表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】最弱インプ、勇者を事故死させてスキルを強奪してしまう~成り上がり魔王譚~  作者: 下総山中
魔王国で勤務開始、目指せ魔王!!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/66

第26話 氷海の底と『眠れる王』

「――ここが、伝承にある場所か」

リアーナ達は魔王アリマンの指示で、北にある古代都市の調査に来ていた。


リアーナが、地図を片手に、荒涼とした氷原を見渡した。

「何度か調査に来たことがある。だが、いつ来ても、遺跡らしきものは見当たらなかった」

「気になるな。伝承では、都市は"一夜にして破壊された"、とあるだけだったな」

俺は、地図と目の前の光景を見比べながら眉をひそめた。

「その後、都市がどうなったかまでは、記録に残っていない」

「――あれ、ここ、変じゃないですか?」

メメが、足元を指差した。

「本来なら、陸地であるはずの場所……。なのに、なぜか一面、氷に覆われてます」

「――言われてみれば」

俺も、違和感に気づいた。海に近い氷原ならまだしも、伝承にある位置は、本来もっと内陸のはずだった。

「――もしや」

俺は、静かに口を開いた。

「破壊された後、都市はどこかへ落ち、そのまま氷に閉ざされた……。そういうことなんじゃないか」

「――なるほど。伝承にない、その後の顛末、というわけか」

リアーナが、興味深げに頷いた。

「――べべ、頼めるか」

俺が声をかけると、べべは静かに頷いた。

「造作もない。……我は、元より氷雪の理を司る者」

べべが翼を広げ、静かに詠唱を紡ぐ。

『――氷解』

淡い光と共に、広大な氷原が、みるみるうちに水へと姿を変えていった。

――ゴゴゴゴゴゴッ……!

轟音と共に、氷の下から、巨大な石造りの都市の輪郭が姿を現す。

「――これは」

リアーナが、感嘆の声を漏らした。

「一億年、誰も目にすることのなかった、伝説の都市……。アオス」

俺たちは、慎重に都市の内部へと足を踏み入れた。

「――酷いな」

崩れ落ちた石柱、砕けた彫像。かつての繁栄を思わせる荘厳な建築の随所に、激しい戦闘の爪痕が刻まれていた。

道中、いくつもの遺体が、腐ることなくそのままの姿で横たわっていた。

「――一億年経っても、朽ちていない、だと……?」

「恐らく、氷に閉ざされていたおかげだろう。……この寒さと密閉された環境が、腐敗そのものを止めていたんだ」

リアーナが、静かに頷いた。

「――なるほど。神の奇跡ではなく、ただの、自然の理か」

「――ここ、罠だ! 動くな!」

先行していたダキオスが、鋭く声を上げた。

眷属となった元A級冒険者――アレン、ユート、カリナの三人が、手早く周囲を確認する。

「――圧力感知式の罠、か。古いが、まだ機能してる」

アレンが、慎重に解除の手順を進めていく。

「こういう場所は、俺たちの得意分野だ」

ダキオスが、静かに呟いた後、リアーナへと向き直った。

「――リアーナ様。この先、罠の解除は我らにお任せを。……あなた様に、万が一のことがあってはなりません」

「ふふ、心配性だな、ダキオス」

「命を救っていただき、こうして再び戦う機会まで頂いた身です。……この程度の役目、当然のこと」

ダキオスは、深く頭を垂れた。

俺は、その様子を横目に見ながら、密かに感心していた。

(――随分と、律儀な忠誠心だな)

眷属化された当初の反発は、既にどこにも見られなかった。

俺たちは、彼らの案内で、幾つもの罠を回避しながら、都市の奥――かつての王城へと進んでいった。

たどり着いた玉座の間には、今にも動き出しそうなほど、生々しい姿の遺体が、玉座に腰掛けたまま鎮座していた。

「――この方が」

「――魔王アルカナ、だろうな」

俺は、静かにその姿を見つめた。

頭には荘厳な王冠、手には杖、そして纏うのは、豪奢なローブ。ただの装飾品ではなく、その全てから、確かな神気――恩寵武具特有の気配が漂っていた。

「――これは、飾りじゃないな」

俺は鑑定を発動させた。

『――恩寵武具:魔を統べし王冠、覇者の杖、創世のローブ。歴代の魔王に相応しき者へ、その力を貸す』

「歴代の魔王に相応しき者、か……」

リアーナが、静かに呟いた。

「これは、今の陛下――アリマン様にこそ、相応しい品だろうな」

「――俺も、そう思う」

俺たちは、それらを丁重に回収した。

「――丁重に、埋葬しよう」

俺の言葉に、皆が頷いた。

俺たちは、その亡骸を、静かに石棺へと納めた。

「――安らかに」

リアーナが、そっと祈りを捧げる。

一億年の時を超え、ようやく、伝説の王は、その眠りを全うすることができた。

弔いを終えた後、俺は玉座の裏に、僅かな違和感を覚えた。

「――ここ、何かある」

俺は『仕掛け(罠)』の感覚を研ぎ澄ませながら、玉座の裏側を丹念に探った。

やがて、隠された切り替えの仕掛けが見つかり、静かに石壁がスライドしていく。

「――階段、か」

その先には、地下へと続く、隠し階段が広がっていた。

「行ってみよう」

俺たちは、慎重に足を進め、更なる深部――アオスの、最後の秘密へと近づいていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