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【悲報】最弱インプ、勇者を事故死させてスキルを強奪してしまう~成り上がり魔王譚~  作者: 下総山中
奪われしスキル、成り上がりの道

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第15話 灼熱階層の『火龍』

草原エリアを抜けた先、階段を下りた俺たちを迎えたのは、むせ返るような熱気だった。

「――こりゃあ、たまらんな」


ルピンが額の汗を拭いながら唸る。

足元には赤黒く煮え立つ溶岩が幾筋も流れ、狭い岩場だけが安全な足場として点在していた。

「気をつけろ。足場を誤れば、それだけで大怪我じゃ済まない」

俺は槍を構えながら、周囲を見回した。



「――来た。前方、複数!」

メメの『察知』が、真っ先に敵の接近を捉える。

岩陰から姿を現したのは、赤い鱗に覆われたトカゲ型の魔物――火トカゲだった。

動きは緩慢で、群れで押し寄せてくるものの、一体一体の脅威度はさほど高くない。


「――こいつら、動きが遅いな」

ルピンが盾を構えたまま、あっさりと一体を弾き飛ばす。

「ああ。物理には脆そうだ」

俺も槍を突き出し、二体、三体と着実に仕留めていく。


火トカゲは鈍重な分、群れの数だけが厄介だった。だが、これまでの連携があれば、対処は難しくない。


「メメ、バフを!」

「――『身体能力向上』!」

淡い光が全員を包み、俺とルピンの前衛としての働きが一段と冴え渡る。


「ノノ、『黒炎槍』は――」

「駄目、効きが悪い……! こいつら、炎耐性持ちみたい!」

火属性のトカゲに、同じ火属性の攻撃魔法はほとんど通らなかった。


「なら、俺たちで削るしかないな」

俺とルピンが前衛として次々と火トカゲを叩き伏せていく間、ノノは無理に前へ出ず、隙を見て牽制の矢を放つノノの弓で援護に徹した。


「――やっぱり、私の出番、少ないね」

ノノが悔しげに呟く。



灼熱の環境は、想像以上に体力を蝕んだ。


「くっ……! 肌が焼けるように熱い……!」

数戦をこなす頃には、全員の体に軽い火傷が刻まれ始めていた。


「メメ、頼む」

「――『癒しの風』!」

淡い風が全身を包み込み、火傷の痛みがじんわりと引いていく。


「助かる……。この階層は、メメの回復がなきゃ話にならないな」

「え、あ……。役に、立ててます、か……?」

「ああ。十分すぎるくらいだ」


メメは僅かに頬を染めながら、扇を握り直した。



数日、数週間と、俺たちは灼熱の階層で戦いを重ねた。


体は幾度となく熱に炙られたが、その分、俺とルピンの中に、少しずつ変化が芽生えていく。


『――【耐熱耐性】を習得しました』


「――これは」

俺は自分の掌を見つめた。以前より、肌を焼くような熱さが、明らかに和らいでいる。


「俺もだ。……随分、動きやすくなった」

ルピンが盾を構え直しながら笑った。


同じ頃、ノノの魔術師スキルの熟練度も、着実に積み上がっていた。


「――なんか、頭の中に、新しい術式が浮かんでくる」

ある夜、ノノがぽつりと呟いた。


『――攻撃魔法『黒流岩(こくりゅうがん)』を習得しました』


「黒流岩……?」

「試してみる」

ノノが詠唱を紡ぐと、上空に禍々しい漆黒の岩塊が形成されていく。発動までにかなりの時間を要するが、解き放たれた岩塊は、着弾と同時に凄まじい衝撃を叩き出した。


――ドガァァンッ!!


