落した。




