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神無月 瑠奈と夏子 文月

「……制限時間が終わりました。各自仮想空間での活動を停止します。ミッション、お疲れさまでした。」



 狸寝入りをしていたら、ミッションが終わった。

 私のレベルは、最終的に40だ……本当は、6レベルしかあがらないはずだったのに。


 そして、仮想空間へ来た時と同じように。ストンと意識が落ちる。



 §



「……」



 意識は戻った。けど、起き上がれない……別に、身体が動かせないわけじゃない。…そう、別に、起き上がれないわけじゃない。起き上がりたくないだけだ。

 天井には、真っ白な天井。ここどこだよ…



「みっちゃん、大丈夫?」



 むっちゃんの声がする。ということは、本当に現実に戻って来たんだ…


「うん…」


「ふみふみ、大丈夫?」



 真上を向いていたら、ヒョコッと、神無月さんが現れた。


 私を、心配そうに見つめる、神無月さん。


 その姿に、色々思うことはあったが、何よりも先に体が動いていた。



「ギエッ、ちょ、く、苦しいぃぃぃ…」


「えっ!?急にどうしたのみっちゃん!?」

「お?遂につきっちもかわいい女の子に目覚めた?」

「ミッションで何があったのよ……」

「そういうのは二人きりの時にしてくれないかしら?」



 なんか、あることないこと色々言われているけど、そんなのは関係ない。



「仮想空間っていうのは頭では分かってたけど……」


「泣くほど!?」


「大丈夫?みっちゃん、どこか痛かったりする?」


「本当に、あなた達の身に何があったのよ…」


「え、えと、えとえと、話すと長くなるんだけど……簡単に言うと、ふみふみの目の前で私が死んで…」


「え!?!?ルナっち死んだの!?」


「そうなんです…しかも私のせいで…」


「え?ふみふみのせい?どこらへんが?」


「最後、神無月さんが私を助ける選択をしなければ、死ぬのは私一人だったのに…」


「いやいや、あれは走っても間に合わなかったって。投げだから間に合ったんだよ!」


「……だとしても、倒した後のボスを分析して、自爆があることを早めに分かっていれば、そもそも二人とも逃げれたかもしれないのに…」


「倒したあとにあんなのがあるなんて普通誰も思わないよ!」


「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いて?特に、つきっち、深呼吸。」



 ……確かに、今の私は寝っ転がって神無月さんを抱きしめて、泣いてる、意味の分からない奴だ。

 いったん落ち着こう…



「みっちゃん、今日はもうショートホームルームもなしだから、時間はたくさんあるから、とりあえず、何があったのか、ゆっくりでいいから、話してくれる?」


「…うん。」



 それから、睦月ママ…じゃなかった。むっちゃん達に、ことの経緯を話す。



「あ~、それは精神的にキツイね~。」


「みっちゃんはガラスのハートだから、そういうのに人一倍敏感だもんね。」


「あなた達、もしかしてダンジョンに潜ったのかしら?」


「そうなんだよ~。ダンジョンボスの自爆技に巻き込まれちゃった。」


「ダンジョン行ったのね…神無月、あなた、レベルは?」


「え~っと、ボスの経験値はゲットできなくて、最終的に28レべ!」


「ということは……いや、今聞くことではないですわね。」


「とりあえず、みっちゃん、今日はゆっくり休んでね。環境の変化とか、色々と。みっちゃんの脳は、今めっちゃ疲れてると思うから。」


「うん…ありがとう。」



 やっぱりむっちゃんは天使だな…。

 まず、声が優しい。そして、性格も優しい。私なんかのことを、気にかけてくれる。多分、お願いすればよしよしもしてくれるし。



 §



「おはよーふみふみ!」


「あ、お、おはよう…」


「んーなにー?もしかして、まだ気にしてるの?」


「そりゃあ………私のせいで、神無月さんは死んだんだし……私のせいで、レベルも上がらなかったんだし…成績も…」



 逆に、神無月さんはよく、そんなに、何もなかった。みたいな顔してられるね……仮想空間とはいえ、死んだんだよ?



