第十一話 口々に愚痴に寿司!寿司!!
洞窟内部、ある一部屋で絶え間ない音が響いていた。鞭のようにしなる舌が地面をばちん!と弾く音が反響している。
その鞭のような舌を俺は反復横跳びで避けていた。
「フっ、スッ、ハッ」
心配機能が上がってる分いくらでも避け切れる。だが、こんなのをずっと続けてもジリ貧だ。決定的な攻撃を当てないと、あいつの手のひらの上のままだ。
俺の体力を減らして、弱ったところを一気に攻め立てるつもりなのか知らねえが、小賢しい野郎だ。だが、奴の攻撃は俺目掛けて狙ってきてはいる、おれには奴の構造が見えるのと、《伸びる舌》を発動するまでの魔素の溜めが透視で見えている、これによって避けながら、刃物で軌道をずらすことが出来ていた。
何かないか、胃酸を放つにも流石に吐きすぎた。そんなに胃酸は溜まっていない。くそ、、ん?待てよ、いいこと思いついたぜ。
反復横跳びをしながら、さっき倒した、餓鬼の亡骸を担ぐ。そして、突き出された舌に対して餓鬼を囮にし差し出す。
口壺は、餓鬼の体をグルンと締め付けた。そして、舌で絡めてくるくると丸めて、壺の中へと収まっていった。
やっぱり、そうか、獲物を捕らえたら、お前の口に入れないといけないってわけだな!
刃物を持ったまま俺は走り出す。走力は申し分なし、奴はまだ、噛み砕いている。
壺へと接近し、中身を見る。ギザギザした歯が餓鬼を噛み砕き舌で舐め取っている。気色悪いな、だが、今のうちだ!
刃物を突き立て、壺内部へと差し込む。
ーーザスっ
「ギギイイい!!」
壺から凄まじい痛みの声が聞こえる。
「おめぇが、俺を雑魚と思った罰だ、おらああああああ!!」
ザスザスザスっ!!!
刃物を何度も振り翳し、壺の中は血まみれになっていた。次第に声が弱くなり、舌に力が入っていたのが、ダラリと地面に垂れていた。
「ふぅ、連戦で流石に体が痛いな」
疲れがどっと押し寄せる。身体的な疲れは勿論あるが、スキルの影響かそこまでシンドくはない。むしろ、精神的な疲労が溜まっていた。
これが、現実だもんなあー、部屋を虚ろに見る。惨殺された女性の残骸と、餓鬼の頭が溶け死んだもの、壁に打ち付けられた餓鬼、口壺は舌をダラリとして死んでいる。それぞれの現状をもう一度、確認をするため見渡した。
良くやってるよ、マジで。多分、こっちきて1日か2日目よ?しかも、訳わかんねえスキル掴まされてよ、いやー、俺って凄えわ、まじで。
こんなこと言ってるのも、自画自賛していないと精神性を保つのに危ういからだ。異世界のことを舐めすぎていたんだ、おれは。
容易く人が死んでいる、魔物が人を殺す、そんなのが当たり前な世界てことに、俺は今になって実感している。
ふと、戦闘の時に恐怖と同時に楽しいという感情が湧き立っていたことを思い出す。
いや、怖いのは自分の殺戮に対する愉悦心を覚えてしまうことへの恐れなのか。
こんな所で自分のサイコパスな二面性を呼び覚ますことになろうとは。
はあ、まあいい。暫くボウっとした後、女性の亡骸を土で埋めて、衣服と刃物で墓に見立てた。
「名もわからぬ女性だが、安らかに眠れ」
土で盛られた墓に黙祷をする。
衣服がスルッとズレた。まるで、彼女がありがとうとお礼をしたかのようにみえた。
これで、無念を晴らせるのなら良かったと思う、ちゃんとした場所で墓を作れなくて申し訳ないと思うが、俺が出来ることはそれだけだ。衣服や持ち物からも何か出自らしき物も分からなかったため、俺にはこうすることしかできなかった。
女性を透視するか迷ったが、野暮だと思いやめた。俺は紳士だからな。
そして、早く来れなくて申し訳ないと思い、彼女に会釈して、そのまま部屋から出た。ピチャンと水滴が洞窟内を響く音がしている。
出口はどこなんだろうか。
洞窟の一室である部屋からでて、来た道ではない、方向へと向かっていく。洞窟の通路はまだ奥へと続いている。奥へと進んでいくと次第に洞窟内部に泉のような場所へと繋がっていた。ピチャンと音がしているのに気がつく。この泉の上部にある垂れ下がったつらら石から水が滴っている。その水滴が泉に落ちている音だったのだ。
そして、あたりを見ると円形に湧いてる泉を中心に草花が群生している。さっきとは打って変わり綺麗な場所だ。
その泉の近くに、不思議なシルエットをしたものが立っていた。
なんだぁ?あいつは…
巨大な白い米の上に、魚の刺身のような霜降りの大トロが乗っている。そこに、人間の足のような屈強な太腿をちらつかせて、ノシノシと歩き回っているものがいた。えーっと、寿司ですかい?
なんだ、このオモロマスコットは??
透視する、観測されたのは、、
【オスッシー】と表示されていた。
って、こいつ魔物かよおおおおお。人間が着ぐるみきて、歩き回ってんじゃないのね。ということは、あのシャリと大トロは本物ってことか?
(グゥー)
腹の音がなる。そりゃ、ずっとこっちきて、まともなの食べてないからな。腹ぁ減るもんだ。
あいつ、美味そうな見た目してんなあ。足を除けば最高級の寿司が歩き回ってるだけだもんな。
よし、捕まえよう!
オスッシーはこっちに気がついたのか、シャリを振り撒きながら走り出した。
ドドドドっ!!
振り乱れる大トロとシャリ、溢れるシャリが黄金に輝いている。
おいおい、こいつレアな奴なんじゃないのか?
つか、あいつ速いな!
負けねーぞ!
ドドドドっ!!
ダダダダっ!!
シャリを振り撒きながら、走るオスッシーを追いかけ勿体ないとばかり俺は、振り撒かれたシャリを空中でキャッチして食べる。
口の中に入れたシャリは極上の味だった。なんだこれ、シャリがフワッとしたご飯が、酢でキュッとしまっていて、噛み締めると甘味がブワッと滲み出てめちゃくちゃに美味い!
こいつは、絶対に捕まえて食べてやるぞ!!
泉の端をぐるぐると1体と1人が走り回る。
どちらも生死を掛けた負けられない戦いが始まったのであった。
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