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捨てられOL、ダンジョン入って牙を研ぐ  作者: 夢乃舞家


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断罪の権力者

「……本当にここはダンジョンなのね」


 涼子さんの声が、静かな草原に溶けていく。

 なんだか久しぶりのこの景色が妙に懐かしく感じた。


 涼子さんは、ゲートを抜けてすぐの場所に立ったまま、ただじっとその景色を見つめている。


 私は少し離れたところに立って、その背中を見守った。

 風が吹くたびに、草がさわさわと揺れる音だけが辺りに響いている。


 振り向いた涼子さんの顔には、先ほどの厳しい顔つきが消えていた。


「涼子さん……」

「ごめんね、勝手に入っちゃって。どうしても、自分の目で見ておきたかったの」


 そう言うと、涼子さんは小さく笑った。

 いつもの調子に少しだけ戻ったような気がして、私は少しほっとする。


 しばらくして、私たちはゲートから戻ってきた。

 リビングのテーブルに向かい合って座ると、涼子さんはコップの水を一口飲んで、ようやく人心地ついたような顔をした。


「改めて、ありがとう。見せてくれて」

「いえ……」


 まだ、何と答えたらいいのかわからなかった。


「これから、どうなるんですか?」


 思い切って聞いてみると、涼子さんは少し考えるような間を置いてから答えた。


「まず、状況の整理と、ゲートの隠蔽。それから、活用方法を考えたいと思っているわ。ただ、玲奈ちゃんの意見を聞いておきたいの」

「私の意見ですか……?」

「うん。私一人の判断だけじゃ動けないし。ちゃんと同盟として、ここをどう扱うか話し合わないといけないと思う。でも、その前にこのゲートの所有権はあなたが持っていることになるわ。偶然ではあったけど、入ってくれる子がゲートの所有者なのは同盟としても幸運だったと思う。だけど、メンバーからその権利を搾取するようなことは私たちはしたくないの。だから、あなたの気持ちを第一に尊重はしたいと思ってる」


 涼子さんは、コップを両手で包むように持ちながら続けた。


「もし、このゲートを使わせてくれることになったとしても、この状態のまま使うことはできないわ。一度この家の状態を活動できるように作り変える必要がある。でも、この家はあなたの大切なご実家でしょ。私は無理に進めてあなたを傷つけたくはないの」


 涼子さんが少し悲しい顔をした。

 きっと私のことを想ってくれているのだろう。その気持ちは伝わってくる。


「でも、このゲートがあれば、ワルキューレの皆さんに喜んでもらえるんですよね?」

「ええ、それは間違いなくね。何せ、それが私たちの目標でもあったんですもの」

「目標、ですか?」

「ええ。私たちの最大の目標は、ワルキューレを世界中の同盟の中でもトップクラスの同盟に育て上げること。そして、それを成すには、独占的に使用できるゲートが必要なのよ」


 今までいろんな同盟に勧誘をされてきたけど、その中にそういった大きな同盟はあったのだろうか。とふと思った。

 それに、ゲートを独占する意味はあるんだろうか。ダンジョンの世界は共通しているらしいし、入口の一つを独占できただけで何が変わるのか私にはわからなかった。

 実際、ほとんどのゲートは出入りが自由だからだ。


「トップクラスになると良いことでもあるんですか?」


 正直、ただ競っているだけなのか、それとも、何か重要な意味があるのかでも随分と印象が変わってくる。

 もし、ただ競っているだけなのだとしたら、そのために両親の残してくれた家を壊してまでやる必要があるのか疑問が出るからだ。


「ええ、そのために私たちは頑張ってるんだもの。端的に言えば、権力よ」

「権力……」


 なんだかイメージしていたものとは随分違っていた。

 ドラマの話を聞かされている感覚だった。


「そう。これを説明するには、私たちワルキューレの成り立ちから説明しなきゃ分かってもらえないと思うのだけど。……私たちはね、ダンジョン発生当時、まだ名前も無い三人だけのパーティだったのよ。茜と私、そしてもう一人居たの。名前を綾香っていうんだけどね。その子はある日、私たちの目の前で亡くなった。いえ、殺されたといった方がいいかしら。それがきっかけで、私たちは正式に同盟としてワルキューレを立ち上げることになったの」


