神無月 瑠奈とのデート④
「あ、そういえば、今日は何時解散ですか?」
「ふみふみは何時までいられる?」
「特に門限とかはありません。妹に早く帰ってこいと言われることは多々ありますけど…」
今の時間は5時。…結構ゲームしたな…久しぶりのWeeにはしゃぎ過ぎたかもしれない。
「家近いし、まだ考えなくていいでしょ~。」
「お父さんとかって…」
「一応家に友達呼ぶね。とは言っておいたし、大丈夫だよ。そもそも、帰ってくるのは本当に11時とかだから~。」
…その言い方だと、言っただけで許可を貰ってはいないような……だ、大丈夫だよね?
「その、お父さんは、既読ついてるんですか?」
「付いてる!」
「あ、それなら大丈夫か……それにしても、流石にちょっと目が疲れてきましたね。」
「そうだね~。じゃあ、ボドゲやろ!…といっても、二人じゃあんまり盛り上がらないんだよなぁ。パパと二人で人生ゲームとかやっても……いや、結構楽しかったや。」
「ボドゲ…どんなものがあるんですか?」
「さっき言った人生ゲームとか、あとはカードゲームの類、二人で出来るようなものしかないから、ボドゲとか全然ないんだよねぇ…人狼ゲームやりたい!!」
「二人人狼ゲーム…白陣営の負け確じゃないですか。」
「それじゃあ私が人狼だねぇ?ふみふみを食べちゃうぞ~!」
そう言いながら、両手をがおー!みたいなポーズにして私に覆いかぶさる。
か、かわいい…!
「神無月さんみたいなかわいい人狼なら食べられても後悔ないです…」
「いやその時は逃げてね!?」
恐らく、神無月さんが一番似合う、がおー!のポーズ。……是非とも猫の手のポーズもやってもらいたい…
「仕方ない。トランプでもやるか~。」
「ババ抜きですか?」
「そうだね。やっぱり最初はババ抜きだよね!」
そういうと、慣れた手つきでカードを配る神無月さん。
「配るの早っ!」
「パパとよく遊ぶから慣れてるんだよね~。それじゃあ…じゃんけんぽい!」
「ぽいっ!」
私がグーで、神無月さんがパー。見事、負けた。
「それじゃあ引かせてもらうよ~。」
「…二人だと、最後の一騎打ちまでほぼほぼ茶番じゃないですか?」
「本当にそうなんだよね。やっぱりボドゲは4人は欲しいよ。」
今度みんなでやりたいな…
出来れば、ミナも入れて。
そんなこんなで、たった三ラリーくらいで、私が二枚、神無月さんが一枚の状態になる。
ポーカーフェイスだ。ポーカーフェイス。二分の一。顔に出さなければ、全然勝てる数値だ。
「左かな?」
「…」
そっちはババ…!
「やっぱり右かな?」
「…」
そっちは数字…
「ふみふみは、どっち引いて欲しい?」
「…私は…どっちでもいいですよ。」
「ふーん…ふみふみ、左と右ならどっちが好き?」
「…どっちが好きとか、考えたこともないですね。」
「ふっふっふ…ふみふみ、ババ抜き弱すぎ~。私との駆け引きの間、数回、ちらちら左見てるよ。」
「……ブラフかもしれませんよ?」
「その言葉で確信したぜ!ババは左!つまり、私は右を取れば勝ち!……よっしゃ!」
「負けた………」
ミッションの時から、そして、ゲームしてても思ったけど、神無月さん、勝負事、特にゲームの才能エグくない?
