神無月さんとゲーセン
「じゃあ次はメダルゲームやろ!」
「メダルゲーム…?」
「そう!こういう台に自分のメダルを入れて、そのメダルを使って遊ぶの。このゲームだと、メダルを賭けて、当たったらその倍率分もらえる。ほかのゲームもいろいろあるけど、だいたいは運ゲーだね〜。」
「…楽しそう!」
めっちゃ楽しそう!見た感じ、大量のゲームの種類があるみたいだから、多種多様な遊び方が出来そう!
……で、メダルって何?何円で何枚もらえるの…?
「はいこれ。とりあえず100枚。」
「え、これ…今、どこから…どうやって出したの?」
「私のメダルバンクから。三か月に一回はほぼ必ず来てたから、結構あるんだよね~。遠慮せず使ってよ。」
「あ、ありがとう……」
100枚が多いのか少ないのか分からないけど、見た感じそう多いわけでもない…?いやでも、このちっちゃいバケツみたいな容器が思ったよりも入るから、100枚が少なく見えるのかな…?
「まずはやり方説明するから、そしたら勝負だ!」
「勝負?」
「そう!メダルが最終的にどっちの方が多くなってるか、そういう勝負!」
「増やせるかなぁ…」
それから、目の前の台の説明を聞く。
これは、1~6の馬単か、馬連の二つしかない競馬、のようなゲームだ。馬単が6しかいないとはいえ、馬連は相当な数になっていて結構難しそうなので、とりあえず1番に3枚賭ける。
「ふみふみ、そんなちまちましてたら増えないよ~?私は~こうだー!」
「え、50枚一気!?…そんなに使っちゃって大丈夫なんですか…?」
「ハイリスクハイリターン!これぞ漢!」
「神無月さん男じゃないです…」
……いや、もしかして、この発言危険か?
心は男の可能性も…いやでも、かわいいもの好きだし、髪型も…いや、これもまた危ない発言か!?
変な失言する前に黙っておこう。…黙ってはいるけど。
「当たった!!……44枚!6枚負け!」
「私は普通に外れました…」
冷静に考えて、6分の1だもんな……それに、当たってもたったの3倍で9枚しか増えない…
もうちょっと、神無月さんを見習って、たくさんメダルを使おうかな……
「次は全ベットしよーかな~」
「え!?い、いや、それは流石に…終わってしまう可能性とか、あと、なんかもったいなくはないの…?」
「うーん、確かに、100枚をたった1ターンで使い切るのはものすごくもったいないかな。まだまだほかの台でも遊びたいし、なによりこれは本当に運ゲー。それに100枚は流石にやりすぎか…」
「う、うん。流石に全ベットは―――」
「だが断る!!冒険のない、平穏しかない人生なんて、くれてやるさ!ふみふみ!」
「露伴さん!?」
「漢にはなぁ…やらなくてはならない、逃げてはいけない時がある!!」
「神無月さんやっぱり男だったんですか!?」
「……やっぱりってなに?」
ミッションの時も、男顔負けの力に、根性。めっちゃ戦闘狂だったし。
いやでも、神無月さんは歴とした女の子だ。ソースは仮想空間での神無月さんの胸。ちょっと柔らかかったし。
つまり……神無月さんは男に憧れてる…?
「どこからどう見てもかわいい女の子でしょ。」
「つまり、憧れ…神無月さんの憧れは男だったんですね……」
「…いやまぁ、たしかに憧れてるけど…おとこって、男じゃないよ?漢だよ?」
「…………?」
「口で言っても伝わらないか!えっと、性別としての男じゃなくて、もっと難しい漢字のほうの漢。漢字の漢だよ。そっちね?私がさっきから言ってるのは。」
「……あ、…そういうことですか…」
確かに、言われてみればそうだ。
全部、合致する。
「だから、私は、あの時ふみふみを守った。漢の選択に悔いはないってことだよ。」
「……確かに、あの時の神無月さんは本当にかっこよかったです。」
「そ、そお?…なんか照れるなぁ…」
褒められ慣れてるはずなのに、本当に照れてる様子の神無月さん。
かわいいとかは言われなれてても、かっこいいは言われ慣れてないのかな…?
「話は戻って、……よし!100枚賭けたんだ!当たれー!」
「私だって3枚×10、あわせて30枚賭けたんだし、少しは当たってくれ……!」
「お~!118枚~!いえ~い」
「15枚……15負け…」
「まぁ、こんなもんだよ。メダルゲームって。だいたい減って終わるんだ~。」
「難しいゲームだ……」
「でも、その分数千枚レベルの勝ちを引いた時の快感はすごいよ~!」
数千枚…?
