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捨てられOL、ダンジョン入って牙を研ぐ  作者: 夢乃舞家


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23/30

契約と対価

 草原に降り立った三人は辺りを見回し、もう一度ゲートを振り返る。


「……本物の、ゲートですね」


 放心したような声で、灯里さんが呟いた。

 涼子さんは、私の隣に並ぶと静かに口を開いた。


「もうわかってると思うけど、このゲートをワルキューレが独占する。それが今回、あなた達を呼んだ理由よ」


 涼子さんは、これまでの経緯を順を追って説明していった。

 私の家に突然ゲートが現れたこと。このゲートのことを知るのは、この場にいる人だけということ。それを涼子さんが知ったのも、ついさっきだったということ。

 話を聞き終えても、三人はしばらく黙ったままだった。


「……たしかに、あれだけ慎重を期してたわけだ」


 茜さんが、こめかみを押さえながら言った。


「にわかには信じがたいですね……」

「でも、目の前にこうして証拠があるんですから、信じるしかないでしょう」


 灯里さんと小春さんが、冷静な声でそう言うと、茜さんも渋々といった様子で頷いた。


「……たしかにな。この目で見ちまったら、疑いようもない」

「それでね、この家の扱いについては、もう玲奈ちゃんと私で話がついてるわ」


 涼子さんは、私の方をちらりと見てから続けた。


「玲奈ちゃんは、このゲートを同盟のために使わせてくれると言っている。でも、ここは玲奈ちゃんにとって大切な場所だということは変わらない。私はできる限り配慮をしてあげたいと思ってる。それを踏まえた運用を考えていきたいの」


 その言葉に、少し胸が温かくなった。


「わかりました。では、どこまで同盟として手を出せるのかは、玲奈さんと協議をするとして」


 小春さんが、いつものように淡々と切り出した。


「まず、玲奈さんとの契約については、この後すぐに準備しておきます。さらに周辺への根回しもしなければなりませんね。おそらく、我々がここに出入りをすれば、他同盟に怪しまれます。ですので、現在涼子さんが進めている支部の設立の件ですが、玲奈さんのご実家を同盟支部として使うことにしましょう。そうすれば合法的に守りを固めやすくなりますし、行動もしやすくなります。それから、早急に行わなければならないのは、この周辺の探索です。これは涼子さんと茜さんにお願いしたいと思います。主に地図の作成ですね」

