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気が付けばニチアサ世界に紛れ込んだみたいです  作者: 濃厚圧縮珈琲
第二部 第四楽章 戦場を駆ける

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待ち遠しい夏休み!忍び寄る不穏な影! Aパート

 金曜日に期末試験を終えて、平和な土日が過ぎ、再び迎えた月曜日。

 週明けの教室には先週とは打って変わって、和やかな雰囲気が漂っていた。


 試験という一大イベントを終えた解放感と、その結果を待つ微妙な緊張。

 そして何より――すぐそこまで迫っている夏休みへの期待。


 それらが入り混じった、落ち着かないような……それでいてどこか軽やかな空気だった。



 一方窓の外は薄暗く、しとしとと小雨が降り続いている。


 梅雨特有の重たい雲が空を覆い、景色は降雨でどこかぼんやりと霞んで見えた。

 湿気を含んだ空気が地面を這うように漂い、校庭の砂は黒く濡れ、至る所に水たまりを作っている。


 もし窓を開けていれば、じっとりと肌にまとわりつくような蒸し暑さに、誰もが顔をしかめていただろう。


 だが――教室の中は、まるで別世界だった。


 エアコンの効いた涼しい空気が、肌を撫でるように流れている。

 ほんのりと冷えたその空気は、外の湿気を忘れさせるには十分すぎるほど快適で。


 思わず、うとうとしてしまいそうになるくらいに。


 「……ふぁ……」


 あかりは小さくあくびを噛み殺しながら、頬杖をついた。


 黒板の前では教師が試験問題の解説を続けているが、その声はどこか遠くに聞こえる。


 チョークが黒板をカツカツと叩く音。

 感情のないロボットのように淡々と続く説明。

 

 もちろん、その内容は頭の中にほとんど入ってこない。

 

 この解説と振り返りこそが大事なのは去年の一年間で痛感していたが、どうしても浮ついてへにゃけた心には染み込んでくれないようだ。

 


 (うーん……なんか、ぼーっとしちゃう……)



 あかりは何度目か分からない欠伸をして、ぼんやりと視線を窓の外へと泳がせる。

 手元に置かれた答案用紙には赤ペンで書かれた点数と丸印が並んでいて、右上の点数欄には96という数字が書かれていた。


 「……えへへ」


 思わず口元が緩んだ。


 国語は安定して好成績だった。文章問題と文法問題の二問を間違えてしまっただけで、四捨五入すれば満点だと胸を張れるのだ。

 それ故に、解説も理解している事ばかりで、しっかりと聞いていなくても大丈夫だと、意識をふわふわさせていた。



 不安だった数学も思っていたよりずっと良くて、理科も少しミスがあったものの、大崩れはしていなかった。

 苦手教科も平均点は越えていて、これで菜月からの雷は回避できる。そう思うと自然と笑みが浮かぶ。



 (頑張った成果が出て、良かったぁ……!)



 あの勉強の日々が、無駄じゃなかったと実感できる結果だった。

 それだけで、胸の奥がじんわりと温かくなる。


 

 ふと視線を窓から戻し、みちるの方へと視線を送ると、彼女はしっかりと黒板に視線を向け、真剣に教師の解説をノートに取りながら聞いているのが見えた。



 そして後ろの席を振り向いてみると――


 「……?」


 アリサはいつも通りの無表情で、淡々と重点を書き写していたが、あかりの視線を受けて目を合わせる。


 「……何か問題が?」


 小声で尋ねられ、あかりは慌てて首を横へ振り、視線を前へと戻した。

 その時にアリサの解答用紙の得点欄に100点の数字が並んでいたのが目に映る。


 (アリサちゃん、国語まで満点だ……凄いなぁ……)


 これまでアリサの返却されたテストは全て満点。

 自分とは頭の作りが違うのかなぁと思いながらも、あかりの意識は再びふわりと浮かび上がる。


 ――視線は自然と窓の外へ。


 灰色の空。先程より少しだけ強まった雨のカーテン越しに見える街。

 

 (来週には……梅雨明け、かぁ)


 朝の天気予報で聞いた言葉が、ふと蘇る。


 『来週中頃には梅雨明けの見込みです』


 その一言が、あかりの心をくすぐっていた。


 (そしたら、もう夏だよね……!)


