第九話 ギャッギャ、ギャッギャ五月蝿いんだよ餓鬼共
攻撃を避けられた餓鬼は地団駄を踏み癇癪している。周囲の餓鬼の様子を横目で窺う。どうやら襲いかかってこない個体は、俺の様子を見ているようだ。
まだ、手出しはしなさそうな雰囲気を感じた。
中央の女性の残骸を見る。上半身と下半身に分断された内臓は飛び出ており、血液は滴り落ちている。
女性の顔はとても綺麗な顔立ちをしていた。これが異世界の人間か、ブロンドの髪に真っ白な肌が艶やかに見えた。だが、その瞳は人形のような虚な目、ハエがたかり生気などもうとうに尽きている。そんなことはわかってはいたが。
こんな場所で、出会わなければきっといい出会いだったんだろうな。
流石に初対面で彼女の凄惨な状況を見た時は気持ち悪くなったが、今は彼女を陵辱し喰らう餓鬼共に苛立ちを覚える。
しかし、それとは違うワクワクという謎の感情が俺の中に渦巻いていた。
ここまで、出張ってきた割には、足はすくんでいない。やっぱりおれは何処かおかしいのだろうか。現実的ではない状況にドキドキして、この体を使って、この世界で何処まで通用できるのか胸の高鳴りが収まらない。こんなに戦闘狂だったのか、俺は。でも、営業の頃だって、ノルマに対しての成果を出す時なんて、やれるだけのことはやっていた。ギリギリまで粘ってやっていた。例え客にあしらわれても、一度は自分で選んだ人生だから抗っていたんだ。難しいことをやっている時ほど燃えていたんだ。というか、物心ついた時から、反骨精神は人一倍あった。
俺の体が、いや、心臓が言うことを聞いてくれなかっただけだからだ。何処までも、フィールドの上を駆け回り、縦横無尽にサッカーボールを操る選手に、そんな戦士のような漢に、俺は憧れていたんだ。
気付いたら、手を握り締めていた。
俺が妄想を始めた辺りから、餓鬼共は首を傾げていた。『こいつ、何してんだ?』と言いたげな感じで見ている。
そんな、餓鬼共を一瞥する。
こいつら、やっぱり知能が高いな。1体をけしかけて、俺の出方、手札の数を見極めていたようだ。
複数を相手にするのは至難の業だが、こっちだってなあ、伊達にサッカー部で鍛えられた足と
万年ベンチ入りだけど監督が隣で長々とぼやいていた戦術の意図を俺は適当に相槌打ちながら何となく理解していたんだ。それに、、
時たま、練習試合に出る時だってあった、活躍はしていないけど…
餓鬼共、お前らが俺を見ているように、俺だってお前らを見透かしているからな。
目に映るのはフィルターのような薄い膜。この透視で、部屋にいる餓鬼を全て見透かす。
なるほど、女性の亡骸の周りに2体、奥にもう1体、壺の中にあるものを食い漁ってる奴がいる。そして俺に襲いかかった1体というところか。この部屋の構造も把握すると、土で囲われたドームのようになっており、入口のドア、中央に亡くなっている女性を囲うように土壁に無惨な残骸や衣服が散乱している。
なるほどな、4対1てことか。滾るねえ。
後ろに1体マークされて、前方に3体か、、
敵に背を向けるのは御法度だが、距離が近い、さっき攻撃した餓鬼に、俺のご自慢のアウトサイドをぶち込んでやるぜ。
後ろを振り向くと、まだ攻撃が当たっていないのにキレ散らかしている餓鬼がいた。
「ギャッギャッギャ」
知能にも個体差があるようだな。
だが、チャンスだ。
「おっっらあああっ!!!」
俺は振り向いて地団駄を踏んでいる、餓鬼に
思いっきり蹴り上げた。所詮は子供位の大きさだ、蹴り一つで体が浮かび上がる。
「ゲッギャッ!?」
「!!?」
それに、心肺機能が強化された俺の蹴りは更に出力される。蹴り上がった足で壁に放った。
「ギャッ!」
壁に衝突した、餓鬼はそのまま倒れ込む。
後ろの2体は俺が急に動いたためか、微動だに出来ていない。もう、1体はまだ壺の中をカチャカチャと漁ってるみたいだ。
遅い、判断はもっと早くやらないとな、複数戦なら、何度も見ている。
「ギャッギャ!!」
後ろの2体がけしかけてきた。体勢を変えて、後方の餓鬼の方を見る。視界に映るのは、1体は刃物を持ち、もう1体は棍棒を持って殴りかかろうとしている。
馬鹿がそれを待ってたんだよ。ギャッギャ五月蝿い、てめえらにとっておきのサプライズだ。
【捕食者】と呼ばれていた、あのスライムを一撃で屠った、この最強の技を使うためにな!
振り向きざまに、人差し指を喉奥を刺激する体勢を取った。そして、餓鬼が射程圏内に入ったときそれは、濁流の如く放たれる。
さあ、ショータイムだ!!
「お、オグッ、うぷおえええええ!!」
「「ギャッ!?」」
ぶち撒けられる嘔吐。超強酸性の胃酸が餓鬼に飛び掛かる。
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