「わかった」

「ええ、任せて」


 二人が頷くのを確認して、小春さんは私の方を見た。


「ちなみに、この近くに別のゲートがあるかどうかわかりますか?別のゲートがあれば、そちらにも対応しなければなりませんので」


 それを聞いて、私は涼子さんにもダンジョンで会った三人組のことを伝えるのを忘れていたことを思い出した。


「以前、三人組の男性探索者の方と会ったことがあります。ここから数時間歩いた所にあるゲートから来たとおっしゃってはいましたが、そこまで私は行ったことはないです」

「そうですか。その方たちの個人情報など何かおっしゃっていましたか?」

「確か……関東のゲートから来たと言ってました。詳しい場所は聞いていませんが」

「ほう、関東ですか。……なるほど、それはいいですね」


 私の話を聞いて、小春さんは頷きながら何かを考え始めたかと思えば、茜さんが私に質問をしてきた。


「玲奈、そいつらのゲートがダンジョンのどこにあるのか何も聞いていないのか?」

「えっと、あっちの方にある。とだけ聞いていますが」


 そう私がその方角へ指を向けると、涼子さんと茜さんが目を合わせて頷きあっている。


「では、私はすぐに動こうと思うので、そこは任せていいですよね」

「ああ。こっちは任せろ。場所がわかったらすぐに連絡するから、関東の方にも連絡は入れておけよ」

「わかりました。灯里さんは車の荷物を運びこんでおいてください。茜さんの荷物が入っていますので、運び終わったら茜さんの手伝いをお願いします」

「承知しました!」


 何をするのかわからないが、灯里さんは敬礼をすると、すぐにゲートを出て行ってしまった。多分車まで荷物を取りに行ったのだろう。

 なんだか話がいろいろ決まっていっているが、私は何をしたらいいのだろうか。


「涼子さんはどうしますか?」

「私は一旦ホテルに戻って着替えてくるわ。この恰好だと動きにくいから。駅が近いから電車で行くけど小春も一緒に行く?」

「そうですね。あ、戻ってくる時は、尾行に気を付けてくださいね」

「わかってるわよ。今更そんなへまはしないわ。茜も気を付けてね」

「大丈夫だ。オレを誰だと思ってんだ。んじゃ、とりあえず行ってくるわ」


 そう言うと、茜さんは突然右手を前に出した。


「来い、獅子王」


 茜さんが低く呟くと同時に、周囲から光の玉が集まり出したかと思えば、右手に赤い刀身をした剣が突然現れた。


「え……」


 私が驚くと同時に、茜さんは私がさっき伝えた方角へ、物凄いスピードで駆けていく。

 およそ人間が出していいスピードではなかった。


 私が呆気に取られていると、「それじゃあ行きましょうか」となんのリアクションもないまま、涼子さんと小春さんはゲートに入ろうとしていた。


「あ、あの……私はどうしたら」


 正直、気になることが多すぎて、何から聞いたらいいのかわからなくなるほどの展開に私は全く付いていけなかった。

 そんな時、私は何も指示をもらっていないのに、二人が帰ろうとしていたので、このままここに置き去りにされそうだった。


「あ、ごめんなさいね。玲奈ちゃんは小春が戻ってきたら契約の話をしなくちゃいけないし、ゲートを出たら家の中で待っててもらってもいいかしら。その時にこれからのことについても小春に説明させるから。それでいいわよね?」

「はい。おそらく三十分ほどで戻ってきますので、その時に改めて話をさせていただければと」

「わ、わかりました。では、大人しく待っていますね」


 そうして、私たちは家に戻り、二人を見送った。


 小春さんが戻ってきたのは、宣言通りおよそ三十分後だった。

 小春さんは、印刷された資料を鞄から取り出すと、リビングのテーブルに向かい合って座る。


「お待たせしました。それでは、契約の話をさせていただきますね」


 小春さんはそう言うと、紙の資料を私の前に差し出した。


「まず、ワルキューレへの正式な入会にあたって、いくつか制度をご説明します」


 私は渡された資料に目を向けた。


「一つ目は、パーティに関する制度です。同盟内であればどなたとでもパーティを組んでいただいて構いません。しかし、同盟外の方とパーティを組みたい場合は、事前に申請をしていただくことになっています」

「申請、ですか?」

「はい。相手を審査するためです。過去に問題を起こしていた場合、許可を出せないこともあることをご承知ください。同盟のメンバーを守るための制度なので、必ず守ってください。特別ペナルティなどはありませんが、パーティは命を預けるようなものなので、信用できる相手かどうか、相手のデータは結構重要な情報になってくるんです」


 なるほど、勝手に知らない人と組んで危険な目に遭わないようにする、ということなんだろう。


「二つ目は、素材の売買についてです。探索で手に入れたものを売る際は、必ず同盟を通してください。特に魔石については、基本的に同盟が買い取りますので、外部での売却はしないようにお願いします」

「はい。わかりました」

「もし、同盟で買い取れない、もしくは、もっと高く買い取るという方がいた場合は相談に乗れますので安心して話してください」

「たとえば、魔物の肉とかも買い取ってもらえたりするんですか?」

「はい、魔物の肉は積極的に買い取っています。というより、一頭丸ごとの買取が基本です。そこで必要な素材や魔石はおっしゃってもらえれば返却する形になります」


 へぇ、買取所とかではどれも買い取ってもらえなかったけど、同盟には販売ルートでもあるのだろうか。

 でも、これで気兼ねなく単眼ウサギやペンギンドッグを狩れるようになった。ただ、どうやってゲートから持って行くのだろうか。


「倒した魔物はどのようにして運んだりしたらいいんでしょうか」

「同盟には、ポーター要員もおりますし、臨時で雇っている方もいます。その都度用意しますので、その方に渡していただけたら大丈夫ですよ」


 なんと至れり尽くせり。

 みんなが同盟に入る理由がわかった気がした。

 きっと全部の同盟が同じことを受けられるわけじゃないんだろうけど、やっぱり入る意味はあるんだね。


「三つ目ですが、魔装についての情報共有義務です。所持している魔装の種類や能力については、同盟内で共有していただくことになります。ただし、同盟内で知りえた情報は秘密厳守でお願いします。これについては漏洩が発覚した場合は厳しい処罰もありえるのでお気をつけください」

