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第30話 女王様のこれから

 瑠璃の女王即位のパレードは国を上げて盛大に行われ三日三晩行われた。

 王家の血筋が王座に返り咲いたことを祝い、国民誰もがお祭り騒ぎと浮かれていた。

 その豪華さは近隣諸国に伝わるほどのもので、多くの観光客でにぎわった。

 お祭り騒ぎも終え、落ち着いた玉座の間には、瑠璃と恭平がいた。人気はほとんどなく、2人の空間ともいえる場所になっていた。

 玉座の間も例に漏れず無駄に高い天井、入り口までは50mもの距離があり、どんな祭事を行おうとスペースが余るほど大きい。騎士団が全員集うには全く問題がない。

 階段を上った先には、金の装飾に赤いベルベットで仕立て上げられた玉座が鎮座している。

 瑠璃は玉座に腰かけ、その隣には恭平が立っている。


「はぁ……即位するのも楽じゃないわね」


 肩の凝りをほぐすように、瑠璃が肩を回した。

 そんな気楽な瑠璃に恭平はつい、苦言を口にしてしまう。


「お前な……ちょっと派手にやり過ぎたんじゃないか? この国にそんな金があったのかよ……」


 金に物を言わせたパレードは明らかにやり過ぎで、女王という立場ではない恭平でも心配になるほどだった。

 今は浮かれた国民も正気に戻れば、やり過ぎだと気づくだろう。


「もう国庫は空に近いわ」

「おいおい……大丈夫じゃないじゃないか」


 恭平は辟易するが、瑠璃の瞳に迷いはなかった。


「即位は豪華にした方がいいのよ。国民に、諸外国に、女王がどれだけの権力を持っているか見せつける必要があったの。ここで舐められれば、力のない国だと軽んじられる。そうなったら、外交はこちらの不利になる。交渉は最低でも同等、もしくは有利であるべきよ。最初から下手に見られるのは絶対にダメ」


 唐突に女王様らしいことを……まるで、外交でもしたかのように語る瑠璃に恭平は目を丸くした。

 少なくとも即位する前にはこんな言葉は出てこなかっただろう。


「それに、お金のことなら大丈夫よ。ベリル大臣が上手くやってくれるでしょ」

「あそこまで言って人頼みかよ……」

「この国をここまで育ててくれた元女王代理なら任せられるわ」


 他人ごとのように笑う瑠璃に恭平が冷や汗を流した。


「そいいう話は本人のいない場所でしな!」


 玉座へ続く階段の横でベリルが腕組みをしてイライラとした様子で立っていた。


「そんなところにいるなんて知らなかったわ」

「忌々しい……そこにいてわからないわけがないだろ! よくもいけしゃあしゃあとそんなことが言えたものだ!」


 怒りに満ちた黒い瞳を向けるが、瑠璃は涼し気な顔でまるで気にしていない。むしろ、ご満悦といった風にだった。


「そういう訳だから、あとはよろしくね」

「誰が貴様の言う通りにするか! 私には関係ない!」


 肩を怒らせながらベリルは玉座から離れていった。そんな様子に恭平は息を飲んで口を噤んでいた。

 ベリルの姿が見えなくなったころ、深く溜息を吐いた。


「おい、本当に大丈夫なのかよ。すぐに謀反を起こされるぞ」


 つい、耐えられなくなり恭平は言葉を口にしていた。


「問題ないわ。大臣はこちらの思い通りに行くことを嫌っているとはいえ、自分の暮らしがかかってるから頑張って働いてくれるはずよ。それに、ああいうタイプは反発するぐらいがちょうどいいのよ」


 問題大ありな言葉にまたも恭平は冷や汗を流す。

 これほど口が悪かったのかと、思わさせられるほどだ。


「安心してください。ラピスラズリ陛下には私が女王のイロハを教えてあります」


 恭平と瑠璃の間にエクレールが現れる。服装は洋服からドレスへと変わっているが、恭平の知るエクレールに違いなかった。


「お前、瑠璃が女王になるのに反対してただろ。いいのか?」

「女王になられるのなら、一人前の女王になってもらいます。半端なことは許しません」


 エクレールの澄ました顔を見ながら、もう言うことはないと、恭平は口を閉じた。

 その言葉に反応したのは、瑠璃の方だった。


「ねぇ、お母さん――先代の女王はどんなだった?」

「先代はお世辞にも良き女王とは言い難いです。国民を第一とした政策を取っておりましたが、貧しい国であったことは違いありません。それが国民にとって幸せだったのか、私にはわかりかねます」


 瑠璃は「そう」とぽつり言葉を漏らした。

 そう言った後、瑠璃は不安そうに恭平を見つめた。


「私がどんな女王になっても、恭平は私を助けてくれるんでしょ?」

「ああ、誓うよ。剣聖ライトニングはサンステイの女王を助け、守ってやるってな」


 取り出した魔剣を掲げて恭平は誓った。

 それに満足したのか、瑠璃の顔が綻んだように見えた。


「よかった。それを聞けて安心したわ」


 そう言うと、瑠璃は立ち上がり、身体を伸ばした。


「これからは学生と女王の二足の草鞋わらじでやってかないとね。まつりごともいつまでもベリルに任せっぱなしにできないし、頑張らないと」

「は?」


 瑠璃の言葉に恭平は素っ頓狂な声を出してしまう。

 特に学生という言葉に反応してしまっていた。


「学校とか、もういいだろ。お前は女王、俺は剣聖やってればいいだろ」

「何言ってるのよ。何事もけじめが大切でしょ。高校くらい卒業しておきたいじゃない。それとも、高校中退のまま剣聖を名乗る気なの?」


 瑠璃は振り返ると、恭平に笑顔を見せてきた。

 瑠璃の言葉に、恭平は反論できずに口を閉ざしてしまう。


「それと、テストでは私と恭平でワンツーフィニッシュ決めるから。私が1位でそっちが2位。頑張ってよね」


 恭平は頭を掻いて苦笑いを浮かべた。

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