「もう気にしなくていいよ!」


「でも…」


「私は気にしてないから!」


「でも…」


「気にされる方が気になるよ!」


「でも…」


「……はぁぁぁぁあぁぁ。ふみふみって、思ったよりも頑固だよね。頑固な私が言うのもなんだけど!私は、あの選択に後悔してないから!!」


「頑固……私が?」


「頑固だよ!そんな頑固なふみふみは、このままだと一生引きずりかねないので、今日…ふみふみを一日中操れる権利を貰います!」


「そんな宣言しなくても、もう持ってるよ。……というか、一日に限らず、一生…」



 私のせいで、成績も下がり、怖い思いもして。それなのに、優しくしてくれるし、いつも通りに接してくれるし、本当に頭が上がらない。

 そんな人からのお願いを、そもそも私が断わるわけがない。



「どんだけネガティブなの!?」


「そうなのですわよ…夏子さんは、自己肯定感が低すぎてもはや人権が無いレベルなのですわ。前一緒に遊んだ時も、それはそれは自己肯定感が低かったですのよ…。」


「私は自己肯定感低くないよ…これが、正当な評価だから……」


「「………」」


「へいむつき、超ネガふみふみの対処法は?」


「うーん……とにかく褒めまくって、とにかく一緒にいること、かな。多分、一番効果的なのは妹の、水無ちゃんだと思う。」


「つきっち妹さんいたの!?」


「夏子さんの妹……気になりますわね。」


「おっぱいは成長したの?水無ちゃん。」


「なんでおっぱい?」



 ……なんか、私の妹の話で盛り上がってる……なんで…?



「えーっと…みっちゃん、水無ちゃんについて、どこまで言っていいのかな…?」


「全部言っていいよ。私より小さくて、私とは比べ物にならないほどかわいく、頭も良い。多趣味で、何でもできる。」


「評価が高いですわね。」


「事実ですので……」



 これもまた、別に評価が高いわけじゃない。完全完璧な真実だ。私の目に狂いはない。



「水無ちゃんは、みっちゃんの言った通り、すごく頭が良いんだよね。あと、すごく優しくて、私が時々おうちに遊びに行くときも、嫌な顔一つせず遊んでくれるんだ。」


「そうなんです…私と違って天才で優しい妹なんです…」


「みっちゃんに似たから、優しくなったんだよ。きっと。」


「相変わらずむっちゃんは優しいね…ありがとう…」



 私の周りには本当に良い人しかいないな……



「このネガ状態のふみふみ、略してネガふみをいつものふみふみに戻してくるよ。ということで、今日だけじゃなく、明日のふみふみも私にちょうだい?」


「……え?」



 §



「お待たせふみふみ~!」


「あ、神無月さん。」



 明日のふみふみをちょうだい?というのは、明日一緒に遊ぼう?という意味らしい。

 私が休日にやることなんて勉強くらいしかない。まぁ、つまるところ、私は暇人なのだ。



「五分前に着いたのに、早いねぇふみふみ。」


「神無月さんを待たせるわけにはいきませんから…。」


「そんなの気にしなくていいのに~。それじゃ、今日は朝から来てくれてありがとうってことで……どこ行く?」


「え」



 あ、決まってなかったの!?

 ヤバい。よくよく考えてみれば、私、ミナ、むっちゃん、十六夜さん以外とお出掛けしたこと無い……そしてみんな、私が何もしなくても、私を導いてくれてたから…その、いつもの癖で何も考えていなかった。