「わかりました」


 これはちょっと迷った。

 今まで、自分の魔装のことはあんまり言いふらすものでもないのかと思っていた。

 でも、もう涼子さんには話してしまっているし、今更か。

 秘密保持もしっかりしているようだし、大丈夫だろう。


「それから、素材の販売や買取について、こちらから依頼を出させていただくこともあります。逆に、玲奈さんの方から欲しい素材を依頼していただくことも可能です。いずれも料金は発生しますが、基本的には同盟内での相互扶助を目的にしているので、あまり稼げるものではないことはご承知ください」


 依頼をすれば、必要なものを融通してもらえるということなんだろうか。

 雷属性の魔石もこの制度で用意してもらえるってことなのかな。


「次に、このゲートについてです。所有権は、あくまで玲奈さんに残ります。私たちワルキューレが持つのは、独占的な使用権という形になります」


 家や土地そのものを取り上げられるわけではない、ということに少しほっとした。

 おそらくこの家自体は建て替えなりするのだろうが、思い出の土地が無くなるわけではないし、そこは我慢をしないとね。


「対価についてですが」


 小春さんは、一拍置いてから続けた。


「使用料として、年間2000万円をお支払いします。ただし、これは毎年ゲートからの利益を計算し、玲奈さんと協議のうえ見直していく形にさせてください。それとは別に、ゲートが存在する土地・家屋についても、所有権は玲奈さんのままですが、賃貸という扱いで月額50万円をお支払いします」


「……ふぇ?」


 思わず、変な声が出た。


「に、2000万円ですか?」

「はい。年間で、になってしまいますが」

「そ、そんな大金……」


 頭が全く追いつかなかった。

 そんな金額が何もしなくても入ってくるなんて。


「初年度としては決して高い金額ではありませんが、今後の活動によって変動させていく契約にすることで、玲奈さんの利益を最大にできると考えました。同盟としても、メンバーに対しての報酬だと考えれば安いものですが、通常の契約ではないため、吹聴するようなことは無いようにお願いします」


 小春さんは、なんでもないことのようにそう言った。

 年間で2000万が安いのか。

 たしかに、少し活動をしただけで、魔石の売り上げだけの金額が1000万を超えていたことを考えると、安いことになるのだろうか。

 でも、それは命を懸けているからで、今後はこのゲートがある限り、その金額が不労所得になる。

 なんだか、一気に自分の境遇が変わっていくのに現実味を感じられなかった。


「ちなみに、原状回復についてですが」

「原状回復ですか?」


 正直、ここを立て直したとして、また古くなった家に戻されても逆に困りそうなのだけれど。

 そう思ったが、小春さんはちゃんとその辺も考えてくれていたようだった。


「正直なところ、完全な原状回復は現実的ではありません。ですので、万が一、私たちがここを引き払うことになった場合は、玲奈さんと協議のうえ、新しく建物を建て直してお返しする、という形にさせていただければと」


