七話『王都の流儀?』
―――昨日
――――酒場『ヴァルネイア』にて
「……はーいっ、また俺の勝ちぃっ!」
俺はカードを、チップが乱雑に積まれたテーブルに投げやる。
「ったく……またお前さんの勝ちかい!」
「……兄ちゃん、強いねぇ…」
卓を囲む連中から、悔しさと羨望が混じった声が上がる。
(……へへっ、どうもすいやせんねぇ……)
俺はテーブルのチップを、
さっと手元へ寄せる。
(……いやぁ、今日も一人勝ちってヤツですかね)
やっぱ休みの日はギャンブルと酒に限るね!
俺はエールをぐいっと飲み干す。
「ネーアさんっ! もう一杯追加でー!」
…………?
「……あれ…?」
いつもなら、
――――はぁーい!
とか、
――――あんまり飲み過ぎないようにね、クロノさん。
……なんて、
すぐに返ってくるのに。
……今日は違った。
「―――チビ助!
てめぇ、どうやらよっぽど痛ぇ目にあいたいみてぇだなあ!!」
男の野太い声。
それに重なるように、
「すとぉおおーーーーっぷ!!!!」
ネーアの甲高い声が、酒場に響く。
……どうやら、
それどころではないようだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
―――で、その結果。
「……きゅぅ」
バタリ、とチビ助と呼ばれていた若い子が椅子から倒れた。
(……いーや)
酒よわっ!
一杯飲んだだけじゃん!
勝負自体は、ずっとあの若い子が押してたんだけど……
(……まあ、6のゾロ目じゃあねえ……)
「……へっ……なんだぁ? 酒も大して飲めねえあんちゃんだったとはなぁ……」
大男はそう言って酒をあおる。
「おい」と横のヒョロい男に目を向けた。
「まぁ、大したもんは持ってねぇだろうが……」
ヒョロい男と手下らしい連中が、金目のものを漁り始める。
……カバンの中身。懐の中。
そして―――
「……おっ?アニキ!
これなんかどうでしょ?」
ヒョロい男が、若い方の腰に差さっていた剣を抜き取る。
大男は剣を受け取ると、じっと眺めて
「ほぅ……」と息を漏らした。
「……ハッ! 悪くねぇ。こいつぁそこそこ金になりそうだな……」
そう言って、ビュッと軽く振ると、
やや上機嫌に鞘へ収める。
「……まぁ、財布の中身と合わせりゃぁ、はした金ぐらいにゃなるだろう」
(………うーむ……)
……財布はともかく、
流石に剣はなあ……。
……そこまでやる?。
「―――ゴズっ!
その辺にしときなさいっ!」
ネーアさんが止めに入る。
(……ネーアさん、勇気あるなあ……)
……………。
……エールまだかな?
「ハッ!止めるなやネーア。
……負け犬にかける情けなんてねぇだろう?」
大男―――ゴズは、
ニヤリと下卑た笑みを浮かべる。
「……そうは言ってもね。
このコもウチの大事なお客さんなんだから」
「……それが本音か?」
「常連になって、い~っぱいお金を落としてほしいわ♡」
ネーアさんがぺろっと舌を出し、
ウインクしながらそう言った。
うん、かわいい。
「……ハッ!
……まあ何にしても、だ」
ゴズは倒れている若いのへ視線を向ける。
「……勝ったのは、オレだ」
別に何をしたって問題ねぇだろう?
そう言って、戦利品の剣をくるくると放り投げて弄んでいる。
「……それとも何かあ?
お前さんがオレと一戦やるってぇんなら……
結果次第で考えてやってもいいぜ?」
「……っ…!」
ゴズがいやらしい笑みを浮かべ、
ネーアさんへ視線を向ける。
すると―――
「「「―――ちょおっっっと待ったあぁぁぁっっ!!!」」」




