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謎の臓物スキルは俺に適正だった模様   作者: 未来が見えない
野外生活編

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19/21

第十八話 積み上げてきたものはぶっ壊して、地に堕ちたイカロスは牢獄へと繋がれる

 俺とニーシャは今後とお互いのことについて意識共有していた。

 二人は一夜を共にした(遠回しの表現ではなく本当にただの一夜を過ごした関係)仲になっていたのか、改めて自己紹介をする。


「俺の名前は、五行、六腑と言います」

 ゆっくり喋り、名前を発音する時に自分を指差して胸に手を当てた。

 すると、ニーシャが俺の言葉を真似た。

「ごぎょー、ろっぷ?」

「イエスっ!」

「いえすっ!」

 ああ違う違う、それは違うよと俺は大きく手を振る。感極まり相槌したらそこまでマネされてしまった。


 しかし、彼女は俺の名前を拙い日本語でおうむ返ししてくれたのだ。くぅー!身に余る光栄とはまさにこのことよ。

 ニーシャは発音の練習をする。

「ごぎょー、、」

 俺はうんうんとうなづく。なんか、しみじみ言う感じて発音してくれるな、ニーシャさん。まあ、呼びやすい名で呼んでくれ、俺はなんでも構わんよ。


 何やら言いづらそうに彼女は呟く。

「ごぎょぅ…」

 どうやら彼女も自己紹介したいらしく、モジモジしている。大丈夫かな、俺ハート持たないよ、可愛いが過ぎて。

 そして、彼女は気品ある面持ちで発声する。

「ᚥᚪᛏᚪᛋᛁᚾᛟᚾᚪᛗᚪᛖᚾᛁ・ᚪᛋᛏᚩᚾᚢᛞᛞᚩ, ᚤᚩᚱᛟᛋᛁᚴᚢᚾᛖ」

 俺と同じ仕草で名前の所で自分に指を差して胸に手を置いた。なんだか、さっきまでの彼女と違いお姫様のような感じで喋り始めて驚愕する。分からない言語を発音してる人を見るとやっぱカッコよく見えるな。この感覚て一体なんだろう。

 それに、ニーシャ・ストーンウッドて、そんな感じで発音するんだな。

 まあ、俺は猫の目で彼女の名前とかスキルをなんとなく見て知ってるんだよなあ。権能である猫の目のおかげか、全てが日本語表記で見える。彼女の周りに漂う魔素が俺の能力を発動させ猫の目を通すことで情報が浮かび上がる仕組みだからだ。

 浮かび上がる名前はまるで、相手の情報をAR表示させる強制ハック、そんな所か。裸が見れないのが難点ではあるが。

 そして全ては分からないがな。相手のスキルが発動されないとスキルの名前は出てこないからだ。


 これについて分かったことがある。持論になるが例えば、【口壺(クチツボ)】と言う名前の魔物は、擬態してたら名前しか分からない。ただ奴はかなり擬態能力が上手く魔素の流れをコントロールしていたようだ。恐らく俺の猫の目すらも欺き、名前を見えづらくしていた。それか何かしらのスキルをまだ持っていたかも知れないからだ。俺の権能すらも欺く妨害スキルを持っていて名前を隠蔽していたのかも知れない。しかし、奴は俺に対しての警戒を解いていた時、攻撃するためのスキルを使用したのだ。あいつは壺内で魔素を渦巻かせて、魔素コントロールの雑味が荒く出ており分かりやすかったのだ。名前も認知すればすぐ出てくる。それほど荒い。そして、そのままスキルを発動させた。タメの部分で完全に《伸びる舌》というスキル名が出ていた。だから、俺は発動する前に口壺の魔素の流れと浮かび上がる魔素のスキル名を見て反応したのだ。《伸びる舌》なんて名前からどういうスキルかをなんとなく予測して認知出来るからな。


 そして分かったことは、スキルは発動に至るまでの時間を要し、スキル名として確定するまでの時間がある。ただ、スキル発動前にはスキル名は完全に確定していた。もしくは、同時に処理される。俺はその部分で実際の奴の発動前段階の魔素の流れと早く出たスキル名の確定で予測し奴より早く判断し、攻撃を躱わす事ができたんだ。


 だがもし、スキル名から読み取れなければ、攻撃がきた時、判断が遅れ俺は対処に遅れ、攻撃を受けてしまうだろう。そして、発動前段階の魔素の流れだったりも認知阻害されていたのならば更に予測出来なくなる。そう言った対策も講じないといけなくなるのだろう、いずれは…