 つまり、新しい家になって返ってくる。

 両親の思い出が詰まった家がなくなってしまうのは寂しい気もしたけれど、どうせそのうち建て替えていた可能性があるのだから私としては何にも損をしていないことになる。

 本当にありがたい。


「あと、今後の玲奈さんの活動についてですが」

「はい」

「当分は灯里さんとパーティを組んで、探索に慣れていただくのがいいかと思っています。実戦の中で少しずつ、感覚を掴んでいってもらえたらと」

「わかりました」


 そこまで話が進んだところで、勢いよく戸が開いた。


「小春! 見つけたぞ!」


 汗だくになった茜さんが、部屋に飛び込んでくる。


「もう見つけたんですか、早いですね」

「すぐに連絡を取れ。場所は、埼玉の松伏だ」

「埼玉の……松伏ですね。わかりました、すぐに調べます」


 小春さんはメモを取ると表情が一気に真剣なものに変わる。すると、落ち着いた様子でパソコンに何か打ち込むと立ち上がり、テーブルに広がった資料をまとめ始めた。


「え、あの、契約の話は……」

「悪いが、あとにしてくれ。小春の方が優先だ」

「いえ、契約についての話はこれで終わりなので、その契約書にサインを書いておいてください。後ほど回収しますので」


 そう言うと、小春さんは家から出て行ってしまった。

 置いてけぼりにされた形の私は、茜さんと二人、リビングに残されることになった。


「あ、あの……」


 私は、テーブルに腰かけて休憩している茜さんに一つ聞いてみることにした。


「剣を出した時の、あれは何だったんですか?」


 茜さんはこちらを見て笑った。


「ああ、あれか。魔装を進化させるとな、呼び出せるようになるんだよ。便利だろ?」

「そんなことができるんですか……」

「まあ、知らない奴も多いけどな。やり方は簡単には教えられねえな。お前の魔装が進化したら教えてやるよ」


 進化したら、か。

 私も早くこの子を進化させたくてしょうがないのだけれど、魔石が集まらないからしょうがない。

 でも、いつか教えてもらえるということは、それだけ期待されているということなのかもしれない。


「それより玲奈、お前あの森に入ったことはあるのか?」


 茜さんは、思い出したようにソファに座り直した。


「え、森ですか。いえ、危険だと言われていたので入ったことはないです」

「そうか」


 そう言うと、茜さんは少し難しそうな顔をした。


「あそこは、まだお前には早いな。さっきコブラエンペラーを見かけたが、中級者以下はパーティを組んでても苦戦する相手だ。もし見かけても逃げろよ」


 茜さんには、大らかで親しみやすい印象を受けていた。

 けれど、こういう時は探索者としての凄みを感じる。

 やっぱりリーダーっていうのは伊達じゃないんだと感じさせられた。


「そういや、涼子から聞いたが、ショックバルーンにやられかけたんだって?」

「あ、はい……お恥ずかしながら」

「それも、一人で潜ってたからだろ。パーティを組んでりゃ、誰かが気づいてくれる。灯里と組むようになるんだろうから、その辺の心配も減るはずだ」

「はい、気を付けます」


「まあ、灯里と組んで慣れてきたら、そのうち森の方にも連れて行ってくれるだろ。あ、もしコブラエンペラーの五メートル級を見かけたらすぐに報告しろよ。戦ってみたい」


 物騒なことをさらりと言われて、私は苦笑いするしかなかった。

 この人、本当に戦うのが好きなんだろうな。


「まだこのゲートの周辺は漁られてないようだし、しっかり探索しろよ。多分宝箱があるはずだ」

「宝箱ですか?写真は見た事ありますけど、残ってるってどういうことです?」

「宝箱はな、かなり時間が経たないと出てこないんだ。だから、探索者がよく通る場所は残ってないんだよ。だけど、ここのゲートはまだお前しか探索してないんだろ?なら残ってる可能性は高い」

「そうなんですね。宝箱ってどんな所にあるんですか?」

「特に決まってないな。荒野のど真ん中に落ちてたことだってあるし、発生場所はランダムなんだわ。魔装が入ってることもあるから見つけたら必ず開けろよ」

「わかりました」


 そもそも宝箱ってなんなんだろうか。誰かが置いてるわけでもないのに、なぜ発生するのか。

 すごく不思議だが、今後の探索が楽しみだ。


「そういえば、お前の魔装、格闘タイプなんだって?珍しいな」

「珍しいですか?」

「ほとんどの探索者は長物を使うからな。格闘タイプや短剣なんかは見つけても使わずに売る奴がほとんどだろうな。使っている奴を見た事はあるが、上位で使ってるやつをオレは見たこと無いし」


 その言葉に、少し不安になる。

 リーチが短い分不利だから、みんな使わないんだろう。


「あ、あの、やっぱりこの魔装はやめておいた方がいいんでしょうか……」

「いや、逆にいいと思うぜ」


 茜さんは、思いのほかあっさりとそう言った。


「大抵の奴はビビりだからな。リーチの長い武器の方が安心するんだよ。魔物相手に超近接でやり合えるやつなんて、ほとんどいない。そして、接近しても倒せる自信がつく頃には、慣れた武器から変えられねえって奴が大半だ。だから剣や槍が人気だし高いぞ」

「茜さんも、最初から剣だったんですか?」

「そうだな。オレの時は、そもそも自分で手に入れる以外に入手方法がなかったからなぁ。選択肢がなかったんだよ。だから今の魔装を手に入れてから浮気はしたことないぜ。自分にしっくりくる魔装に出会えるかどうかは本当に運だな。安心しろ、魔装の進化は使用者に合うように変化するとも言われているんだ」