100枚での遊びを、10回も出来る……ヤバいな…
そんな当たり、現実的なのかな……
その後も、競馬のゲームだけでなく、寿司のゲームや、射的のゲームや釣りや魚を操るゲームなど、色々やった。
結果―――――
「100枚win!」
「100枚lose…」
神無月さんは、寿司で大当たりを引き、最終的に100枚勝ち。私は、一気に減ったわけではないが、徐々に徐々に減っていき、最終的に0になった。なんか、一番悲しい終わり方だ。
「じゃあ、ふみふみのメダルもなくなったことだし、いったん別の遊びしよっか。」
「別の……バスケとか、ですか?」
「お、いいね!早速やろ~!」
バスケ…バスケは、小学生のころ、女子ミニバスケットボール少年団に通っていたから、得意だ。
スポーツの中で……いや、身体を動かすことの中で、一番自信がある。
「ふみふみ、バスケやったことあるんだし、これ得意じゃない?」
「得意そうではありますけど……バスケやったことあるって、言ったことありましたっけ?」
「……あったよ。うん。前、言ってた!」
そうだったんだ……多分、昼の雑談タイムとかに言ったのかな…会話を繋げることに必死で、内容覚えてないことなんて結構あるし、多分今回もそれだろうな…
「それより!得意なら、これ5ステップまでいけるかも!」
「5ステップ?」
「1ステップごとのノルマをクリアすると、続いていくの。これめっちゃ難しくて、バスケやったことある私でも、3ステップしかいったことないの。」
……見た感じ、無理そう…1、2、3までは多分行ける。ただ、4からは体力面的にかなり厳しそう。
「よし!じゃあ、ふみふみ、これも勝負だ!」
「勝負好きですね…。」
「勝負って方がより本気になれるじゃん?」
「分かる!」
やっぱり、ゲームでもそう。AIと戦うよりも、人間と戦った方が楽しいし。
勝負ってなると、やっぱり勝ちたいし!だからこそ、本気になる。
「ふっ…漢には、負けると分かっていてもやらなくてはいけない勝――――」
ビー
「あ、始まった。」
「はー!?空気読めない台だな!私が決め台詞を言ってる途中でしょーが!」
「……」
それは、神無月さんの言うタイミングが悪かったからでは…?とは思ったが、口には出さない。普通に、何もなかったら言ってたと思う。
ただ、ゲームがスタートしてたから、言わなかった。…言わなかったというより、言えなかった。私は不器用だから、2つのことをいっぺんにできない。バスケでシュートを入れることに集中してたから、そもそも喋ることが出来なかった。
「まずは1ステップ終了…え、ふみふみすご…私より15点も高いじゃん!」
「バスケは得意分野です!」
「おぉ…今日一の元気…」
そして、休む間もなく第二、第三と進んでいった。
「あー!私はここでリタイアだ…ふみふみ、第4ステップ頑張って!」
「はぁ、はぁ……き、きついです…体力が…」
案の定、体力が終わっている。
もちろん、この体力じゃ第4ステップをクリアできるわけがなく、第5ステップにはいけずに終わった。
「惜しかったね~ふみふみ。」
「た、体力が、はぁ、き、キツイです……」
「日頃運動してない証拠だな~?」
「うっ……運動、嫌いではないんですけど…」
嫌いじゃないけど、やることはほとんどない。外を走るのだって、何か目的がないとやる気が全く起きない。運動不足解消のためっていっても、これといった実害は出てないから、やっぱりやる気は出ない。
筋トレだって、やる気は出ないし……
「よーし!もっと回るぞー!次はアレ!反射神経テストで勝負だ!」
「光ってるボタンを押す…?」
「それ終わったら次は音ゲーとか、ダンスダンス革命とかやろー!!」
「体力凄いですね…まだ午前ですよ…?」
それから、無尽蔵の体力を持っている神無月さんにギリギリまで着いていっていたのだが……遂に限界を迎えた。
「も、もう無理ですぅ……」
「ありゃ、ふみふみが死んじゃった。」
「もう、体力ゼロです…」
「マカセテ~!そうなると思って、もう今日のプランは練ってあります!まずは、あのデカいメダルゲームに座って、適当にメダルゲームしながら雑談をしよう!」
「……あれ、大人用じゃないんですか?」
「確かに、今までやったメダルゲームと違うね〜。結果がすぐ出ることはないけど、その分一つの当たりがデカい!あと、ゆっくり出来るから雑談に最適!」
…いわゆる、流れ作業で出来る…的な?