 そういうと、涼子さんの握っていた拳が強く握られていくのがわかった。

 随分と重たい話になってきたが、私は真剣に聞くことにした。


「その方はダンジョンで亡くなったんですか?」

「……ええ。彼女はダンジョンで命を落としたわ。突然襲われてね。私たちもダンジョンのことなんて、当時は何もわかっていなかったから」

「……そうですか」


 私がショックバルーンで死にかけた時、厳しい目で見ていたのは、その時と被って見えてたのかな。

 神崎くんも目の前で人が襲われているのを見てトラウマになったと言っていたし。

 危ないことをしている人がいたら、叱り付けるくらいのことは私もするかもしれないけれど、もしかしたら、友人を亡くした時のことを思い出させてしまっていたのかもしれない。そう思って私は申し訳なさを感じた。


「でもね。別に魔物に殺されたわけじゃないのよ」

「え……じゃあ、誰に」


 私はてっきり魔物に襲われたのだと思っていた。

 では誰が?そう考えた時、一つだけ思い当たる相手がいた。


「人間よ。あの子は探索に来ていた男の集団に襲われてたの。その時、私たちは休憩していた。そしたら、彼女がお手洗いに行きたいって言いだしてね。当然ダンジョンにトイレなんてないでしょ?近くで済ませればよかったんだけど、近くに川が流れている場所があったからそこまで行くって言いだしてね。そこに一人で向かわせちゃったのよ。でも、帰りが遅いから茜と探しに出たときに、叫び声が聞こえてきたから急いでそこへ向かったの。そしたら集団に襲われて泣き叫ぶ彼女が居たわ」


 正直、壮絶過ぎて、なんと言っていいのかわからず、私は黙って聞いていることしかできなくなっていた。


「私と茜は、すぐに助けに入ったわ。ダンジョンなんて無法地帯でしょ?魔物もいるし、殺されたら死体も残らない。つまり、証拠すら残らないのよ。だからね、お互いに本気の殺し合いになったわ。その当時、偶然茜が魔装を手に入れていたから、そいつらを圧倒することができたの。そしたら奴らは綾香を人質にしてきたのよ」


 話が進むにつれて、涼子さんの体が震え、なんだか殺気のようなものを纏っているような恐ろしさを感じる。

 聞いているだけでも辛いのに、このまま話させてしまっていいのだろうか。

 でも、私には、それを止める勇気はなかった。


「そして、私たちは手出しができなくなった。あの時、もっと力があれば。もっと冷徹になれていれば防げたはずなのに……」


 当時を思い出しているのか、歯を食いしばり、鋭い目つきで視線の先をにらみつけていた。

 強く握りすぎた拳が出血しているのか、少しだけ血液が流れ出ている。


「茜も私も、その時まで人を殺したことなんてなかった。だから、襲われたにも関わらず殺しきれなかった。その甘さのせいで、彼女は犠牲になったの。私たちが手出しできないとわかると、奴らは殺すのではなく、生かしながら無力化することに切り替えた。終いには、綾香同様に犯されそうにもなったの。それを見ていた彼女が、自分が足を引っ張ってると思ったんでしょうね。隙を見て男に飛び掛かってナイフを奪おうとしたのよ。きっと死ぬ覚悟をしていたんだと思う。案の定、彼女は返り討ちに遭って亡くなったわ」