 じわじわと、胸の奥からワクワクが広がっていき、ゆっくりと目を閉じる。


 思い浮かぶのはどこまでも高い青い空。そしてモクモクと立ち上るソフトクリームみたいな入道雲。

 照りつける暑い太陽に、うるさいくらいの蝉の声。


 そろそろ風鈴を出そうかと話していた父の言葉がよぎり、チリン……と風情を感じる音もどこか懐かしく感じていた。


 (夏休みっ! 楽しみだなぁ~)


 再来週には、長い長い楽しい夏休みが始まる。


 遊びに、お出かけに……のんびりするのも良いかもしれない。 

 ――やりたいことは山ほどある。


 (どこ行こうかなぁ……プール? 海? お祭りもいいなぁ……)


 頭の中に次々と浮かぶ予定たち。

 みちるとあおいと、アリサと――ソラシーも一緒に。


 そう考えるだけで、頬が緩んでしまう。


 「……あかり」


 「ふぁいっ!?」


 突然名前を呼ばれ、びくっと肩が跳ねた。


 振り向くと、アリサが静かにこちらを見ている。


 「……呼ばれています」


 「えっ……あっ……えっと……」


 一瞬の沈黙。


 「……今どこですかっ!」


 あまりにも、今の今まで全く話を聞いていませんでしたという顔に、クラスメートは吹き出し、教師は呆れながらため息をついて額に手を当てた。


 「柚木、ちゃんと話は聞いておけよ。……問5の3番は?」


 「えっと……『粗雑』の対義語なので、『精密』です!」


 あかりは慌てて姿勢を正し、丸のついている設問の答えを読み上げた。


 「はい、その通りです。粗雑というのは――」


 間違えた場所じゃなくて良かったと胸をなでおろし、ふぅと小さく息を吐く。 

 

 その様子を前の席から見ていたみちるが、ふっと僅かに笑みを浮かべていた。



*   *   *



 国語の授業が終わり、やっと終わったと立ち上がって伸びをしていたあかりの元へ、みちるがやってきた。

 

 「あかり。さっき……どうせ夏休みのことでも考えてたんでしょ」


 「うっ……バレてる……」


 「顔に出てたもの」


 みちるはくすりと笑いながら、黒板横に吊るされている大きなカレンダーへ目を向けた。


 「でも、気持ちは分かるわ。もうすぐだもの」


 「でしょでしょ!?」


 あかりはぱっと顔を輝かせて立ち上がり、みちるへ身を乗り出す――が。


 「ただし、まずは間違えた所の復習よ」


 みちるの一言が突き刺さった。


 「うぐぐぐぅ……」


 再び呻き、椅子へと力なく座り込むあかり。

 

 そんな二人のやり取りをじっと見ていたアリサは、僅かばかりに口元を緩めていた。

 

 どこまでも穏やかで。

 どこまでも平和な時間を噛み締めるように。




———————————————————————————————————



 どこか別の異次元に存在する、闇に包まれた洋館。

 その中にある、蝋燭のシャンデリアの光に照らされたコンサートホール。

 その舞台袖にあるバーカウンターで、いつもの三人――フォルティシモ男爵とクレシド卿、そしてミーザリアが寛いでいた。


 手元にあるミュートジェムは型落ち品と言えど、工夫次第ではメロリィ達を追い詰められるのではないか。ここ最近の戦績は負け続きではあるが、良い線まで行けているのでは? と酒の入ったグラスを手に歓談していた。


 グラーヴェから告げられていた新型ミュートジェムが届くのももう間もなく。となると、いよいよ箱に乱雑に置かれているミュートジェムの在庫処分をしなければならない。


 その数は残り6つ。誰が行くか――敢えて誰も口にしていなかった。



 