というか、私ちらちら左見てたかなぁ……見てない気がするんだけどなぁ…無意識のうちにってやつか…
「よ~し、じゃあ罰ゲームね!」
「え!?聞いてませんけど!」
「え~?言ってなかったっけ~?」
「言ってません!」
「そうだったかぁ~。じゃあ、次はスピードやろ!」
そんなこんなで、二人だけど、トランプもなかなかに楽しんだ。
今の時間は6時。…結局、一時間くらいトランプやってたんだ……高校生なのに。
「ただいまー。」
「え!?パパ!?ちょ、ちょっと待っててふみふみ。」
「う、うん。」
まだ6時になったばかり。神無月さんの反応的に、超予想外だったのだろう。……考えなくても分かるけど…これ、絶対私が関係してるよね…。
「ちょ、パパ!挨拶とかいらないから!」
「ダメだよ瑠奈。せっかく家に来てくれるような友達が出来たんだ。礼儀正しくしないと。」
「分かった。パパのことは私が言っておくから。そのマドレーヌ?も、渡しておくから。」
「それだとなんか感じの悪いお父さんじゃないか。」
「そんなことないよ!あ!ちょっと、私の部屋入らないで―――」
「いらっしゃい。瑠奈のお友達さん。私は瑠奈の父親の神無月………もしかして…ふみちゃんかい!?」
「カンちゃんのお父さん!?」
紛れもない、確実に、カンちゃんのお父さんだ
小学生のころの友達の「お父さん」の顔なんて、普通は覚えていないと思う。名前も。というか、私は名前や顔を覚えるのが苦手だからなおさらだ。
ただ、それでも、カンちゃんのお父さんは覚えている。
なぜなら……カンちゃんのお父さんは、めっちゃムッキムキなのだ。それでいて頭も良く、運動もできる、スーパー人間みたいな人だった。
「改めてまして。私は、瑠奈の父、神無月 清隆だ。久しぶりだね。まさか高校で再開していたなんて…瑠奈も、言ってくれればよかったのに。」
「カンちゃんのお父さんってことは……カンちゃん…神崎 瑠奈…神無月…カンちゃん!?え、神無月さんがカンちゃん!?」
「いえす」
そ、そそそそそういえば、カンちゃんって瑠奈ちゃんだった!神崎瑠奈ちゃんだ!
ずっとカンちゃんって呼んでたから、下の名前忘れてた…最低すぎる…いや、ほんとに。最低なんてもんじゃないよ?
いやでも、本当に神無月さん=カンちゃんなの?変わりようが凄いけど…
「はぁ~あ。もう!パパのせいで台無し!せっかく私がカンちゃんだってふみふみに内緒にしてたのに!」
「え!?そうなのかい!?」
「す、すみません…親友だったカンちゃんに気づけないなんて…」
「いやいや、仕方ないよ。瑠奈は、小学生の頃と比べて、すごく変わったからねぇ。こんな派手な子じゃなかったろう?」
「なに?パパ!派手じゃ悪いか!」
「そうじゃないよ。…この姿こそが、本当の瑠奈なんだ。人に言われた格好をしているわけじゃない。自分のしたい恰好を極めた姿が、今の瑠奈なんだ。最高にかわいいだろう?」
「は、はい。昔より何倍もおしゃれ?になってて…性格も、明るく元気で…」
昔のカンちゃんは、おどおどしてて、弱気で元気がなくて、いつもお母さんに対して怯えていた。そんなカンちゃんを支えていた…というより、連れまわしていたのが、元気だったころの私だ。
……なんか、形勢逆転してません?