 ずっと震えていた涼子さんの体がピタリと止まり、力なく俯いていく。


「その後のことはあまり覚えていないの。気づいたら、茜と一緒にその男共を全員殺してたから」

「え……」


 正直、その男たちに全く同情はできないけれど、人の死がそれほど身近にない世界に居た私には、思いの他ショックが大きかった。

 聞いているだけで手が震えてきてしまう。

 すると、優しく私の手を涼子さんが握ってくれる。


「怖い話を聞かせてしまってごめんなさいね。あまり気分のいいものじゃないから、この話を知っている同盟のメンバーも少ないわ。だけど、今回のゲートが私たちにいかに重要なのかを、玲奈ちゃんにはちゃんと知っておいてもらいたいの。そして、本題はここからなのよ」


 正直、結構精神的にこれ以上辛い話を聞いたら泣いてしまいそうだった。

 それでも、涼子さんも頑張って話してくれていると思って、私は続きを黙って聞くことにした。


「その当時は、ダンジョンで犠牲者が大勢出ていたけれど、得られる利益の方だけが注目されてたの。魔装や、いろんなアイテムを持ち帰った探索者がいたからね。そんな時に、私たちはダンジョンで何が起こっているのかを発信したの。すると、メディアから総叩きにあったわ。逆に私たちが人殺しをしたことを問題視するメディアが現れ始めたの。明らかに私たちが悪いかのように報道されてね」

「酷いですね。涼子さん達は被害者なのに」

「ネットでもテレビでも、それはもう叩かれたわ。私たちが負けじとミルチューブなんかを使って事実を伝えても、世間の人には届かなかった。そして、最後には警察まで動いてしまった」

「捕まったんですか?」

「ええ、そこで私たちは完全に負けを認めた。でもね、捕まったから負けを認めたわけじゃないの。圧力を受けたのよ」

「誰からですか?」

「それが、国からだったの」

「え……」


 急に話の流れが変わった。

 普通に過ごしていて国から圧力をかけられることなんてないから現実味がなかった。


「正確には、警視庁のトップからね。ここで引かないと二度と外に出られないようにすると言われてね。もうこの件に関わらないことを条件に釈放された。茜はまだ暴れようとしてたけど、私が止めたわ」

「どうして警察の人がそんなことを……」

「私たちもそれが知りたくて、いろんな伝手で調べたんだけどね。理由が分かった時に愕然としたわ。どうやら、私たちが殺したメンバーの中に大臣クラスの政治家の身内がいたらしいの」


 なるほど。なんとなく話のゴールが見えてきた。

 つまり、政治家の圧力ってやつなんだね。完全にドラマの世界だなぁ。

 昔は、政治なんて興味なかったし、いろいろ巷で言われていることも陰謀論だとか思っていたけど、現実に圧力とかあるのね。


「これがわかった時に、他にも犠牲者がいることがわかったの。どうやら、あいつ等は私たちにしたのと同じようなことを他の女性探索者にもしていた。それだけじゃない。男性の探索者でも脅されたり、殺されてアイテムを奪われた人がいたのよ。しかし、それらすべては政治家によってもみ消されていた」

「酷い……」

「すべては権力によってもみ消される。その現実に私たちはぶつかったわ。そして、今では日本のトップクラスの同盟でさえ、不祥事を起こすと力でねじ伏せたりする輩がいるの。私たちはそれが許せない。だからそれに抗うためには権力が必要なのよ。そして、世界でもトップクラスと認められれば、日本の政府でさえ抑え込める力が手に入る。もうこれ以上犠牲者を増やさないため玲奈ちゃんには協力してほしい」


