第十三話 美女がピンチの時、主人公が颯爽と救い出すのは、やっぱり理想の展開だよねという件
コポコポと水の泡が泉から湧き出ている。
洞窟内に音が反響していた。
通路から風が吹いてる音がする。
さて、自分の素性をなんとなく確認することができた。透視改め猫の目は俺の権能の力だ。
確認も済んだことだし、喉を潤すため泉へと足を向ける。
流れる川とは違い泉は鏡のように風景を反射している。水を飲もうとした時、水面に映る自分に違和感を覚えた。
スーツはボロボロなのは分かっているが、自分の顔がやけに肌艶が良く、童顔になっていたからだ。顔を手で確かめる。高校生くらいの時のような幼さを感じた。
「もしかして、若返ったのか?」
嬉しい誤算だが、転生するんだったら誰かの成り変わりだったり、いちからイケメン貴族として生まれ変わりたかったものだな。水面から中を覗く。水は透き通っているが、深部は暗く何も見えなかった。オスッシーが潜るくらいだ、おそらく魔物がいるのだろう、どうなっているかは分からないが。
手を伸ばし水を掬う。
両手の中に映る自分の顔を見て、これも運命て言い出すのかと女神のことを思い出し、水を飲みほして喉を潤す。泉の水は、やけに新鮮で体に染み渡った。
「いや〜、沁みるねえ。美味いもん食ってお口直しに泉の水って、粋じゃあないか」
泉に向かってボヤく。もちろん誰も答えてはくれない。
そろそろ、出口へと辿り着きたいところだが、この洞窟は思った以上に広いみたいだ。泉に来た道と反対方向に二つの通路があった。
左か右か、暫く考えてなんとなく直感で右を選んだ。
通路からコォーと風が吹き抜けている。
出口に近いのか。
右の通路へと歩き出す。あばよ、オスッシー、また会う時があればお前のネタを食べさせてくれよ。
地面を踏みしめる音が変わる。泉の近くは湿っていたが、洞窟内の通路は最初にいた所より整備され、タイルの地面になっていた。ボロボロの革靴でもコツコツと音が響くほどだ。
通路を歩いていると行き止まりになる。通路の奥はやや窪んで末広がっており、その地面には何か描かれていた。
赤く幾何学的な紋様。
何やら魔法陣のような紋様が地面に描かれている。罠か何処かに転移させるものなのか?
後戻りすることもないから、足を踏み入れた。
するとーーシュンっ
眼前の景色が一瞬にして変わったのだ。どうやらさっきの紋様は任意の場所に転移させる魔法陣だったのだろう。
転移したそこは出口ではなく、石造りの寂れており、各部屋とは隔たれた空間。
端には死体の山が積んである。
その場所にも転移するための魔法陣が描いてある。
転移特有の眩しさから目を閉じて恐る恐る瞼を開くと、苛烈な音と共に、やや離れた所で美女と禍々しい黒色の鬼が戦っていた。
両者はこちらにはどうやら気づいていないようだ。女性は白銀ロングストレートでナイスバディな体。エルフのような長い耳。その肢体をプレート装備で隠れているが美貌は溢れ出していた。彼女は手に持っている、細身のロングソードで黒い鬼と打ち合っている。
黒い鬼との攻撃を捌き火花が散る。
えーっと、どうしよ、逃げたい。でも、あの人めちゃくちゃ美人だからお友達になりたい。あわよくば、何かあったり?とか思ったりするが。明らかにヤバそうじゃん、あの魔物。一旦、猫の目で探るか。
黒い鬼の方は【邪鬼】という名前だ。体内の魔素がとめどなく溢れ出ており、美女に《惨殺拳》などという、物騒なスキルを使っている。
何処となく、餓鬼の風貌と似ているが上位種なのだろうか。そこまではわからなかった。
そして、ムフフ、美女の方を透かしてみる。だが、肝心の裸はみれない、どうしてだよおおォ。まあ分かっていたが、というか魔素の動きや体の構造をX線みたいな感じでしか見れないので薄々無理だとは思っていた。拍子抜けだって?まあ、仕方ないじゃないか、でも彼女のボディラインは素晴らしいものだということは分かるぞ、ムフフ。
彼女の名前は【ニーシャ・ストーンウッド】というらしい。長耳族、いわゆるエルフだな。浮かんだスキルの中に言語スキル《マハラ語》というものがある。聞いたことがない言語だし、こっちの世界だとこれが主流なのだろうか。
彼女の周りに浮いてる情報もそれくらいか、思考を読めたり出来ればもっと具体的に分かるのだが、流石にそれは無理だな。
ガキィンーー。
ニーシャは邪鬼の力に押し負けている。
どうやら苦戦してそうだな。
ここは、やっぱり俺が颯爽と彼女を救ってあげれば惚れてしまうのではないか?
よし、そうと決まればいざゆかん。
「お、俺がきた!!」
両腕の力こぶを誇示したポーズで決める。
ーー!???
邪鬼とニーシャがこちらを向く。
ニーシャは邪鬼がよそ見した瞬間を逃さなかった。
ニーシャは《光の刃》を発動する。
細身のロングソードは輝き出し、邪鬼の首元へ鋭い一閃で攻撃する。
邪鬼の頭は刎ねられた。
首から大量の血と黒い魔素が飛び散る。
邪鬼の体は地面に崩れ倒れる。
ニーシャをこちらを見て、訝しげな表情で喋りかけた。
「ᚾᛟᚺᚪᚾᛁ-ᛋᚺᚪ・ᛋᚢᛏᛟ-ᚾᚢᛞᛞᛟᚤᛟᚪᚾᚪᛏᚪᚺᚪ, ᚾᚪᚾᛞᛖᚴᛟᚴᛟᚾᛁ? 」
「え?なんて?」
咄嗟に日本語で返答してしまう。
「…………」
ニーシャは黙って首を傾げた。
やっべえええ、マジで分かんねえぞ。
外国人にエクスキューズミー?みたいなノリで話す時くらい分かんねえ。おれの営業トークで乗り切りたいが言語がわからない。ていうか、余りにもダサかったなさっきの俺。救うどころか、救われてるよな。あんなやつ倒せないよ、わし。とりあえずはボディーランゲージだ、伝わってくれ!
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