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1話

 意識が目覚めると、目の前に広がっていたのはただの白。何もない。自分がどこかにゆっくりと落ちているという感覚しかなかった。


「なんだよ、ここ」


 俺がいたのは終わりの見えない白い世界。辺り一帯白で埋めつくされていた。


(どうなってんだ、俺は死んだってことか?もうどうでもいいか。やっとクソみたいな人生を終えられたんだ)


 そう思って目を瞑ると、誰かの声が聞こえてきた。


『·····ことを』


 はっきりと言葉は聞こえなかったが、女性の声だった。人なんて俺以外いないと思っていたのに。


「なんだ?誰かいるのか?」


 大声で叫ぶが返事はなかった。幻聴だったのだろうと思い目を瞑ったが、今度ははっきりと聞こえた。


『次のあなたの人生に幸があらんことを』


 幸だと?笑えるね。クソみたいな人生はもうコリゴリだ。そう愚痴った直後、俺の意識は途切れた。




 ◇◇◇◇




 意識がはっきりしてきた俺の目に映りこんだのは、金髪の外国美人。顔を赤らめ、息を乱し、涙を流している。


 俺生きてるの?あんな勢いで吹き飛ばされたのに。てか、この人顔でかくね。巨人レベルなんだが。


 ふざけていると金髪美人はこちらに手を伸ばしてきた。攻撃されると思い、反撃の為に手を伸ばす。しかし、届くことはなかった。触れることさえ出来なかった。俺の手は、異様に小さくて短かったのだ。


「奥様!おめでとうございます!男の子です」


 当たり前だろ。顔と股みれば男だってわかるわ。まてよ、「おめでとうございます!」?

 どういうことだ。疑問を感じていると、先程の金髪美人に抱き抱えられた。


「ほんとに良かった。ありがとう……無事に生まれてきてくれて。……ルーベル、いつまで泣いてるのよ。あなたの息子よ、抱いてあげて」


 声が掛けられた先に目を向けると、そこには声を殺して泣いてる髭を生やしたイケおじがいた。


 おいおい、なんでおっさんが号泣してんだ。美人ならともかく、おっさんの涙なんてお断りだよ。


「うっ·····。ありがどぉぉぉ、ルーナァ!こんなに元気な息子を産んでくれでぇぇぇ!!!」


 泣き叫びながらイケおじが近づいてくる。手を広げ、俺たちをまとめてハグしてきた。それと同時に拍手が聞こえてくる。周りを見るとメイドであろう女性たちが辺りを囲っていた。


 これはもしかして。


 ここまで来ればバカな俺でも気づく。

 どうやら俺は生まれ変わったらしい。手が小さく短かったのは胎児だったからだろう。


 てか、このルーベルって人髭剃れよ!チクチクして痛いんだけど!てか抱いてねぇし!ハグだし!スリスリしてくんなよ!!生まれたてだぞ!!




 ◇◇◇◇




 転生してから一週間。周囲の人が日本語で会話していることが疑問だったが、深く考えず新しい言語を覚えなくていいと考えるようにした。転生した場所がどこかは分からないが、どうやら俺はそこそこ位の高い家に生まれたらしい。多くのメイドやら執事やらが俺のベビーベッドの周りで待機しているからだ。


 俺がおぎゃーーと泣けばすぐに対応してくる。いい気分すぎる。王様になったみたいだ。沢山泣きまくってやろ。


 俺が抱っこされて唯一静かになるのは母親ともう一人だけだ。抱っこをするのはメイドさんと決まっているのか、いつもあやすのはこの黒髪美人のメイドさんだ。

 ガチで可愛いぞこの人。ファッション雑誌の表紙にいるレベル。心は二十四歳の俺でも見惚れて口が動かない。

 転生後のまみーは可愛い系の美人だが、このメイドさんは清楚系で凛々しい雰囲気の美人だ。抱き抱えられた時は隙あり!とお胸をもみもみするのだが、この美人俺が何をしても


「ふふ。可愛いお坊ちゃまですね」


 としか言わない。やはり幼児は最強だ。クソ童貞が何をしても罪に問われない。前世では幼児プレイなんて一生縁はないだろうと思っていたが、まさか転生してから経験するとは。人生損してたな。幸せで昇天しそうだ。


 こんなことをしているからか、俺の捻くれた考え方は緩和しつつあった。全てがどうでいいと思っていたが、転生してからは全てが輝いて見える。まぁ、部屋一面が煌びやかすぎるせいもあるだろうが。


 しかし、人の本性というのはそう簡単に変わらないらしく、黒髪メイドちゃんが対応してない日の俺はすこぶるクソな思考だ。執事のおっさんが対応してきた時は、


(気安く触るなよクソ野郎。俺の体に触れていいのはマミーと黒髪メイドちゃんだけだ!あの子はどこ!?おぎゃーーー!!!)


