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0話

※本作品はフィクションです。

実在する人物・団体・作品等とは関係ありません。

作中の価値観・発言は登場人物個人のものであり、特定対象への攻撃や批判を目的としたものではありません。


この0話は主人公の転生前の話です。主人公がなぜクソだと感じたのかを鮮明に理解できる話となっていますが、一話から読んでいただいても問題ないと思います。興味が湧いたら是非0話も読んでいただきたいです。

  目の前にあるのはゲーム画面を写したモニター。数え切れないほど見たことのある画面だ。何度もキーボードを叩き、マウスを動かし、画面上のキャラクターを操作する。

  あと何回やればこの作業を終えられるんだ、そう思いながらも続ける。数時間後、映し出された画面は『ゲームクリア!ハッピーエンド!』だ。


「クソが、このゲーム作ったやつどういう価値観してるんだよ」


  俺はそう愚痴る。現在二十四歳の童貞クソニート。俺がいる場所は六畳半の一部屋。実家の一角にいる。

  とある理由で高校を自主退学し、親の脛をかじりつつ生を謳歌している。


  今イラつきながらプレイしてるゲームはありきたりな乙女ゲーム。既に何度もクリア済みだが、それでもやり続けているのには理由がある。



 俺の推しのためだ。



  俺の推しはゲームの序盤で女主人公を蔑み、本来結婚する予定であった第一王子に断罪されて死亡するキャラだ。なんでそんなキャラを好きになったかって?言ってることが至極真っ当だからだ。

 主人公が婚約者を誑かしていると気づいた俺の推しは


「婚約者がいると分かっていてなぜそのお方に色目を使ったのかしら?やっていることが盛った豚と同じね。目障りだから消えてくれない?」


 と主人公に言い放った。

  まぁ、確かに言葉は厳しいと俺も思う。だが、普通に考えて人の恋人に手を出すか?ゲーム上では良いように演出してるけど、普通に考えたらやばいからな主人公。

  しかも更にやばいのは第一王子だ。社交界で浮気が明らかになった時の言い訳がこれだからな。


「いつも態度の冷たい君と違って彼女は優しいんだ。死んだ母のように優しく包み込んでくれる。俺はこの子こそが運命の相手なんだと感じたよ」


  頭いかれてるでしょ。顔が良いからってなんでも許されるわけじゃないんだよ。亡くなった母親を言い訳に正当化しようとしてるのがさらに腹立つ。

  そもそも、俺の推しは感情の表現が苦手なだけなんだ。『ツンデレ』なだけなんだよ。第一王子見る目無さすぎだろ。


 今は俺一人で攻略しているが、 以前まではこのゲームをプレイしてる数少ない人達の間で形成されたコミュニティがあった。そこでは皆でこのキャラを救えるルートがないのか、と毎日のように模索していた。

  しかし、どれだけ工夫しても、どれだけプレイしても処刑から逃れられない。次第に諦める人が多くなり、残ったのはニートの俺だけ。どうやらこのゲームキャラのために何年も時間を使うほど皆は暇じゃないらしい。

  当たり前だよな。俺はずっとニートで暇、皆は社会人で忙しい。


  一人で黙々と画面を動かす日々がここ最近続いていた。最後までプレイすれば何か分かるかもしれない、推しキャラを救う手掛かりが隠されている回想があるかもしれない。そう信じてラストまで全ての分岐、エピソードを見てきた。



 だが、それでも推しは救えなかった。



  公式に質問文を送っても返信は来ない。あまり人気のゲームでなかったことから公式サイトは消えてしまった。残ったのはダウンロードしたこのゲームだけ。


「はぁ、疲れた。気分転換にコンビニでも行くか」


  外へ出るため上着を着る。俺は決して外へ出ることが嫌なわけじゃない。あいつらに会うのが嫌なんだ。もう何年も経ってるし、会うこともないだろ。そう言い訳をしながら親の目を盗んで外へ出る。親が外に出ると知ったら


「外じゃなく、社会に出ろ」


 と面白くもない事をしつこく言ってくるので忍者のように家を出た。





◇◇◇◇


  コンビニに向けて歩き始めた。歩いていると高校の頃の記憶が蘇る。またか、登校してた道を歩くといつもこうだ。そう思いながら人も街灯も少ない住宅路を進む。


  俺が高校を自主退学したのには理由がある。親友でもあり、恋人でもあった幼なじみに浮気されたからだ。それで退学?と思う奴もいるだろう。そりゃ、これだけなら俺だって病むだけで退学しなかったよ。続きがあるんだ。


  なんと浮気された上に、学年L〇NEであたかも俺が浮気したかのように偽装したチャットを送りつけてきやがった。

  加えて、今まで暴力をされていた、性的な行為を強要されてきたという嘘の供述のおまけ付き。

  そんな悲劇のヒロインを救うために浮気相手の男が彼女の相談に乗り、俺という悪役から助けるために立ち上がった、と。なぜだか別れている設定になっており、そんな彼に惹かれて付き合ったという何とも涙を禁じ得ないストーリーを作り上げてきやがったのだ。


  次の日に起こった俺の出来事は簡潔にするとこうだ。学校登校すると無視される、皆を信じるがトイレで親友と思っていた男友達共の愚痴を聞き挫折、学校行きたくねぇ、不登校開始。

  クソだよ、ほんとに。気持ちを抑えるために自嘲気味に自分の人生を振り返ったが、嫌な気分になるだけだった。


 ……早くコンビニに行こう。


  そう思って勢いよく走り道に出る。すると、右から大きな光が現れた。



 キキィーーーー!!!!!!!



  ガラにもなく走ったせいだな。そう思った瞬間、俺は勢いよく吹き飛んだ。



 ガシャン!!!!!!!!



  そこで、俺のクソみたいな人生は終わった。

「おい!嘘だろ!勘弁してくれよぉぉ!」そう叫んだ運転手の嘆きは俺に届くことはなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。前がきでも書きましたが、この作品はフィクションです。作中の発言は登場人物ならではの言葉です。ここからスタートするので、出来れば温かい目で見守ってください。感想を書いて貰えると嬉しいです。

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