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神無月 瑠奈とのデート③

「ふみふみ、食べるもの決まったら言って?」


「分かりました。」



 今は、お昼ご飯を食べに店に入っている。どこに食べに行くかで譲り合った結果、安くて美味いの頂点のような、このファミレスに決定した。

 なんだかんだ、来るの結構久しぶりだな……あ、メニュー結構変わってる…でも、相変わらず超安い…



「ふみふみ、ドリンクバーいる?」


「あ、ドリンクバーはいらないです。代わりに、コーンスープを一つ、お願いします。」


「おっけー。」



 いつの間にか、紙に番号を書く方式は終わっていて、今はバーコードを読み込んで、電子でやるらしい。

 ……いや、紙の時代なんて私が産まれるより前の話じゃないか。何を言ってるんだ?



「私は~、ハンバーグとコーンスープとピザ!」


「じゃあ私は…シンプルなドリアでお願いします。」



 前にむっちゃんとサイゼ行ったときは、むっちゃんとの量の差が半端なくて、もう一品ハンバーグを頼んだのだが、結局お腹いっぱいになっちゃったので、今日はドリア一品のみ。



「それじゃあ頼むね~。」


「お願いします……あ、先にお金渡しておきますね。」


「いーよいーよ別に。私が出すよ~。」


「え、いや、それは流石に…」


「こう見えて私お金いっぱい持ってるから~!」



 みんな奢りたがるのはなんなんだ……?

 何はともあれ、奢りは私の友達感覚的にアウトだ。



「いや!自分の分は自分で出します!」


「おぉ…今日一の勢いをふみふみから感じる…」



 そして、私は、無言でバッグからサッと財布を取り出す。ここは、神無月さんに何を言われても、引けない。



「断固たる決意をふみふみからひしひしと感じる……仕方ないな~。そこまでいうなら、割り勘にしよう。…ふみふみって、やっぱり時々頑固だよね。」


「そんなことないですよ…」


「お待たせいたしました。こちら、コーンスープでございます。」


「あ、ありがとうございます……」


「……アーちゃん?」



 亜沙子ちゃん…?それって、クラスメイトの?