 他力本願すぎる…



「か、神無月さんが行きたいところはないの?」


「私はねぇ……朝ごはんは食べてきた?」


「あ、私、朝は固形物食べると午前中ずっと腹下しちゃうから…朝は、あの、野菜のスムージーだけなんです。」


「え、そうなの?お腹空かない?」


「基本的に、私午前中ずっと家だから…」



 家で、机に座って小説、漫画を読むか、勉強するか、そのくらいしかないから、全然お腹は空かない。

 まぁそりゃ、動いてないんだもん。空くわけない。



「じゃあ、朝ごはんは食べた扱いで良くて、うーん…東京は、前、姫と行ったらしいし、二番煎じ感がなぁ…」


「…ごめんなさい…私が、何も考えていなかったから…他力本願だったから…私なんかのために悩む時間を作ってしまって……」


「全く。分かってないなーふみふみ。こうやって、悩んでる時間もデートの醍醐味なんだよ!」


「デート…?」



 なんで、十六夜さんも、神無月さんも、ただのお出掛けをデートって言うんだろう……絶対に、100%デートじゃないのに。



「デートではないですよね…?」


「デートだよ?」


「恋愛感情が…ある?」


「えー?それはどうだろうね~?」


「やっぱりデートではなくお出掛けでは…?」


「細かいことは気にすんなー!それに、今日のふみふみは私のもんなんだから、私がデートって言ったらデートだ!」



 デート…デートかぁ……



「デート…デートって、何をすればいいんでしょうか…?」


「デートって名前のお出掛けって思えばいいよ。デート《おでかけ》。」


「それはやっぱり普通にお出掛けなのでは…?」



 お出掛けとデートの違いなんて、恋愛感情の有無だし……



「もしかして、私とデートするの、嫌?」


「そ、そんなことは決してありません!私としては光栄ですが…」


「なら大丈夫だね~。」



 …神無月さんの上目遣い「嫌?」攻撃に勝てる人この世にいないでしょ…。まぁ、私の場合は上目遣いじゃなくても勝てないけど。



「今日はふみふみの私への責任感を無くすのが目標なので、新鮮な思いで上書きさせていきたいと思いまーす。ということで、ゲーセン、行ったことある?」


「ゲーセン……行ったこと無いです…」



 むっちゃんとのお出掛けではゲーセンに行ったことはないし、ミナとは超時々お出掛けするとはいえ、だいたい家で趣味に没頭してるのでミナと行くこともない。

 そもそも、なんか、「怖い」というイメージが強くて行けないんだよな…(ド偏見)



「おー、ラッキー!じゃあ、今日はふみふみの初めて、たくさん奪っちゃおうカナ?」


「言い方悪意ありますよね……」


「なんのことー?それじゃあ早速行こー!最寄りのゲーセンへ!」



 §



「ちょっと久々~」


「これがゲーセン…」



 ずっと何かしらの音が鳴ってる…神無月さんも、心なしか声をいつもより張っているような気がするし。

 私のいつもの小さい声じゃ、かき消されそう…。



「やっぱりまずはクレーンゲームだよね~。簡単そーなのやろー。」


「簡単そうなの…?」



 私には、全部難しそうに…あ、うまい棒くらいなら流石に落とせそうではあるけど……

 慣れてないところを一人で歩きたくないし……とりあえず神無月さんの後ろ着いて行こう。十六夜さんの時と同じく、私は神無月さんの影になる。



「これなら簡単そうじゃん!三回操作で、駄菓子を落とすだけ!」


「100円で三回も出来るんだ…」



 早速神無月さんがお手本を見せてくれるが…あんまり落ちない…



「あ~!無理だ!やっぱり私クレーンゲーム嫌い!!」


「神無月さんで無理なら私でも無理では…?」


「いいからいいから。こういうのはとにかく経験だよ!」


「わ、分かりました…」



 言われた通りにやってみるが…もちろん、結果は、ゴミカス。何の成果も得られなかった。三回もやったのに。



「クレーンゲームはやめだやめ!体うごかそーぜ!太鼓の玄人!やろ!」


「あ、これ、ゲームでやったことあります!」



 赤と青が来るから、タイミングよく押すゲーム。この場合、赤は真ん中、青は外側を叩くんだっけ?



「やり方は分かる?」


「赤は真ん中、青は外、ですよね。」


「そう!それじゃーここは三曲出来るから、先選んでいーよ。」


「え、いや、私初心者なので、神無月さんが選んでください。」


「そう?じゃあ遠慮なく~。」



 選択した曲は、意外にもアニソン。

 それも、国民的アニメという訳でもなく、世界的アニメという訳でもない、コアな層でもかなり限られる人がしっているようなアニソンだ。



「実はこの曲結構好きで、何回かやってるんだよね~。」


「こ、これってどの難易度がちょうどいいですか…?」


「ふみふみはリズム感ある?」


「人並程度には…」


「自己評価が底辺のふみふみが人並程度って言うことは結構リズム感あるな…?なら、星6……まぁ行けるっしょ!星6ら辺の難易度でいいと思うよ~。」


「わ、分かりました。」



 ま、まぁ、ゲームでもやったことあるし、多分行けるはず…

 神無月さんは、星7の鬼を選択している。星7なんて…ゲームでも難しすぎて出来たことないよ…簡単な星7なら出来るけど。


 曲が始まると、テンポよく赤と青が来る。時々、三つセットになって来たりしているが、まぁ、問題ない。両手あるのだから、なんとかなる。


 そして、特に困難に直面することなく、ノルマを達成した。



「お~!ふみふみ、クリアしるじゃん!」


「神無月さんもクリア、すごいですね…」


「一回ミスならければフルコンボだったのに……ふみふみにかっこいいとこ見せようと思ったのにーー!!」


「十分すぎるほどかっこいいですよ?」



 私の方にはサビでしか来なかった三連が、神無月さんの方には当たり前のように間奏とかでも来てたもん。目が追い付かないよ。



「それじゃー次はふみふみが決めていーよー。」


「あ、はい!じゃあえっと…これで!」

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