 先ほどまでの暗い雰囲気が消えていた。

 ここまで聞かせてもらって、協力しないわけにはいかないよね。

 そう思って、私はすべてを任せることに決めた。


「わかりました。私にも協力させてください。この家には思い入れはあるけど、きっと両親もその方がいいって言うと思います!」

「玲奈ちゃん、ありがとう」


 私も涼子さん達の力になりたい。そう思った。


 ◇


 しばらくして、私は涼子さんに連れられて名古屋駅へ来ていた。

 改札の前で待っていると、涼子さんのスマホが鳴った。


「あ、灯里ね」


 少し通話すると、涼子さんはこちらを向いた。


「もうすぐ着くみたい」


 待つこと数分、改札から小柄な女性が小走りで駆けてきた。


「涼子さーん! お待たせしました!」


 元気いっぱいの声が、駅の雑踏の中でもよく通る。

 彼女が桐谷灯里さんか。随分と若い。というより見た目が若い。ちょっとコギャル感のある見た目をしていた。


 年下とは聞いていたが、随分と歳が離れていないだろうか。まさかJKじゃないでしょうね。


「灯里、急に呼び出してごめんなさいね」

「いえいえ! それより、この人が――」


 灯里さんは、私の顔をまじまじと見つめてきた。


「あ、白瀬玲奈です。よろしくお願いします」

「新人ちゃんは久しぶりだなぁ。よろしくね、玲奈ちゃん!」


 初対面とは思えないくらい、ぐいぐいと距離を詰めてくる人だった。

 まさか年下にちゃん付けされるとは思いもよらなかった。

 それでも、嫌な感じはせず、すぐに仲良くなれそうな気がする。


 お互いに自己紹介をしていると、涼子さんのスマホがまた鳴った。


「茜? 着いたの?」


 私は耳を疑った。

 福岡から名古屋まで、確か新幹線でも三時間近くかかるはずだ。

 さっき電話で話してから一時間半くらいしか経っていないと思うが、もう着いたなんて、いくらなんでも早すぎないだろうか。

 飛行機にでも乗ってきたのかな。


 少し離れた場所から、手を振りながらこちらへ向かって歩いてくる女性が見えた。

 背が高く、堂々とした足取り。声を聞かなくても、あの人が茜さんなんだろうとすぐにわかった。


「悪い、待たせたか?」

「いいえ、丁度よかったわ。……それにしても、思ったより早かったわね」

「ちょっと大阪に無理言ってゲート使わせてもらったからな」


 二人の会話の意味が、まったくわからなかった。

 ゲートを使うとはどういうことなんだろうか。


「あの、ゲートってどういうことですか……?」


 隣にいる涼子さんに小声で聞いてみる。


「ふふ、ちょっと特殊な方法で移動してきたのよ。これはまた今度教えるわね」


 涼子さんは、はぐらかすようにそう言って笑った。

 気になったけれど、今はそれどころではない空気だったので、それ以上は聞かないことにした。


「リーダー、お疲れ様です!」

「おう。なんだ、灯里も呼ばれたのか。お前はなんで呼ばれたのか聞いてるのか?」

「涼子さんからは何にも聞いてないですよ? とにかく急げってことだったんで、探索予定キャンセルしてきたんですからね」

「そうか。ならオレたちと同じだな。一緒に驚かされてやろうぜ」


 楽しそうに茜さんは高笑いしていた。

 なんだかすごく豪快な人のようだ。


 涼子さんは、改めて茜さんと灯里さんに、私を紹介した。


「こちら、白瀬玲奈ちゃん。今回うちに入ってくれることになってる新人さんよ」

「ああ、お前が涼子の言ってた子か。オレはリーダーの獅子堂茜だ。よろしくな」


 茜さんは、値踏みするように私を見てから、小さく頷いた。


「よ、よろしくお願いします」


 少し圧のある視線に、思わず背筋が伸びる。


「それで、茜。小春はどうしたのよ」

「ん? さっきまで後ろをついてきてたんだが、迷子にでもなったか? ……っと、来たようだな。小春! こっちだ!」


 茜さんが大きな声で叫ぶと、近くにいた人たち全員がこちらを向いていた。

 多分この中に小春さんという方がいるのだろうが、全員が向いたせいで、誰が小春さんなのかわからない。


「ちょっと茜。今は目立つと困るんだって言ったでしょ。もっと静かに呼びなさいよ」

「悪い悪い。ついな」

「まったくもう……」