 どこ?昼時だから、席は全部埋まってるけど…それらしい人物はいない…気がする。



「か、神無月さんと夏子さん、ですよね…?」



 ………あ、店員さんが、亜沙子さんだったのか。

 顔見てなかった……もちろん、顔を見れば気づいてたと思うけど、声だけじゃわからなかった…



「うん!そうだよ~。アーちゃん、ここでバイトしてたんだ!」


「はい。それよりも…ミッションでも同じチームで、今も一緒に遊んでるなんて、リリームーンの皆様方は本当に仲が良いですね!」


「もちろん!あ~、そういえば、私が宿屋で寝てる時にふみふみとアーちゃん、会ったんだっけ?」


「はい。アーチャー姿もかわいかったですが、私服姿もかわいいです!夏子さん!」


「えぇっ!?あ、ありがとう…。」



 急に矛先がこっち向いてびっくりした…



「亜沙子さんも、バイト姿も、剣士の姿も、どっちも似合ってます!」


「ありがとうございます!」



 亜沙子さんは、銀髪ロングのポニーテール。剣道部に入っているらしく、ものすごく真面目な人、というイメージが強い。

 最初の頃は性格とか知らなかったから何も言えないが、今は、本当に、委員長や副委員長に似合うような性格の人だと思う。

 絶対、委員長と副委員長を早めに決めたのは間違いだよ。もっとみんなのこと知ってから決めるべきだったんだよ…



「え~、ふみふみ、アーちゃん、私の私服は~?」


「最高にかわいいです!!」

「会った時にも言いましたけど、似合ってますよ。」


「ありがと~!もちろん、アーちゃんもかわいいよ!」


「ありがとうございます!…では、私はここで失礼します。引き続き、お出掛け楽しんでください!」



 …本当に、熱血って感じだったな…神無月さんとめっちゃ気が合いそう。



「アーちゃん、バイトしてたんだ……ふみふみは、バイトする予定とかある?」


「私は絶対にないですね。」


「そお~?…私はねぇ、ちょっと興味あるんだよねぇ。お金関係なく。バイトそのものに。」


「凄いですね…」


「でも、パパが許可してくれるかなぁ…パパ、過保護だから…」



 ………神無月さん、お父さんのことパパって呼ぶんだ…かわいい。

 過保護なパパ、ねぇ…



「過保護ってことは、それほど大事にされてるんですね。」


「そうなんだよ~。夜遅くまで仕事してて家に一人にしちゃって申し訳ない。ってね……」



 神無月さんが私から目を逸らし、一瞬笑顔が消えた。



「それで責任を感じてるのか知らないけど、お小遣いは多すぎるし、休日は自分よりも私を優先してくれるんだよね。」



 なんだか暗い空気感に私は怖気づいてしまった。ただ、返事はしないといけないと思い、コーンスープをスプーンでかき混ぜ、「良いですね。」とだけ言った。



「でも、優しいし、私は……お――――」



 不意に、神無月さんと目が合う。

 その顔は、神無月さんとは思えないほど暗く、笑顔はなかった。その顔は、まるで、私のような―――



「あ、あははー!ご、ごめんね?なんか、変なこと言っちゃって!」


「………いえ…」



 こんな時、どう反応すればいいのか、どんなことを言えばいいのか分からない。

 私は、ぎこちない動きでコーンスープをスプーンで一口飲んだ。口の中がものすごく熱い。それでも、私は、声を発することが出来なかった。



「お待たせしました。こちら、ミラノ風ドリアでございます。」


「あ、私です。ありがとう、亜沙子さん。」



 それから、私の分と、神無月さんの分が届き、神無月さんからピザを貰ったり、遠慮したり、雑談したりした。



「ふー、腹八分目!」


「健康的ですね。」


「よ~し、それじゃあ、会計してくるね~」


「あ、私も着いて行きます。」



 会計は、レシートを機械にピッとやって、お金を払うだけ。完全無人だ。



「あ、あの!」


「んー?あ、アーちゃん。どったの?」


「さ、先ほど、デート…と言っていましたか?す、すみません、盗み聞きするつもりはなかったんですが…」


「別にいーよ。聞かれて困る会話してないし。」


「デートじゃないです。」



 変な誤解をされる前に訂正しておかないと。危ない危ない。デート(仮)だし。それすなわちお出掛けと同義だし。



「あ、そうなんですか…」


「何言ってんの!デートだよ!そう約束したじゃん!!」


「ちょ、神無月さん!それ今言っちゃダメですよ!」


「ミッションでも二人チームで、今日はデートを……お、お二人はそういうご関係だったんですね!」


「ち、違うよ!?違うよ!普通の友達だよ!」


「でも口にちゅーされたからな~」


「やっぱり…!」


「いや、あれは仮想空間で…」


「大丈夫です。分かってますよ夏子さん。」



 両手を前にやり、落ち着いて、というジェスチャーをする亜沙子さん。

 よ、よかった…神無月さんの冗談だと、気づいてくれたんだ…



「誰にも、言いませんから!」


「えぇっ!?」


「それじゃあ!引き続き、デート楽しんで下さい!」


「え、ちょ、待ッ――」


「……行っちゃったね。」



 …誤解されたままなんだけど?

 え、いや、別に私は誤解されてもされなくても、まぁ、亜沙子さんなら誰にも言わないだろうから別にいいけど、神無月さんはそれで良いの?



「どうするんですか…?」


「…まぁ、デートは嘘じゃないし~?ちゅーも、嘘ではないし?」


「誤解されたままですけど…」


「…まぁ、アーちゃんなら誰にも言わないだろうし、別に実害は無いでしょ~。アーちゃんには、覚えていたら後で本当のこと言っておくよ~。」



 ………まぁ、神無月さんが良いならいいや。

 神無月さんの言う通り、実害は無いし。



「それで、午後はどうするんですか?」


「……ふみふみって、小学生のころから家変わってない?」


「?…うん。変わってないよ?」


「ふ~ん……」



 急にどうしたんだろう…なんで、家の話?