 おっと、深く熟考していたようだ、話を戻そう。


 そうだ良い機会だ、ニーシャ・ストーンウッドの発音を真似してみようかな。恐る恐る口を開き、まるでネイティブで発音するような口ぶりで巻き舌になる。

「にッぢゃッ!」

 舌を噛んだ、痛い。早々に失敗して恥ずかしい。現実という奴はそう上手くいかないらしい、何事も経験してナンボのもんってことだな。うん、そう言うことにしておこう、うむ。

 ニーシャにクスクスと笑わられてしまう。彼女が口元に指を差して私の真似してみてと言いたげだった。

 そして、じゃあ始めるねと人差し指を立て彼女は口を開いた。

「ᚾ ᛁ ᛊ ᚺ ᚨ」

「ᚾ… ᛁ …ᛊ ᚺ ᚨ」

「ᛊ ᛏ ᛟ ᚾ ᛖ ᚹ ᛟ ᛟ ᛞ」

「ᛊ …ᛏ ᛟ ……ᚾ ᛖ …ᚹ ᛟ ᛟ ……ᛞ」

 い、言えた。拙い発音だけど言えたぞ、やった!俺は嬉しくなり歓喜する。ニーシャをみると両手をあげて、やったねというような表情をしており、ハイタッチの準備をしていた。


 嬉しくて気づかない内に涙が尻目から頬にかけて出ていた。恥ずかしかったけどそのまま彼女とハイタッチする。楽しいな、彼女と交流するのは。

 彼女はこちらを見て優しく微笑んでいた。


 何度か二人で日本語と異世界の言語を練習するのち、かなり打ち解けれたようだ。名前を教えあい地面に名前と文字をリンクさせる。お互いの名前はなんとなく共有することは出来た。

 これからどうするか、ニーシャに洞窟から出たいことを伝えるため、俺は屈んで刃物を拾って地面に絵を描いた。


 刃先で洞窟から出ていく棒人間の絵を描く。洞窟、矢印、棒人間の順番を刃先でなぞり、棒人間を刃先でトントンと強調し外へ出たいという意思表示をする。彼女に顔を向けると、コクンとうなづいてくれた。そして、ニーシャが刃物に向けてゆびを指して、右手を開いて貸してと要求しているようだったため、刃物の柄を向けた。彼女はパシんと柄を掴み、刃先でブロンドの彼女の顔を描いてそれを円で囲んだ。これはブロンドの彼女を見つけたから大丈夫と捉えればいいんだろうなおそらく。俺も彼女の目を見てうなづいた。


 晴れてようやくこの血生臭い洞窟から解放される。やっと、外の景色を見れるのか、なんか久々な感じだな。やっぱ人間はお日様の下、日光を浴びないと元気になれないよな。


 俺とニーシャは部屋の扉を開けて出ていく。

 もう、大丈夫だ。探し人も見つかり、後は家族へ哀しいが告げるだけだ。


 暫く後、泉周辺まで歩いてきた。


 きた道を戻る、泉の先に左と右の通路があるが、彼女は左に進んだ。転移陣は踏まずに行くのがどうやら出口への方向だったらしい。

 ここで思うのは、邪鬼がいた部屋の先にも転移陣があったが、もし踏んでたら俺は死んでいたのではと思った。その先にも邪鬼のような魔物が待ち受けていたら?背筋がゾクっとなり、冷や汗が垂れた。


 歩みを進める。洞窟の向こうには真っ白に照らされ先が見えない世界が広がっていた。


 外へと駆け足で出る。

 眩い景色に、目を細めてしまうが爽快だった。

 目を見開くと見渡すは森だった。新鮮な空気を感じ、大きく深呼吸をする。気持ちがいい。

 ニーシャも外へと出て深呼吸している。


 森の奥から人影が数名並んで歩いてきた。敵か?ニーシャが、その人影に気付き手を振った。ん、良かった、どうやら仲間だったようだ。


 だが何やら、俺をみて村人らしき者らが青ざめていたり、驚愕している者がいる。それは如実に警戒されていると分かった。


 ニーニャが仲間の元に走っていくのを俺は見守り、少しずつ彼らを探りながら歩くことにした。


 ニーニャの仲間達を猫の目で追う。その中で特徴的な二人に焦点をあてた。

【 ナッパー・パラシュ】は、筋肉マッチョの坊主頭が特徴的で、でかい斧を背負っている。

狼存孝(ロウソンコウ)】は、狼の様な姿で左目に傷がついてるそして背中に大剣を背負っていた。

 後は村人らしい見た目のものが数名いる。


 そして、何やらニーシャは仲間達に何かを説明していた。俺のことだろうか、チラチラ連中とニーシャがこちらをみて話してるようだった。リーダーなのか知らないが坊主頭のナッパーと少し揉めているようだった。他のメンバーは我関せずって感じで、早くその場から離れたそうにしている村人達の顔が気が掛かりだった。