 ――だが、そんな談合もコンサートホールの大扉が開く音で終わりを告げる事になる。




 ガハハとうるさく笑う男爵の声に交じり、扉が閉まる音が小さく聞こえたクレシド卿は佇まいを直し、グラスを磨く作業へ戻る。

 

 その様子を見てミーザリアも口を噤み、静かにグラスを傾けマティーニで唇を濡らした。

 

 気付いていないのは、心地良く酔っ払った男爵だけ。


 

 「だからよォ!! 娘っ子共の弱点らしい弱点は今のところ見えんが、三人同時に戦わにゃ何とかなるんじゃないかとなッ? ワシは最初にあの金色の娘っ子と戦っとるから一日の長があるんじゃ!」



 「——へぇ~。男爵凄いねぇ」


 「おッ……!? こりゃリタ坊。珍しいじゃあないかッ!」

 


 軽い声と共に、舞台袖の影からひょいと姿を現したのは、リタルダンドだった。


 小柄な身体を揺らしながら、のんびりとした足取りでカウンターへ近付いてくる。

 いつもと変わらぬ眠そうな目で三人を見やるが、冷たい光を宿すその瞳だけが場の空気を正確に見抜いているように細められていた。


 「声大きいから、向こうまでお話聞こえていたよぉ」


 「ガハハッ! 聞こえていたなら……どうじゃ、ワシの策は!」


 男爵は胸を張り、手に持つワイングラスを高々と掲げ、芝居染みた所作でリタルダンドを見た。


 対してリタルダンドは、興味がなさそうに「ふぅん」と軽く相槌を打ちながら、無造作にカウンターに置かれていた箱の中のミュートジェムを摘まみ上げ、男爵へと投げつけた。


 「むほっ!? ……リタ坊、こいつァ貴重な宝石なんですぞ?」


 容赦なくジェムが額に直撃し、ぷっくりとたんこぶを作りながら抗議の声を上げる男爵の声もどこ吹く風か、リタルダンドは箱に残ったジェムを次々に放り投げ、お手玉をするようにくるくると回し始めた。


 

 「……残り、六つかぁ」


 その一言で、だらけた空気が僅かに変わり、男爵の抗議の声がぴたりと止まった。


 ミーザリアはグラスを置いて顔を背け、クレシド卿は棚の酒を整理しようと背を向ける。


 「グラーヴェ兄さまから新型が届く前に、使い切るつもりなんでしょ?」


 「当然じゃッ!」


 男爵は勢いよくグラスを叩きつけるように置いた。


 「古き物は役目を終える! ならば最後まで使い切ってこそよ!」


 その目には、酔いとは別の熱が宿っている。


 「ふふ……ならさぁ」


 リタルダンドはミュートジェムを魔法で空中にピタリと静止させ、男爵を見た。


 「まとめてやっちゃえばぁ?」


 「……まとめて?」


 ミーザリアが静かに問い返す。


 「ご丁寧に一個ずつ使うんじゃなくてさぁ」


 リタルダンドはにやりと笑った。


 「全部、いっぺんに使うの。贅沢に……!」


 それは――通常ならば制御不能に陥る禁じ手。

 それ故に、場には沈黙が満ち、皆が難しい顔をする。


 「……なるほど」


 最初に口を開いたのは、クレシド卿だった。


 「確かに理に適っております。数を分けるより、圧を一点に集中させた方が効果的でしょう」


 「でも、それは……」


 ミーザリアがわずかに眉を寄せる。


 「制御が効かなくなる可能性もあるわ」


 「そこは――」


 リタルダンドが視線を男爵へ向けた。


 「適材適所……でしょ?」


 その言葉と自分に集まる視線を受け、男爵の口元がゆっくりと歪む。



 「くく……くくくく……!」



 低い笑いが漏れ、次の瞬間には――


 「ふははははははッ!!!!」


 爆音のような高笑いが、ホール全体に響き渡った。


 「面白いッ!! 実に面白いぞォォォッ!!!」


 男爵は勢いよく立ち上がり、指揮棒を振り上げる。


 「誰が呼んだか、爆音のマエストロとはワシの事よッ!!! 混沌のコーラスを極めし舞台――それを取りまとめ芸術に昇華させるッ!! それこそがッ!!」


 その目が、ぎらりと輝いた。


 「ワシの指揮よッ!!!」


 「うるさい」



 リタルダンドが浮かべていた五つの宝石が容赦なく一斉に男爵へと放たれ、割れない様に身体で受け止めるしかなかった男爵は、身体をくの字に折れ曲がる程の衝撃を受け、椅子を巻き込みながら転がっていく。