「そういうふみふみも変わったよねー。そんなネガティバーじゃなかったのに~。」
「うっ…」
痛いところを突かれた…
「こら!瑠奈!そういうことは気安く言うことじゃないよ。」
「私とふみふみの仲だからいいんだよ~。」
「親しき中にも礼儀あり、だよ。ふみちゃんも、ごめんね?瑠奈、言葉直球でしょ。困らせちゃうことがあると思うけど、その時は、瑠奈のわがままに付き合ってあげて欲しい。きっと、すぐに満足するから。」
「ねぇ!変なこと言わないで!もう!出てって!私とふみふみの愛の巣から!」
「確かに、思ったよりも長居しすぎてしまったね。…ふみちゃん。これ、マドレーヌです。水無ちゃんと、お母様と、是非家で食べてね。」
「あ、ありがとうございます。」
高級そうな袋…あ、これ、近くの有名なお菓子屋さんじゃん。めっちゃ美味しいけど、めっちゃ高いやつ…
「ふみちゃん。昔のように、また瑠奈と仲良くしてくれてありがとう。」
「い、いえ!そんな、感謝されるようなことではないです…むしろ、私がカンちゃんに感謝してます!」
「本当にありがとうね…では、私はここらへんで仕事に戻るよ。…それに、これ以上ふみちゃんと話していたら、瑠奈に怒られそうだからね。」
「もう怒ってるからね?」
「これからも、是非とも、瑠奈と仲良くして欲しい。それじゃあ、じゃあね、瑠奈。」
「…バイバイ。」
怒りながらも、ちゃんとバイバイ、と言う神無月さん。…本当にお父さんのことが好きなんだろうな…。
優しいお父さんだし、納得のファザコンだ。そしてお父さんも、こんなかわいい娘がいるんだ。納得の親バカだ。
「はぁ~あ。ふみふみに気づいてもらうまで内緒にするつもりだったのに……」
「カンちゃ……神無月さんは、最初っから私に気づいて…?」
「そりゃあね。最初は、性格がめっちゃ変わっててびっくりしたけどね。」
「うっ……昔よりごみカスになっててごめんね…」
「そんなことないよ。今日までのやり取りで、根っこの部分は何も変わってない。優しくて、かっこいいふみふみのままだって、私は思ったよ。」
「神無月さん……!」
昔の私を知ってて、今の私も知ってる神無月さん。
そんな人は、この世に家族と神無月さんしかいない。
そして、それを知ってるみんな、今の私を否定しない。
本当に、私は、周囲の人間に恵まれてるな…。
「あ、あと、私のことは、カンちゃんって呼んで?」
「え、でも…」
名字変わってるし…
「神崎も、神無月も、どっちもカンだよ?」
「………確かに。」
あ、ほんとだ。
じゃあカンちゃんじゃん。
「改めて…これから、末永く、仲良くして下さい!よろしくお願いします!カンちゃん!」
「…え、なに?告白?」
「えっ!?ど、どこがですか!?」
「私は別に、親友でも、恋人でも、どっちでもいいけど~?」
ここぞとばかりに、かんなづ…カンちゃんが煽ってくる。
「もう!からかわないで下さい!私にとっては、一番仲良かった子との再会なんですから!」
「……ふみふみ、やっぱり、根っこの部分は元気っ子だよね。」
「え?…あ、すみません!」
勢いあまってカンちゃんに近づき、そのまま両手を握ってしまっていた。
無意識って怖い…
「そういうことなら、今まで会えなかった時間を一気に埋める方法があるよ?」
「…どういうことですか?」
「ここ数年間分、濃いイチャイチャをすればいいんだよ!」
「イチャイチャ…?」
イチャイチャって…なんだ?
「仲良くするってこと!」
「濃い仲良く…?」
濃い仲良くって…なんだ?
「一緒にお風呂入るとか~?お泊りとか?一緒のベッドで寝るとか~?朝一緒に登校とか~?あ、今言ったの全部実行できるじゃ~ん。偶然だね~!」
「カンちゃんが言葉を選んで発してるんだから、必然ですよ。」
「なんか私に対しての当たり強くなった?」
「神無月さん、としてではなくカンちゃん、として見てるんですから。」
「いいね!最高だ!」
今のカンちゃんなら、そう言ってくれると思った。
「それで?お泊り、出来る~?」
「…お母さんに言ってみないと…そもそも、カンちゃんのお父さんには言ってあるの?」
「後で言っとく!どうせ大丈夫だから!」
「お泊り……」
お泊り……実は、人生で一度もしたことがない。
…いや、友達の家へのお泊りは、したことないってだけね?家族旅行とかでお泊りとか、修学旅行とかのお泊りはしたよ?
そんな、友達とのお泊りをしたことがない私だが……カンちゃんとなら、大丈夫かも…というか、カンちゃんで出来ないなら、もう他の誰でも無理だもん。
うん。ここは勇気だして、お泊り、しよう!




