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『剣なし部隊の英雄譚―――無敗の剣士ですが、自分では平凡な剣士だと思っています。』  作者: 檜浅利
第一章

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五話『突然の決闘』


「―――始め!」


訓練場に、団長の声が響く。

同時に、互いの木剣が乾いた音を鳴らした。


――カンッ。

――カンッ。


(……基本に忠実な型だな)


構えも、踏み込みも、癖がない。

戦う前の印象どおり、男の剣はどこまでも“平凡”だった。


(受けは、上手いみたいだけど……)


一度、二度、

剣を合わせて確かめる。


(……ここは、早めに決めちゃおう)


そう判断して、

僕は一飛びで、相手との距離を詰めた。


そして――


「――泡沫流(うたかたりゅう)『瞬泡(しゅんぽう)』!」


泡が弾ける瞬間のように、

一拍で距離を詰める。

相手の肩を狙い、瞬足の突きを放った。


……はずだった。


――フッ。


剣は、空を切る。


相手は、わずかに体を傾けただけだった。

まるで、足元が“ずれた”かのような、不自然な動き。


(……え?)


ふと、周囲からやかましい声援が聞こえ始める。


「オラァ! 少年っ、やっちまえぇええ!」

「がんばってくださぁぁい!」

「“剣なし”に敗北を教えてやれえぇえぇえ!!」


……いつの間にか、ギャラリーが増えている。

周囲から無責任な声援が飛んでいた。


「……なんでみんな俺の応援じゃないんだよ……ったく」


目の前の男が、恨めしそうにぼやく。


……この人、あまり好かれていないのだろうか。


(それにしても、今の不規則な動き……)


『瞬泡』を見切られたのは、初めてだった。


師匠に泡沫の剣を習ってからというもの、

必殺の剣として磨いてきた技だ。


「……どうした。これで終わりか?」


団長の声が飛ぶ。


「……いえっ」


次で決める。

僕は再び構えを直し、相手を見据えた。


男の構えは、力の抜けた自然体。

剣先も、肩も、どこか気の抜けたように見える。


……油断しているだけにも見える。

でも、そこが―――


(……命取りだ)


―――泡沫流『返り水(かえりみず)』


低い姿勢のまま、僕は一気に懐へ踏み込む。


下段から、掬い上げるように剣を振り抜いた。

乾いた音が、弾けた。


相手の木剣が、宙を舞う。


(――勝った)


あとは、このまま。

喉元へ、剣先を突きつけるだけ。


男は、間の抜けた顔で――

ただ、上を見ていた。


――そこにあるはずのないものを見るように。


……そして。


「――あでっ!!!」


後頭部に、激しい衝撃。


その瞬間、

ハクはめのまえがまっしろになった



◇◇◇◇◇◇


「―――勝者、クロノ・ハル!」


グラン団長の声が、訓練場に響く。


……ふぅ。


「……ま、ざっとこんなもんだな」


俺、クロノは、

なるべくニヒルな笑みを意識して、そう言った。


――あっぶねええぇ


――ちょーあぶねぇ



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