 「ぐ……おぉ……リ、リタ坊……容赦ないのぅ……ワシ死んじゃうぞ……」


 ビクンビクンと男爵が痙攣して倒れ伏す姿を、けらけらと心底楽しそうに笑いながら、リタルダンドはホールから帰っていった。


 パタリと大扉が閉まる音を聞いて、クレシド卿とミーザリアはようやく胸をなでおろした。


 「ふぅ……リタにも困ったものね」


 「グラーヴェ様がお帰りになられない故に、お寂しいのでしょう……触らぬ神に祟りなしですが」



 何とかミュートジェムを守り切った男爵がヨロヨロと立ち上がり、宝石を箱へと戻した。


 「痛ちち……たまにはリタ坊の調律、代わりに受けてくれても良いんじゃぞ……」


 男爵のボヤキに二人は顔を背け、何も聞いていないとばかりにミーザリアはカクテルを、クレシド卿はワインへ口を付けた。

 

 やれやれと男爵がわざとらしい大きくため息をつくと、乱れた髭と髪を整え、高々と握り締めた拳を振り上げ、カッと目を見開いた。

 

 「覚悟するがよいッ!! ブレッシング・ノーツの娘っ子共ォォォッ!!! 在庫処分出血大サービスじゃああッ!!」


 男爵の喧しい雄叫びがコンサートホールへと響き渡る。


 その宣言は、平和で静かな日常を送るあかり達へ向けて放たれた宣戦布告であった。




———————————————————————————————————



 「うぐ……ぐぐぐ……」


 あかりは唸っていた。残り数分。それさえ耐え切れば今日の授業は終わる――即ち帰れると。

 だがそういう時に限って、時計の針はノロノロと進み、中々進んでくれないもの。

 


 今は英語の時間。あかりの手元には良いとも悪いとも言えない点数――84点の答案用紙が鎮座している。

 間違えた箇所はキッチリと正し、教師の解説も聞いてちゃんと理解した。

 今は二学期に何をやるかの説明をしているみたいだが……あかりは何も聞いていなかった。



 待ち望んだチャイムの音。


 ピクリと身体を動かし、教師が終わりの号令を出す瞬間を今か今かと待つ。


 「——では、終わりにしましょう。日直さん」


 「起立ー! 礼! 着席!」


 

 挨拶が終わると教室内は蜂の巣をつついたように騒がしくなる。

 早く授業終われという気持ちは皆一緒で、部活の大会の話や土日にあった七夕祭りの話。話題のゲームの話等で盛り上がっていた。


 

 「アリサちゃぁ~んっ!! 明日って夜……空いてるかなっ!!」


 あかりは授業中にふと思いついた事があり、それを早く話したくてずっとうずうずしていたのだ。


 「明日……はい、問題ありません」


 その返事にぱぁっと顔を輝かせ、あかりは続けた。


 「あとで帰る時にみんなにも話すんだけど、明日七夕でしょ? お祭りはもう土日に終わっちゃってるけど……笹も飾りもあるし、お天気らしいし……! 一緒に星空を眺められたら素敵だなぁ~って」


 「七夕……」


 あかりからの誘いに、僅かながら目を大きくしたアリサはすぐに首を縦に振った。

 

 「下校時、作戦のすり合わせを行いましょう」


 「作戦って……そうだねっ! 七夕作戦!」


 にへっと笑うあかりに、アリサも微かに笑みを浮かべた。


 (うー……早く作戦会議がしたい!) 