「うわ……! 威力、すごい……!」

「炎属性じゃない、物理的な質量攻撃だ。これなら、火耐性のある相手にも通じるはずだ」

俺の言葉に、ノノが得意げに笑った。

「これで、私の出番も増えそうね」



そうして辿り着いた、この階層の最奥。


そこには、巨大な火龍が、翼を休めるように岩場に蹲っていた。


「――でかい、な」

ルピンが息を呑む。


俺は静かに、地面に転がっていた火トカゲの死体を見つめた。


「――策がある」


俺は懐から取り出した毒を、死体の肉に丁寧に染み込ませた。


「これを、あいつの近くに置いておく。……眠っている間に、餌として食わせる」


ノノが眉をひそめる。

「そんな上手くいく?」

「奴らは元々、共食いでも構わず腹を満たす習性がある。……賭ける価値はある」


俺たちは死体を火龍の近くへと運び、闇に紛れて距離を取った。


やがて、目を覚ました火龍が、無造作にその死体を丸呑みにする。


「……食った」

「毒が効くまで、少し待つぞ」


しばらく後、火龍の動きに、僅かな精彩の欠如が見え始めた。


「今だ。挑発する」


俺は槍を構え、火龍の眼前へと躍り出た。


「――こっちだ、トカゲ野郎!」


咆哮を上げ、火龍が怒りに任せて突進してくる。


俺は事前に見定めていた場所――落とし穴の縁ぎりぎりまで後退した。


「もう少し……もう少し……!」


火龍の巨体が、狙い通りその真上を通過する。


――ズドォンッ!!


毒に鈍った反応速度が仇となり、火龍の巨躯が盛大に落とし穴へと転落した。


「今だ、ノノ!」

「『黒流岩』――!」


長い詠唱の末、放たれた漆黒の岩塊が、体勢を崩した火龍へと直撃する。


――ドガァァァンッ!!


「グ、ガアアアアアッ……!!」


すさまじい衝撃に、火龍が悲鳴を上げた。だが。


「……まだ、生きてる」

「当然だ。これで終わるほど甘くはない」


怒り狂った火龍が、穴から這い出し、猛然と反撃に転じた。



そこからは、まさに死闘だった。


「グオオオオオッ――!!」

炎の吐息が岩場を焼き払い、俺とルピンは交互に前へ出ては下がりを繰り返した。


「くっ……!」

「ディア、大丈夫か!?」

「問題ない……! この程度、耐熱耐性のおかげで、以前ほどのダメージじゃない……!」


「メメ、バフを!」

「――『身体能力向上』!」


「ノノ、隙を見て『黒流岩』を!」

「分かってる……! ずっと、狙ってる……!」


俺とルピンが交互に攻撃を仕掛け、火龍の意識を分散させる。その隙に、ノノが再び長い詠唱に入った。


「――『黒流岩』!」


再び放たれた岩塊が、満身創痍の火龍を捉える。


――ドガァァァンッ!!


「グ、ギィ……ァ……」


巨体が、ゆっくりと崩れ落ちた。


『――溶岩エリアボスを撃破しました』

『――エリア攻略度:2/5』


俺たちは、全身に傷と火傷を負いながらも、その場に膝をついた。


「……勝った、な」

「ああ……。だいぶ、危なかったが」


「メメ、頼む……」

「――『癒しの風』!」


淡い光が全員を包み込み、傷が少しずつ癒えていく。



ボスを撃破した先、階段の踊り場に、光の膜に包まれたセーフティエリアが広がっていた。


「――これは」

その奥には、見慣れない紋様の刻まれた円形の台座があった。


俺は鑑定を発動させ、その正体を確かめる。


『――転移陣。ダンジョン入口との間を行き来できる』


「入口と、行き来できる仕掛けか」

「便利じゃない。食料の補給に助かる」


ノノの言葉通り、俺たちはこの数週間、集落から持ち込んだ携行食を切り詰めながら戦い続けていた。もう底が見え始めていたところだった。


「これも、恐らく大昔にこのダンジョンを封印したサキュバスの祖先たちが、攻略の過程で設けた設備なんだろうな」


「そっか……。私たちの先祖、色々整えてくれてたんだね」


メメが、感慨深げに転移陣を見つめた。


「よし。一度、入口まで戻って、食料を調達し直そう。それから、次の階層――豪雪エリアへ挑む」


四人は転移陣に手をかざし、淡い光と共に、ダンジョンの入口へと一時的に姿を消した。

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