 茜さんは、少し懐かしそうに笑った。


「だから、お前の魔装がどう進化していくのか、正直かなり楽しみだ」


 まさかそんな風に言ってもらえるとは思わなかった。

 少しだけ、自信が持てた気がした。


「にしても、よく怖くなかったな。初めて魔物と対峙すると普通は腰ぬかして漏らす奴もいるのに」


 茜さんの言葉に、私は少し口ごもった。


「実は、当時ちょっと自暴自棄になってて……会社で色々あって、死んでもいいやって、投げやりな気持ちだったんです。だから感覚が麻痺していたのかもしれません」

「……そうか」

「それが無かったら、そもそも探索者にもなっていなかったと思うので、逆に良かったのかもしれませんけど」

「まぁ、ちゃんと戦えるなら探索者は稼げるからな」


 茜さんは、それ以上深くは聞いてこなかった。


「まあ、なんにしても」


 茜さんは、話をまとめるように言った。


「早い段階で魔装を手に入れられたのは、運が良かったな。魔装すら持ってない奴が圧倒的に多いんだから。それを引き当てたんだ、大した強運だよ。能力はなんだったんだ?」

「えっと、確か鑑定してもらった時にもらった封書をこの家に置いといたはずです」


 私は、入れた記憶のある棚を探しに行くと、ちゃんと無くならずにそこに入っていた。

 それを茜さんに手渡した。


「見てもいいか?」

「はい」


 私が頷くと、茜さんはさっと目を通した。


「身体能力の強化と、自己治癒力の強化、か。初心者にはかなりいい組み合わせだな」

「そうなんですか?」

「ああ。初心者にとって一番重要なのは生き残る力だ。あんまり強い能力を持った魔装を持てたとしても、扱いきれもしないのに調子に乗って死ぬことがあるんだ。結局堅実な能力を持った奴の方が長生きしているし強くなっている印象があるな」


 なるほど。魔装は強いに越したことはないと思っていたけれど、確かに自分が強いと勘違いはしちゃいそうだ。

 この魔装でさえ、私自身が強くなったような気がしてくるのだから。


「あとは、鑑定でも見抜けない魔装の能力もあるから、書かれている能力がすべてじゃないから気を付けろよ」


 そう言われた時に、私には心当たりがあった。


「あの……なんとなく、近くにいる魔物の位置がわかる時があるんですが、これもそうなんですかね。これが魔装の影響なのかはわからないんですけど」


 茜さんは、少し驚いたような顔をした。


「間違いなく、魔装の能力の一つだな」

「え、そうなんですか?」

「鑑定ってのはな、それぞれアイテムや魔装の個性によって見え方が変わるから、すべて見れるわけじゃないんだよ。別の鑑定の魔装で調べたら違った書き方や新しい能力が書かれてたりすることもあるしな」

「そういうもんですか」

「うちの同盟でも鑑定系のアイテムは一つ持ってるが、少しわかりにくい表現をしやがるから使いにくいんだ」


 鑑定系のアイテムは超高額で、なかなか手に入らないから、所有の有無で同盟の力が変わるほど大切なステータスでもあるらしい。


「さて、そろそろ出るかな。って、そういえば、灯里の奴どこ行ったんだ?ダンジョンでは見かけなかったが」

「そういえば見かけてないですね。車に荷物を取りに行ったきりです」


 茜さんはスマホを取り出した。

 どうやら灯里さんに電話をかけたらしく、しばらく話していたかと思うと、呆れたようなため息をついた。


「あいつ、車を停めた場所がわからなくなって探してるらしい。ちょっと迎えに行ってくる」


 どうやらレンタカーに荷物を取りに行ったまま、迷子になっているらしい。

 見た目によらずしっかりしているのかと思ったら、結構おっちょこちょいのようだ。


 茜さんは苦笑しながら玄関を出て行き、私は一人でリビングに残された。


 結局、私はこれからどうしたらいいのだろうか。

 小春さんは戻ってきてくれるのかな。

 涼子さんに電話したらいいのかな。

 いろいろ考えている間に、時間だけが過ぎていった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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