 再び時計とにらめっこを始めたあかりは、次はHRが早く終わるように祈り始めるのだった。



*   *   *



 HR終了後、あかりとみちるとアリサは教室を出て、いつものように昇降口へと向かった。


 廊下には既に下校する生徒達の姿が溢れており、どこか浮き足立った声があちこちから聞こえてくる。


 「テスト終わったしさー! 今日カラオケ行かね?」

 

 「いいねぇー! フリータイムで歌いまくろうぜ!」


 そんな会話を横目に、あかりはくすぐったそうに笑った。


 「みんな楽しそうだね~!」


 「……気のゆるみが出ていますね。しかし、今は妥当かと」


 アリサはいつも通り淡々と答えながらも、どこか柔らかな声音だった。


 靴を履き替え、外へ出ると――むわりと湿った空気が身体を包む。

 小雨はいつの間にか止んでいたが、雲は相変わらず厚く空を覆っていた。


 「うわぁ……むしむしする~……」


 「梅雨だから仕方ないわよ……でもこの蒸し暑さ……しんどいわね……」


 そんな他愛ない会話を交わしながら歩き出すと、少し先に見慣れた背中が見えた。


 「あっ! あおいちゃーん! お待たせ~!!」


 元気いっぱいに手を振りながら駆け寄るあかりに、あおいは振り返って微笑む。


 「おー、お疲れ様あかり~。二人もお疲れ様~」


 「お疲れ様、その顔……試験は問題なさそうね」


 「へへ、分かる~?」


 軽口を交わしながら、自然と四人は並んで歩き出した。


 その流れのまま、あかりは待ってましたと言わんばかりに口を開く。


 「ねぇねぇっ! 明日の話なんだけどねっ!! 明日七夕でしょ? 夜、みんなで星見に行こうよ!」


 ぱぁっと顔を輝かせながら言うあかりに、あおいは「おぉ~」と声を上げた。


 「いいじゃんそれ。ロマンチックじゃん!」


 「私も賛成! アリサと一緒に行くわね!」


 みちるも穏やかに頷き、彼女の隣を歩くアリサとアイコンタクトを取り微笑みあう。


 「商店街の方なら短冊もまだあるかもね」


 「でしょでしょ!? だからみんなでお願いごと書いて、そのあと星見るの!」


 楽しそうに話すあかりの様子に、三人の表情も自然と柔らいでいく。


 「……天候は曇りの予報ですが、夜は晴れると言っていましたね」


 アリサの呟きに、あかりは小さくガッツポーズをした。


 「ねぇねぇ、みんなはお願いごと決めてるの?」


 あかりが期待に満ちた目で見回す。


 「うーん、まだかなぁ~。みちるは?」


 「私も特には……アリサは?」


 「私は……これから考えるつもりです」


 三者三様の答えに、あかりは「そっかぁ」と頷いた後――にへっと笑った。


 「じゃあさ! 明日みんなで商店街の大笹に書こうよ!」


 「星見る前に?」


 「うんっ! その方が絶対楽しいもん!」


 その言葉に、あおいが肩をすくめる。


 「あかりの絶対楽しいは大体当たるからねぇ」


 「でしょでしょ~!」


 えっへんと胸を張るあかりに、三人は思わず笑った。

 その時――ふわりと、どこからか生暖かい風が吹き抜けたように感じた。


 「……?」


 あかりは足を止め、空を見上げるも灰色の重たい雲が広がるだけ。

 蒸し暑い空気は彼女達を包んで停滞したままで、風が吹いた様には思えない。


 「どうしたの?」


 「……ううん、なんでもない!」


 すぐに首を振り、あかりはまた笑顔に戻る。


 「明日、楽しみだねっ!」


 その声に、三人も頷いた。



 明日の夜、それぞれが願いを抱いて集う。

 その時間が、この四人で過ごす特別な時間になると信じて。

 

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― 新着の感想 ―
戦闘描写が鬼気迫るものがあり、迫力あって、「生きる」ということを考えさせられました。日常は本当に癒しで泣けてきますね。ていうか、泣いてますね。本来は七夕で盛り上がっちゃうような普通の女の子たちなんです…
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