 涼子さんに茜さんが叱られていると、こちらに近寄ってくる大量の荷物が目に入った。

 いや、荷物しか見えていなかったが、ちゃんと人が運んでいたようだ。

 随分と小柄な子だった。


「もう、茜さん! 自分の荷物くらい持って行ってくださいよ」

「すまんすまん。忘れてたわ」


 そういうと、また茜さんは大笑いをして周囲の目を集めていた。

 それを見て、涼子さんが頭を抱えていた。


「小春。忙しいのに来てもらって悪いわね」

「本当ですよ。突然呼ばれていろいろ調整するのに大変でした」

「ごめんなさいね。あなたがいないと決められないことが多いから外せなかったのよ。あ、こちら白瀬玲奈ちゃん。玲奈ちゃん、この子はうちの事務局長をしてもらってる姫野小春よ」

「よ、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします……それで、涼子さん、今回は一体何があったんですか? 茜さんからは、涼子さんが呼んでるからついてこいとしか聞かされていないのですが」


 紹介が終わると、涼子さんの顔つきが変わった。


「それは、ここではまだ言えないわ。みんな集まったから移動するけど、余計な情報を外に出さないために、携帯の電源を切って、黙ってついてきてほしいの。ちょっと目立っちゃってるし、追跡されても困るから迂回して目的地に向かうわ。その間、周囲への警戒を怠らないで。今回は絶対に情報戦で負けたくないの」


 その真剣な声に、全員が表情を引き締めて頷く。

 今回は。ということは、以前に何かあったんだろうか。

 なんだか、どんどん家のゲートのことで大げさになってきている気がする。


「ならさっさと行くぞ。おそらくオレが飛んできたことは大阪で情報が回っているはずだ。そろそろここにもあいつらが集まってくるぞ」


 「そうね」と涼子さんは頷くと、足早に行動を開始した。

 涼子さんはあらかじめ借りていたというレンタカーに私たちを乗せると車を走らせる。

 迂回するとは言っていたが、最初から家とは逆方向へと走り、三十分ほどで着くはずの道のりを二時間もかけて目的地に到着した。しかし、ここは実家ではない。

 実家から離れた公園の駐車場に涼子さんは車を停めると、そこからは歩いていくという徹底ぶりを披露した。


「荷物はとりあえずここに置いて行ってね。あとで取りに来たらいいから」


 皆が頷き、車から出る。


「なんでここに停めるんですか?」


 不思議に思って聞くと、涼子さんは前を見たまま答えた。


「もし尾行されていたら困るからね。歩いていけば、気配も探りやすいのよ」


 そこまで警戒するのか、と皆の顔つきが少しずつ強張っていくのがわかった。

 そこから二十分ほど歩いて、ようやく実家にたどり着いた。

 その間、涼子さんだけでなく、茜さんも灯里さんも、周囲に目を配っているのがわかった。

 家に着くと、茜さんが辺りを見回して言った。


「普通の家だな。ここで休憩でもするのか?」

「ここは、玲奈ちゃんのご実家よ」


 涼子さんはそう言うと、玄関を開けて中に入るよう促した。


「目的のものは、この中にあるの。靴を持ってついてきて」

「靴を?」


 灯里さんが不思議そうに聞き返したが、涼子さんはそれ以上説明しなかった。

 三人とも、戸惑いながらも靴を持って、廊下を進んでいく。


 一階の奥の戸の前まで来ると、涼子さんは振り返った。


「絶対に、声を上げたりしないでね」


 そう言って、戸を開けた。


 中を見た瞬間、三人が言葉を失うのがわかった。

 誰もが目を見開いたまま固まっていた。


「これが、みんなを呼んだ理由よ。理解できたわね?」


 涼子さんの言葉に、すぐ反応する人はいない。

 すこしして、茜さんが厳しい目つきで涼子さんを睨みつけた。


「……これは、どういうことだ」


 その声は、低く、抑えられていた。


「詳しい話は、中でするわ。ここじゃ安心して話せないから」


 涼子さんの提案に、誰も異論を挟まなかった。

 私たちは、揃ってゲートに入って行った。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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