「あれ、でも、一つしか席空いてないですよ?」
「これは二人で一つだよ、ふみふみ。…こんな時も勝負思考なんて…もしかして私よりも戦闘狂なのカナ~?」
「ち、違うよ!私は平和主義です!」
私は戦闘狂とはかけ離れてる性格だ。勝てる勝負すらしない女だし。……いや、素の性格…家での私だったら、勝てる可能性のある勝負は挑む派か…?それでミナに勝ったことは一度も無いけどね…
「この椅子が横に広いのも、二人でやるのを想定されてるからだよ。…多分。適当だけど。」
「たしかに、横に長い…」
「よ~し、それじゃあ早速、雑談たーいむ!ふみふみの昔の性格は?」
「昔の性格……」
……普通に、言いたくないなぁ…昔と今の私、全然違うし…。
「ふ、普通ですよ。今と変わらず…」
「ふみふみ、嘘は禁止だよ?」
「………」
「そんなに言いたくないの?」
「そんなことは…あるんですけど………今よりは、元気でした…明るくて、友達もいました…」
「ふ~ん…」
……え、冷たくない?
「え~!ふみふみが~!?明るかったの!?想像つかな~い!」
くらいの反応はあると思ってた。
「その友達の中に、今も友達の人はいるの?」
「一人もいないです…」
「……本当に?」
「はい。むっちゃんと出会ったのも、中三ですし…」
そもそも、月読命学園が特別過ぎて、万が一私がその友達を忘れていたとしても、小学生の頃の友達が偶然いるとは思えない。
まぁ、そもそも、私が数少ない友達の顔と名前を忘れるわけがないんだけどね。マジで。万が一にも。
「私はねぇ、一人、いるよ?」
「え、小学生の頃の友達が、ですか?」
「うん。中学は違ったんだけど、超偶然、その子も月読命学園に入学したみたいで……びっくりしたなぁ。」
「すごい偶然ですね…」
「でも、私、多分忘れられてるんだよね、その子に。」
「えっ!神無月さんをですか?」
こんなに個性的な人を、忘れる…?
この学園に来てる時点で記憶力はあるはずだから、忘れてるなんて考えにくいけど…
「そうなんだよ~。ちょっとショック…だったり?」
「神無月さんを忘れるなんて…ある意味凄いですね…」
「…どういう意味?」
「だって、神無月さんですよ?一回見たら、絶対忘れませんよ!かわいくて、誰にでも分け隔てなく接してくれて、いつも元気で、近くにいるだけで周りのみんなも元気付けることが出来る、みんなの印象に必ず残るような人ですよ!?あと、ミッションの時も、私みたいな足手まといと一緒になったのに、文句ひとつ言わず、それだけでなく―――」
「ちょ、ちょ、止まって!…もう!急にどうしたのさ!そんなに褒めて、私を口説いてるの?!」
「えっ」
まただ。普通に、友達を褒めてるだけなのに、口説いてると勘違いれる。本当になんで?
これで、遂に四回目だ。
ミナ、むっちゃん、十六夜さん、神無月さん。
どうしてだ…友達の良いところを言うのなんて、普通でしょ…?
「い、いえ、口説いてるわけじゃなくて……ぜ、全部本心で…」
「やっぱり口説いてるじゃん。…え~、ふみふみ、もしかして私のこと好きなの~?」
「え、あ、いや、そりゃあ、好きですけど…」
「えっ!?」
「友達として…」
「…………」
神無月さんを嫌いになる人なんて、いるはずがない。いるとしたら、神無月さんに対して嫉妬するような人だけだよ。
いや、まぁ、嫉妬はしても、嫌いにはならないかもしれないけどね。
「はぁ~あ。私がふみふみで遊ぼうと思ったのに、逆に振り回されちゃったよ~。」
「……え、私で遊ぶ…?振り回された…?」
「おぉ!!見てふみふみ!777!ジャックポットだよ!」
「え!本当だ凄い!」
こういうのって、本当に当たるんだ…
「ここからどこまで続くかが大事なんだよ!」
そうして、ジャックポットが当たり、ジャックポットで得たメダル全てを回収して、神無月さんのバンクに入れる。
「まさか最終的に500枚も増えるとは…これもふみふみのおかげかな?」
「いや、神無月さんの力が120%ですよ。」
「その20%はなんなのさ。」
「私を連れているという-20%です。」
「なんでマイナスなの…相変わらず自己肯定感が最底辺すぎるよふみふみ。」
「そんなこと無いですよ?」
実際、私は運が悪いし、私に説明する手間もあったし、100枚負けてるし。
「それじゃーお昼だし、どこか食べいこー!どこいくどこいく?」
「テンション高いですね…」
「そりゃーふみふみとのデートだからね!デートはまだまだこれからだ~!!」




