2話
投稿頻度が不定期ですいません。楽しみにしている人は少ないと思いますが、近いうちに三話を投稿する予定なのでぜひ時間がある方はお読みください。
俺はミレイナさんたちが運んでくれた料理を堪能していた。やっぱりここの料理はうまいな。前世ではほぼカップ麺しか食べていなかったからか全てが美味しく感じる。まぁ、美人が運んでくれたという付加価値もあるんだろうが。
「ルーク。お前には剣術、学業、ダンスの指導をこれから受けてもらう」
くだらないことを考えている俺にいつもより厳かな雰囲気を出してルーベルが話し始めた。
「どういうことですか?お父様」
俺はそう丁寧な口調で質問をした。前世の口調で話せばなんて言われるかわからないからな。言葉遣いは普段から気をつけるようにしている。
「お前はもう五歳になったからな。十歳から通う『学院』に向けて準備をする時期になったということだ」
『学院』か。貴族の子供は十歳になると王都にある学校に通わされるらしい。それまでに必要な知識や剣術、ダンスが踊れるようにしていなければならないのだとルーベルが説明してくれた。
「時間って早いものね。もうルークがそんな時期なんて悲しいわ。こうやって子供は巣立っていくのね……」
いや、まだ居なくならないですよお母様。そもそも俺は学校なんて行きたくない!親の脛をかじりながらミレイナさんたちとお風呂に入れればそれでいいんだよ。それに剣術だと!?痛いのは絶対やりたくないんだが。
「剣術ですか……」
「剣術は俺が直々に指導してやろう。安心しろ。同じ歳の中で一番強くなれるだろう」
そこを心配してる訳じゃないし、それが一番ヤバイ気がする。学業はいいとして、問題はダンスと剣術だな。前世でもダンスなんて踊ったことないぞ。唯一踊れるのはソーラン節だけ。終わってるな。
「ルーク。ダンスだけはしっかりやったほうがいいわよ。婚約者が出来ないなんてことになってしまうわ」
俺の後ろまで歩いてきたルーナが頭を撫でながらそう言ってくる。
「婚約者が出来ないとはどういうことですか?母上」
「八歳になると王都の舞踏会に呼ばれるようになるの。そこでダンスが上手く踊れなければ女性に魅力を感じて貰えない。つまり、婚約の申し込みが来ないってことよ」
まじかよ。ダンスでそこまで決まるのか。昔の貴族も大変なもんだ。経験のない俺は死にものぐるいで練習するしかないか。
「なるほど。お父様、ダンスの練習は他より多く行いましょう。僕の人生が懸かってるので」
前世では散々な目に遭ったんだ。今世では絶対まともな女性と添い遂げてみせる!
「そこまで張り詰め無くても大丈夫だ。舞踏会は何回も開催される。例えミスをしてもやり直すチャンスはあるぞ。」
「第一印象が大事なんですよ、お父様」
既に相手がいるルーベルからしてみればそうだろう。女性となんて家のメイドさんたちとルーナしか喋ったことがないんだ。それに、女性の間では情報の伝達が早い。俺からしてみれば、危機感を感じずにはいられない。
「どこでそんなことを覚えたんだ……」
ため息を吐いて頭を抱えるルーベルを他所に、俺は闘志をメラメラと燃やす。将来添い遂げるであろう自分のパートナーを想像して。その様子を見ていたルーナとミレイナメイドたちは微笑みながらその場を眺めていた。
◇◇◇◇
学院に向けた指導が始まり、俺の日常は一気に変わった。今までルーナやミレイナさんたちとお茶会をしたり、絵本を読んでもらったりして過ごしていた朝はルーベルからの剣術指導へと変わった。
「いいかルーク。剣術において基本となる型は重要、覚えておく必要がある。体が未成熟のお前には模擬戦や試合稽古は早いからな。今は型を覚えるのが先決だ」
俺とルーベルは家にある訓練場のような場所で向かい合っていた。家にこんな所があったのかと辺りを見回している俺に、待機しているミレイナさんが一回り小さい木刀を俺に渡してきた。
子供用の木刀か。ルーベルが持っている木刀は俺にはまだ持てそうにないし当然か。
「俺が今から型を見せる。それに倣ってお前も木刀を振ってみろ」
ルーベルは木刀を両手で握り中段の構えを取った後、剣を頭上まで上げ、垂直に振り下ろした。下ろした木刀を右斜めに振り上げ、左一直線に空を切った。