「じゃあ、次の遊ぶ場所が決まったよ。着いてきて~。」


「分かりました。…因みに、どこへ?」


「それは着いてからのお楽しみ~。」



 何故秘密……まぁ、別にいいけど…なんか、クラブとか、ザ・パリピみたいなところはやめてね?神無月さんに言われたら入るしかないけど…


 電車を使って来た道を戻る。……いや、この道、朝私が来た道だよ?

 まさか今から行くところが私の家の近くなんて…超偶然。



「は~い!着きました~!」


「……ここは…?」


「私の家でーす!」


「え!そうなの!?私と家めっちゃ近いじゃん!徒歩五分圏内だよ!」



 まさか神無月さんとこんなに家が近かったなんて…ここ、月読命学園から結構離れてるのに。



「ま、私は知ってたんだけどね~。」


「え、どうやって?」


「内緒~。ほら、入って入って。午後はおうちデートだよ!」


「おうちデート…」



 他の人の家に入るのは、小学生の頃のを数えなかったら、むっちゃんを除いて初めてだ。

 神無月さんの話だと、今日は親御さんがお仕事で家にいないらしい。土曜なのに…大変な仕事なんだな…。



「洗面所はそこで、トイレはそこ!そして、二階上がって~…ここが私の部屋~!」


「おぉ…かわいらしい部屋ですね。」



 かわいらしいピンクのベッドの上には人形がチラホラあり、カーテンは水色。絨毯はピンク色で、女の子の部屋。って感じがする。



「小学生の頃よくやってたゲームやろ~。一人じゃつまんないからさ。パパはゲーム下手だし!」


「小学生の頃やってたゲーム…?それ、個人差ありません?」


「うちらの世代は確実にやってるよ!天下の〇天堂のWee!!」


「ウィーですか!懐かしい!」



 Weeウィーとは、私が小学生の頃に流行ったゲーム機。よく妹とも、友達とも、遊んだ。

 人生で一番ゲームが楽しかった時期だと思う。



「よっしゃ!まずはWeeパーティーだ!嘘つきハントやろ!」


「いいですね!やりましょう!」



 すげぇ、ものすっっっごく懐かしい気分。

 Weeリモコンを持って、先端をテレビに向かってかざし、操作する。懐かしすぎる感覚だ。



 このミニゲームは、Weeリモコンを、横に持って遊びます。



「!このナレーション?も懐かしい!」


「……本当に、昔に戻ったみたい。ふみふみも、昔みたいに明るいし。」


「神無月さん!ほかのカセットとか持ってるんですか?」


「いっぱい持ってるよ~。多分、2、30は持ってる。ほら、これ。」


「おぉ!凄い!配管工が姫を救いに行くゲームも!星の戦士のゲームもある!これ、十六夜さんも喜ぶやつですよ!」



 …いや、よくよく考えれば十六夜さんなら持ってそう。…でも、Weeは一人よりふたり、二人より三人。と、人が多い方が絶対に楽しい。

 今度、十六夜さんに聞いてみよう。Wee持ってるかどうか。



「ほんとハイテンションだねぇ…でも、私とデート中に、他の女の名前出すなんて…これは、お仕置きが必要だね?」


「え?お仕置き…?」


「うん!そうだなぁ…じゃあ、ツーショット撮ろ~。」


「…お仕置きなんですか?それ。」


「まぁ、いいからいいから!はい!もっと近づいて~!」


「は、はい。」



 神無月さんに近づくと、そのまま神無月さんは右手を、首の後ろを通って私の右肩に置き、そのまま顔をグッと近づける。頬と頬がぶつかる距離まで接近する。

 私は何をすればいいのか分からず、片手を小さくピースして、もう片方の手もピースしてしまった。



「…ふみふみ、ダブルピースで、ポーズは最高に楽しんでるように見せかけて、顔が作り笑いだよ。別にいいけど。」


「神無月さんはいつでも自然な笑顔が出来て凄いですね…」



 神無月さんはどんな時でも笑っているが、決して苦笑いや作り笑いなどではない。ちゃんと、自然な笑顔なのだ。



「よ~しそれじゃあ、ふみふみが待ちきれない!って顔してるので、ゲームしよ~!」


「え、そ、そんな顔してました!?」

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