 暫く待っているとナッパーとニーシャが語気を強めた言い合いになり、苛烈になっていく。


 段々とエスカレートしていき、筋肉坊主頭がニーシャの肩を掴み、怒気を強めた口調で迫っていた。

 俺は大丈夫かと思って、たじろいでいた彼女を庇おうとした。


 しかし、隣にいた坊主頭のナッパーに殴られる。周囲にいた村人がすかさず両手を紐で拘束してきた。囚人のように扱いやがって。それになんだこいつ、でかい割にめちゃくちゃはやい。スキルを使用した素振りも見えない。


 村人が紐で拘束をしたのを見たナッパーは更に背中を蹴ったのだ。


 蹴られた衝撃で呻き声が出る。

「うぐっ!」

 俺は地面に倒れて、声が出た。起き上がり、ニーシャを見ると、彼女はこちらを一瞥し、申し訳無さそうな顔をして俯いた。

 村人が俺を囲いこみ抑える。


 そんなのお構いなしで彼女と目を合わせようとするが俯いたままで、唖然とした声になった。

「ニーシャ?」

 彼女の名前を呼ぶが、俯いたまま反応はない。なんでだよ、さっきまで仲良くしてたじゃんか。やっぱり俺が童貞だから気持ち悪がっていたのか?俺だけ舞い上がっていたのか、その場の雰囲気に合わせてただけなのか彼女は、本当は心からは何も思っていなかったんだ、きっと。


 俺の中で彼女への信頼が瓦解していく。

 気持ちがぐちゃぐちゃになっていく。

 裏切られた、彼女の考えがわからない。

 分からない自分に対してへの怒り、何も言ってくれない、何もしてくれない、呼び掛けても反応してくれない彼女に対して、怒りと憎しみが産まれた。


 徐々に怒りと憎しみのボルテージが臨界点まで到達し彼女を罵ってしまった。

「ふざけんなよ、なんなんだよ、一体よぉ…さっきまで、楽しくしてたじゃんか!俺に向けた、あの笑顔はなんなんだよっ!!詐欺師の常套手段って奴か?異世界でもそういう美人局的な奴が流行ってて俺をカモにするんだろ、どうせ。そりゃ、アンタみたいな、美人でスタイル良かったら、誰だって引っ掛かるけどなぁ!そこにいる奴らと、どうせできてるんだろ!!内心、童貞だから俺のこと冷笑してキモがってるんだろ!!ふざけんじゃねえよ、クソがよ!見てるテメェらも同罪だかんな!!!」

 ニーシャはビクッと反応したものの俯いていたままだった。吠えている俺に軽蔑の眼差しで連中は見ているように思えた。

 怒気を強めて吐き捨てるように言い放つ。

「おい、離せよ!!お前ら全員許さねえからな!!!」

 そして俺は、精一杯抵抗するが複数の力には無力だった。

 誰から見ても今の俺は虚しい存在になっていただろう。やかましいとばかりに、ナッパーに鳩尾をけられる。口から胃酸が出た。地面にシューっと音が鳴り連中がザワつく。そんなことに気が回らないほど景色が揺らぎ、世界が白黒に点滅し意識が混濁する。気付くと地面に倒れ土が口に入っていた。


 藁にも縋る思いだった。

 それでも、絞り出すように声を震わせた。

「ᚾ… ᛁ …ᛊ ᚺ ᚨ……ニーシャ……」

 彼女が反応し、ハッとして顔を上げた。彼女が今どう思っているかは分からないが、口に手を押し当てて、涙を流しているように見えた。


 どうしてだ、なんでそんな涙を流すんだ

 悲しい顔なんて、しないでくれよ

 それはどんな意味の表情なんだ


 君の本心を聞かせてよ、そんな顔されたら

 ニーシャ、君のことを憎めないじゃないか


 スタスタと歩く音が背後から聞こえた。

 足音が止まり誰かに後頭部をゴチィンっと殴られた。

 意識が飛んだ。



 ◇



 ーーハッ!?


 後頭部の鈍痛で俺は目を覚ました。仰向けで天井を見つめる。暗がりの中に小さな灯が見えた。

 青天の霹靂というやつなのか、さっきまでの出来事が何故こうなったのかがわからない。

 そして、彼女に言い放った言葉が余りにも酷かったなと自嘲する。察しがいい彼女は俺が言った意味を理解してるだろう。もう、言い放った言葉は取り戻せない。


 そして、仰向けから上体を起き上がらせて、周囲を確認すると、そこは檻の中であった。


 元の世界から迷い込んだ魂は女神に救世主と呼ばれ、この地へとやってきたが肉体と精神をすり減らし信頼していた者に裏切られて牢獄に囚われたのだった。

 名実共に異世界転生者は地に堕ちたのだ。

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