 見るに堪えない光景。いや、赤ん坊だから普通の光景か。中身が24歳のクソ童貞だと思って見ると苦しいものだ。前世で成人していたとは到底思えないクソ思考。


 夜になると母のルーナ、父のルーベルと共に川の字で寝ている。母のルーナは俺に本の読み聞かせを、父のルーベルは俺に将来何をさせるかを母に話している。


 聞かされるのは昔の英雄の話。邪龍を討ち、世界に平和をもたらした英雄ローゼの冒険譚。正直昔の英雄なんて興味が無い。しかし、この英雄の名前どこかで聞いたことあるな。小さい脳みそをフル回転してた俺を他所に、ルーベルが


「やはり剣技を学ばせるべきだな。我が息子にはローゼのような人間になって欲しい」


 と言い始めた。剣技なんて痛いだけだろ。絶対やりたくないわ。俺はこのまま生涯メイドさんたちと戯れて過ごしたいんだよ。


「そうね。うちの子はきっと優しくて強い子になるわ。だって私たちの息子だもの」


 ルーナがそう言うと「ルーナ!!」とルーベルがハグをしてキスをする。おいおい、なんで子供の目の前でいちゃいちゃしやがる。親のいちゃいちゃほど見ていて苦しいものはないぞ。この前までは俺の名前を何にするかで夜通し喧嘩していたのにこの代わり様。凄まじい。



 ◇



「絶対名前はレイクよ!昔から息子を持ったらこの名前って決めてたの!」

「何言ってるんだ!レイクじゃ少しインパクトが足りないように俺は思うぞ!ルベルトにすべきだ!男らしさがあって強そうな名前だからな」


 耳が痛い。この会話いつまで続くんだ。同じ問答を何度も繰り返している。てか、赤子の前で喧嘩すんなよな。寝てるふりしてるけどホントの赤子だったら泣き出してるぞ。


「はぁ。決まりそうにないな。このままでは朝が来てしまいそうだ。一旦ミレイナを呼ぼう。これ以上長引いても何もいいことはない」

「そうね。熱が入りすぎていたわ。落ち着きも兼ねて呼びましょう」


 ミレイナ?誰だそれ。疑念を感じている内にルーベルがベルを鳴らした。すると、黒髪美人のあのメイドさんがやってきた。


 あの子ミレイナっていうの!?今までお世話になっていたのに知らなかった。

 ルーベルがミレイナに事の次第を話すと、ミレイナさんは焦りながら「私がお坊ちゃまの命名に口をお出ししてもよろしいのでしょうか?」と言っていた。


 そりゃそうだ。自分が仕えている上司の息子の命名に関与するなんて怖いよな。


「構わない。俺とルーナでは会話が長引く一方だ」

「そうよ。文句なんて言わないわ。遠慮なくミレイナの意見を教えて」


 俺もミレイナさんの意見なら大歓迎だ。お世話されている感謝もあるし。それはそうと、うちの両親は使用人とフラットな関係を築きたいのだろうか。今までを振り返ってみても使用人と仲睦まじく話している場面が多い。昔の人はこんな感じだったのか?


「でしたら、ルーベル様とルーナ様の意見・お名前を合わせて、『ルーク』なんてどうでしょうか?」


 なんか響きいいな。頭文字が家族で一緒なら一体感も出るしさすがミレイナさんだ。


「いいわ!!とても良いわ!!」

「あぁ。非常に良い名前だ。俺たちの意見と名前を合わせたというのが更にいい」


 どうやら俺の両親も納得したらしい。安堵しているミレイナさんを他所に、「さっきはごめんね、あなた」「あぁ。俺も悪かったよ」と言って二人はハグしている。やっと気持ちよく寝れそうだ。ありがとう、ミレイナさん。おんぶしてください、ミレイナさん。

 こうして俺の名前は決まり、平和な夜が訪れた。





 ◇◇◇◇



 賑やかな日々を過ごしながら赤ちゃん生活を堪能していると、気づけば俺は五歳になっていた。楽しい時間は早いようで、前世では一ヶ月が一年のように遅く感じていたのが嘘みたいだ。


 既に喋れるようになり、三歳では普通に走れるようにもなった。初めて喋った時のルーナは「うちの子は天才だわ!!可愛くて天才って完璧じゃない!」と親バカが発動していた。

 初めて歩いた時のルーベルは「そろそろ剣術指導ができそうだな」とボソッと言っていた。

 いや無理だろ。やっと歩けたんやぞ。成長をもっと待てよ。父親は筋肉バカが発動していた。



 俺のクソ日課はどうなったのかと気になっている人少なからずはいるだろう。俺が5歳になったということは、ミレイナさんへのスケベが出来なくなったのでは、と。普段は俺の世話をしてくれているが前みたいに抱っこはしてくれないのだ。だがしかし、まだ五歳。赤ちゃんプレイは出来ずとも、小さい子供であることに変わりは無い。つまり、お風呂は一緒に入れるのだ。


「ミレイナは好きな人とか恋人とかいないの?」


 俺は子供の立場を利用してミレイナさんから情報を聞き出す。お風呂に入る時はミレイナさんや、ルーナと共に入っている。今日はルーナがおらず、ミレイナと二人きりだ。


「私にそんな人はおりませんよ、ルーク様。」


 俺の頭を洗いながらミレイナはそう答えた。

 ほうほう、なるほどなるほど。


「……っしゃ。」


「なにかおっしゃいましたか?」


「なんでもないよ」


 こんなに綺麗なのになんで恋人すらいないんだ。世も末だな。この世界は見る目がない男が多いのか?そう思うとルベルトは見る目があるということか。やはりパピーはすごい。

 

「ミレイナ、これからも僕のそばにいてくれる?」


「……っ。はい!私はいつもあなたの傍におります」


 ミレイナは後ろから俺をハグした。あの、ミレイナさん。当たっております。童貞には刺激が強すぎます。


「あっ……」


 鼻血が垂れた。それを見たミレイナがクスッと笑う。


 俺ダサすぎだろ。

最後まで見ていただきありがとうございます。なるべく詳しく、分かりやすいようにと文を書いていますが、かえって読みづらいなんて部分が多々あると思います。そこはご愛嬌ということでよろしくお願いします。


0話、一話を一部変更させてもらいました。誤字脱字や文法がおかしいと感じた部分や、セリフがこの後の展開に繋がらないなと思った文を変更させてもらいました。気になる方はぜひ再読してみてください。

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