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異世界指令「転生して歴史を改変せよ」  作者: 小津敬一郎
第一章 魔女騎士ジェニーを殺害せよ
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製鉄都市の感謝祭

 鉄鉱石だ!鉄鉱石がやってきたぞ!

 門番は巨大な笛をブオーブオーと鳴らす。

 門は開かれる。笛を鳴らす門番を先頭にした大行列。都市は大いに活気付く。


 これからおこるであろう商談には、俺は参加しない。

 商人たちに何度も何度も頭を下げ、別れる。


 さあ。製鉄都市、ギュスバレンにやってきた。

 その都市の中央には、巨大な煙突。

 周囲をぐるりと囲む、城下町にも引けをとらない街並み。

 街のあちこちに、「鋼鉄の重みは命の重み」と書かれた張り紙。


 まず一つ思った事、空気が汚い。中央の煙突からはモクモクと黒煙立ち昇る。

 次に思った事、道行く人が垢抜けている。

 イナカモンで悪かったな。俺はウィンクスノウ鉱場村出身だ。


「ウィンクスノウ?わざわざそんなところから、はるばるようこそ。」


 現地の人と思われる紳士に道を尋ねる。


「それじゃあ、この都市の事も知らない?教えてあげようか。」


 移動中に散々商人たちから聞いたが、折角だし厚意に甘える事に。


 この都市は、最初は中央の製鉄所と、そこで働く人の居住村しかなかったと。

 鋼鉄を重視する国策によって守られた村。労働者の高い給金を目当てに商人が流入。

 そしてその物資に釣られてどんどん居住地が広くなった。

 そして極めつけは農業。

 昔ながらの技術で鉄を精錬しているところもあるそう。その際に大量に産出される木炭の灰。

 これが良質な肥料となり、街の北側にあっという間に広がった農村地帯。

 その農村の食料を目当てに、人の流れは更に活発になり……


 この国を観光する際の、「最後の地」として栄える事になったという。

 ウィンクスノウ鉱場村?そんなものは無い。と紳士は笑う。

 無理もない、馬車で一ヶ月。ここの気候区分は温帯だが、ウィンクスノウ鉱場村は、寒帯だ。


 紳士に礼を言い、別れる。

 さて、次の街に行くための旅費を稼がなくては。

 などと考え事をしながら歩いていると。


 ドンッ


 やわらかい物とぶつかった。


「ちょっと、ちゃんと前を向いて歩きなさい。」


 と、二十歳前後だろうか、美人の女性だ。


「ごめんなさい。」


 と、その女性の目を見て謝罪する。


 それだけのハズだよな?なんで、その女性と宿屋の一室にいるんだ?

 女性は一目で俺のことが気に入り、半ば強引に連れて行かれた先は宿屋。

 火遊びは開始される。


 終わった後、女性と俺は会話を交わす。


「俺、中央都市に行きたいんだ。」


 と夢を語る。そうすると女性は……


「少ないけど、持って行って。」


 と俺に何枚かの銅貨を渡してくる。

 ちょっと待て。俺が、金を受け取る側だと?


 なるほど……魅力(チャーム)S、神格。確かに俺はその選択をしたが……

 これほどまでとは思わず、かなり引いた。


「今日はもう暗いから、ここで一泊しましょう。」


 と。そうか、まだ足りないか。火遊びは再開される。

 この調子で千人斬りする頃には製鉄都市から鍛冶屋街までの旅費を賄えるな。

 などと皮算用。しかしそれでは三年はかかる。

 別の金策を考えなければ。


 翌日。鉄鉱石が今年も無事に取引されたと号外が伝える。

 ギュスバレン=ウィンクスノウ感謝祭が、はじまる。


 この感謝祭……利用しない手はない。

 屋台がおいしそうな料理を並べているが、無駄金は使えない。

 でもあのベーコンポテト……ベーコンポテト……よだれが出る。


「ひとつください。」


 欲望には勝てなかった。

 銅貨を一枚渡す。店のおばちゃんはおまけでみっつくれた。

 なるほど、魅力(チャーム)S、神格。こういうところで得をしていくのか。


 人だかりで思うように前に進めない。

 騒がしくもゆったりとした人の流れに乗りながら一歩一歩先へ進む。

 祭りなら……一般参加型の催し物がある、ハズだ。

 人の流れが止まる。その先には……!


「さあ、今年も感謝祭の季節がやってきーたーぜ!これより喉自慢大会を開始するー!」


 喉自慢大会だと!歌声も魅力(チャーム)の管轄なのだろうか?

 優勝商品は、あのリュートか。準優勝……金貨10枚。

 よし、準優勝を狙おう。旅費が一発で賄える。


 誰でも参加できるようで、俺も飛び入りで参加する。

 歌うのは……鉱場村に代々伝わる、民謡だ。


「それでは……なんと!あのウィンクスノウからの挑戦者だ!」


 歌い始めると、それまで騒がしかった聴衆が、シーンと静まり返る。

 あまりにもヘタクソで絶句しているのだろうか?

 歌が終わると聴衆は全員、声を張り上げる。


『優勝だ!優勝だ!ウィンクスノウ万歳!万歳!』


 おいちょっと待て。華麗に準優勝の金貨10枚を掻っ攫おうと狙っていたのに。


「あの小さな鉱場村に、とんでもない逸材が眠っていた!もう君が優勝だ!おめでとう!」


 優勝商品のリュートを受け取った。魅力(チャーム)S、恐るべし。


『ありがとう!ウィンクスノウ!ありがとう!ありがとう!』


 そのリュートを担いで、祭りとは関係ない方向に向かう。

 あの雑踏、少しだけ気分が悪くなったからだ。

 今夜の宿は、どうしようか、などと考える。


 路地裏。石の段に座って先ほど獲得したリュートを見つめる。

 楽器のことはよくわからないが、このリュート。素人目でも見事な物だとわかる。

 恐らく売却すれば……準優勝の金貨10枚どころの騒ぎではなさそうだ。


 そんな事を考えていると、目の前に……六歳くらいだろうか、小さな少年が立っていた。

 俺と同じで、ボロい服を着ているが、目がキラキラと輝いている。


「お兄ちゃん、吟遊詩人?歌ってみせて!」


 吟遊……詩人?

 このボロい服、旅人っぽく見えなくもない。そしてこの見事なリュート。

 そうか。俺は今、さすらいの吟遊詩人なのか。

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