「これが最初の型だ。とりあえず真似てやってみなさい」
剣術指導の時はすごい真面目になるな。夫婦バカをやっている時とは大違いだ。
俺はルーベルを真似て木刀を動かす。初めて木刀を持ったからか、剣筋はブレブレ。振った時の音は『ヒョロッ』、ルーベルは『ビュンッ』。効果音仕事しろよ。
「変に力を入れすぎてるな。力み過ぎないことを意識してもう一度やってみろ」
力み過ぎない、力み過ぎない。心の中で唱えながら木刀を動かして型を行う。すると、先程とは違い、剣筋は良くなり効果音は『ヒョロッ』から『ヒュンッ』に変わった。
おぉー!自分では何が原因なのか分からなかったが、誰かの指摘でこんなにも変わるもんなのか。ルーベルってちゃんと指導できたんだな、普段の筋肉バカからは想像がつかない。
「さっきより格段に良くなったな、最初の型はもう十分だろう。何度もやればさらに良くなる。さぁ次の型に入るぞ、まだまだ覚えるべき型はたくさんある。」
ルーベルが凄く張り切っている。やっと剣術の指導ができたからだろう。剣術なんてお断りだと思っていたが、案外悪くないかもしれない。
型は進むのに比例して難易度が増していった。結局3個ほどしか型を覚えられなかったが、最初にしては上々らしく、ルーベルの機嫌は良かった。
「筋がいいな。成長したら良い訓練相手になりそうだ。早く手合わせがしたいものだな」
いやいや、まだ型を覚えただけでしょ。無理あるて。厳かな雰囲気が徐々に崩れて筋肉バカが出始めてますよお父様。
◇
午前の剣術指導が終わり、昼食を済ませた後はダンスの指導が始まる。講師はマミーのルーナだ。
「いい、ルーク。ダンスはただ踊ればいいだけじゃないの。相手を尊重して思いやることが大事よ。とりあえずこれだけは頭に入れといてね。踊ってみればわかると思うし、簡単な曲から一緒にやってみましょう」
ルーナがそう言うとミレイナさんが待機していた演奏会の人が演奏を始める。その演奏に合わせてルーナが動き始める。
俺はルーナのペースに動きを合わせるがまったく上手くいかない。足がもつれて転びそうになる場面が何度もあり酷い有様だ。何とか最後まで踊ったが(踊れていたとは言えない)、かなり惨めな結果だった。
「ダンス、難しすぎませんか?お母様の足を何度も踏んでしまいましたし。僕には踊れそうにありません」
「うーん。ルークは一度足を踏んでしまってから足元を見すぎね。それに音楽のリズムを上手く掴めていないわ。他にもあるけれど今はこれらを改善すべきね」
その後何度もルーナと踊ったが一向に上手くいかない。剣術とは違い言われた事を意識していても足が上手く動かず、相変わらずルーナの足を踏んでしまう。もう終わりの時間が近い。
「ごめんなさいお母様。僕のせいで足が赤くなっています。僕にダンスは向いていなかったようです」
俺は顔を伏せてルーナに謝罪する。
こんな調子で舞踏会の時に踊れるのだろうか。もし相手の足を踏んでしまったら、もし俺のせいで転ばせてしまったら。
クソッ、ネガティブな思考しか出来なくなってる。ルーナに怪我ばかりさせているし、こんなんじゃ婚約者なんて夢のまた夢だ。
そんな俺にルーナは笑顔で抱きついてきた。「よしよし」と頭を撫でながら。
「最初に全部上手く出来る子なんてそうそう居ないわ。失敗するなんて当たり前よ。それにルークに足を踏まれたってへっちゃら。息子の成長を直に見られることが親として凄く嬉しいことなの」
今まで俺はルーナやルーベルたちを自分の親としてちゃんと見れていなかった。どこか他人事のように感じていた。しかし、この瞬間、俺はこの人達の子供であり愛されているのだと改めて実感した。
「……ごめんなさい、お母様。ありがとうございます。僕、上手く踊れるように頑張ります」
「えぇ。ルークが上手く踊れるようになるまでずっと付き合うわ」
婚約者以前に俺はこの人の為に、母親であるルーナに喜んでもらう為にダンスを上手くなろうと決意した。
ここまで読んでいただきありがとうございます。一話の後書きや前書きでも書きましたが0話と一話の内容を一部変更しました。気になる方はぜひ再読ください




